レオン・バティスタ・アルベルティ『絵画論』(1435)英語訳 2004表紙
15世紀、ルネサンス・イタリアでは、絵画の技法にとどまらず、作品制作の理論でも大きな進歩が見られた。その代表が、アーティスト、建築家、数学者、詩人、哲学者でもあったレオン・バティスタ・アルベルティ Leon Battista Alberthi (1404-1472)による絵画に関する遠近法理論で、美術の世界に大きな変革をもたらした。美術論ばかりでなくそのカヴァーする領域から、ルネサンスの「万能人間」universal man と呼ばれていた。
工房での作品制作の技法が中心となっていた環境で、こうした理論的支えがあったことはイタリアの文化的地位を大きく高めたといえる。ルネサンス期フィレンツェでは遠近法を利用した絵画が急速に花開いたが、ブルネレスキなどの試みの後、アルベルティの『絵画論』は透視図法での詳細な形式化と理論化を果たした作品として燦然と今日に残る。
アルベルティは『絵画論(De pictura)』*において、西洋絵画を確立したと言っても過言ではない。彼は遠近法の手法を構築し、絵画は遠近法と構成と物語の三つの要素が調和したものであると考え、これによって絵画の空間を秩序づけた。彼は、芸術作品について常に調和を重んじ、それを文法化することに腐心した。そのため、彼の芸術論は非常に優れたテキストであり、優れた工房を支える理論的柱でもあった。
西洋絵画理論の柱に
『絵画論』はイタリア・ルネサンス期の画家に多大な影響を及ぼし、その範囲はロレンツォ・ギベルティ、フラ・アンジェリコ、ドメニコ・ヴェネツィアーノ、さらに後年ではレオナルド・ダ・ヴィンチなどの大画家にも及んだ。西洋絵画理論を確立した作品といわれる。
* Leon Battista Alberti, On Painting, Translated by Cecil Grayson, With and introduction and Notes by Martin Kemp, (1972), 2004, Penguin Press
L.B.アルベルティ『絵画論』(三輪福松訳) 中央公論美術出版、1992年
ブログ筆者は、英語訳で読んだが、小著でありながら、絵画の真髄についてのきわめて濃密なテキストとも言える。解説を含めても100ページ足らずなのだが、かなり難解ではある。
たまたま英語訳の表紙には、パウロ・ウッチェロ(1397-1475)の『森の中の狩』が採用されている。同時代人のアルベルティとはいかなる関係にあったのかも推測するに興味深い。
専門化が進んだ現代社会では、ともすれば人々は強制的に視野を制約され、狭窄した次元で物事を判断することになるが、その結果、世界の真の姿を見通せなくなる。イタリア・ルネサンスの時代にあっては、アルベルティのような天才「万能人間」には、世界がすべて見渡せたのだろう。
工房での作品制作の技法が中心となっていた環境で、こうした理論的支えがあったことはイタリアの文化的地位を大きく高めたといえる。ルネサンス期フィレンツェでは遠近法を利用した絵画が急速に花開いたが、ブルネレスキなどの試みの後、アルベルティの『絵画論』は透視図法での詳細な形式化と理論化を果たした作品として燦然と今日に残る。
アルベルティは『絵画論(De pictura)』*において、西洋絵画を確立したと言っても過言ではない。彼は遠近法の手法を構築し、絵画は遠近法と構成と物語の三つの要素が調和したものであると考え、これによって絵画の空間を秩序づけた。彼は、芸術作品について常に調和を重んじ、それを文法化することに腐心した。そのため、彼の芸術論は非常に優れたテキストであり、優れた工房を支える理論的柱でもあった。
西洋絵画理論の柱に
『絵画論』はイタリア・ルネサンス期の画家に多大な影響を及ぼし、その範囲はロレンツォ・ギベルティ、フラ・アンジェリコ、ドメニコ・ヴェネツィアーノ、さらに後年ではレオナルド・ダ・ヴィンチなどの大画家にも及んだ。西洋絵画理論を確立した作品といわれる。
* Leon Battista Alberti, On Painting, Translated by Cecil Grayson, With and introduction and Notes by Martin Kemp, (1972), 2004, Penguin Press
L.B.アルベルティ『絵画論』(三輪福松訳) 中央公論美術出版、1992年
ブログ筆者は、英語訳で読んだが、小著でありながら、絵画の真髄についてのきわめて濃密なテキストとも言える。解説を含めても100ページ足らずなのだが、かなり難解ではある。
たまたま英語訳の表紙には、パウロ・ウッチェロ(1397-1475)の『森の中の狩』が採用されている。同時代人のアルベルティとはいかなる関係にあったのかも推測するに興味深い。
専門化が進んだ現代社会では、ともすれば人々は強制的に視野を制約され、狭窄した次元で物事を判断することになるが、その結果、世界の真の姿を見通せなくなる。イタリア・ルネサンスの時代にあっては、アルベルティのような天才「万能人間」には、世界がすべて見渡せたのだろう。
続く