沖縄Daily Voice

沖縄在住の元気人が発信する

紅茶の島のものがたり vol.30 冨井穣

2009年10月23日 | 金曜(2009年4月~):冨井穣さん
第30話
ホッとティータイムその4:
山城紅茶の商品包装を手がける
知的障害者通所授産施設「ありんこ」

「小さいころから、“何かを始めるときはすべての物事がうまく回るように考え
ろ”と父親にたたき込まれた」と山城が話すように、山城紅茶が目指す循環型農業
の理念は、お茶作りの枠を越えて世の中の仕組みにまで及んでいる。本編で何度か
触れたように、茶摘みには地元のシルバー人材を雇い、加工後の商品包装は同じく
市内の障害者施設に作業を依頼している。紅茶作りのスローガンが「適栽適地」な
ら、これは文字通り「適材適所」の経営形態。地域の人材を積極的に活用すること
で雇用格差の解消を図り、循環型の労働市場の活性化に貢献している。
 今回は山城紅茶の商品包装を請け負う障害者施設「ありんこ」を訪ね、指導員の
松田美智代さんに話を伺った。


Q施設の活動について教えて下さい
A私たち通所授産施設「ありんこ」は、知的障害者の社会参加と自活を図ることを
目的に、2003年に設立された社会福祉法人です。現在は約40名の知的障害者が利用
しており、一人一人の障害レベルに応じて授産科目を決定し、適切な指導、訓練、
援助を行っています。
 授産科目は農工演芸班、手工芸班、食品加工班などがあり、朝9時から夕方4時半
まで、食事や休憩を挟みながらグループごとにさまざまな作業を行っています。就
労を目指す利用者は民間企業に赴き外部実習に励んでいます。
 施設内での作業は公共機関や民間企業からの受注業務がほとんどですが、島ひじ
き、黒糖梅干しなどの加工食品や手工芸品など、中には自社製品として生産、販売
している商品もあります。


自社製品の島ひじき

Q山城紅茶との取引のきっかけは
A私たちの施設では受注業務を行うために、さまざまな設備を導入しています。そ
の中にはティーバッグの自動包装機もあり、それをたまたま聞きつけ山城紅茶さん
から連絡をいただいたのが始まりでした。今から約1年半前、ちょうどティーバッグ
製品を発売したころですね。
 ただし機械があるとはいえ、それほど頻繁に動かしたことがなかったので、最初
のうちは私が使い方を覚えたりうまく包装できるよう微調整したりするのに時間が
かかって大変でした。しかも機械を作業室に持ってきて実際に動かしてみたとこ
ろ、排気で粉じんが室内に舞ってしまうので機械用にガラス張りの部屋を作り、さ
らにそこに閉じこもって作業すると暑くてたまらないので換気扇を設置したりと、
なかなか大がかりな仕事になりました。
 それから山城さんは、「ゴミに出しても環境に負荷をかけないから」という理由
で、ティーバッグの包装材に植物由来の原料で作られる不織布を指定されました。
一般的なお茶のティーバッグはナイロン製を使うケースがほとんどです。茶葉の栽
培を有機無農薬で行うだけではなく、商品開発時にそこまで気を配ることができる
なんて、とても感心しますね。


ティーバッグ自動包装機

Q実際にはどんな作業をしているのですか
Aティーバッグの製作に限らず、パッケージの裁断からシール張り、茶葉の計量、
袋詰めまで、ひと通りの作業をさせていただいています。食品加工などの室内業務
は主に女性が担当し、現在は11名、2班合同でやるときは15名前後で仕事に取りかか
ります。利用者の中には数字をきちんと読める人もいれば、10までなら数えられる
人、まったく分からない人など、作業レベルに個人差があるので、一人一人の状況
に合わせて仕事を分担しています。
 山城紅茶さんの商品は紅茶の種類が4つに分かれている上、リーフタイプとティー
バッグのタイプがあり、崎浜さんからはシールの張り方をミリ単位で指定するなど
とても細かい指示が来ます。いちばん大変なのはティーバッグの商品です。リーフ
タイプのものは茶葉を計量して袋詰めし、再計量してチェックするだけでいいので
すが、ティーバッグはタグを付けたり個数を数えたりしなければいけないので、必
ず誰か指導員が入って一緒に作業するようにしています。
 利用者の教育はもちろんですが、商品は一般のお客さんが口にするものなので、
仕事は確実にこなさなければなりません。私が受け持っている業務の中では最も複
雑かもしれませんね。個人的に「山城紅茶業務ファイル」を作り、作業室には専用
棚も作りました(笑)。


ティーバッグ製品は大変な作業


慣れた手つきで作業をこなす利用者


あとは袋を閉じてできあがり

Qこれからの抱負と山城紅茶にひと言お願いします
A障害者施設を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、2年後には障害者の就労増
や最低工賃引き上げなどが義務づけられます。私たちも現在はそれに向けたさまざ
まな対策を検討中で、例えば来年4月には那覇市国場に就労支援センターを開業した
り、山城紅茶さんからの仕事のような受注業務を増やすためにコンサルタントの方
に相談したりしています。
 いちど施設を見ていただければ分かると思うのですが、障害者が貢献できる仕事
はいくらでもあります。例えば山城紅茶さんの袋詰め作業だって、普通なら1、2時
間もすれば飽きてしまうところを、彼らは延々と集中して作業できるんです。一般
の人や企業の方に、彼ら彼女らのそんな長所を少しでも知ってほしいですね。
 だから山城紅茶さんが今以上に有名になって生産量が激増しても、私たちはまだ
まだ十分に仕事をこなすことができますよ。商品ごとに細々と作業するより、例え
ば「今日はNO.909のリーフタイプ」と決めて取りかかったほうが、利用者はもっと
もっと力を発揮できますからね(笑)。



◎連絡先
知的障害者通所授産施設「ありんこ」
うるま市宇堅919
TEL098-973-1888
施設の訪問、見学は大歓迎です!お気軽にお立ち寄りください。


働き者のありんこのようにコツコツと…との願いを込めて





Text:冨井穣




              ★沖縄観光の旅行雑誌を作る会社が素顔の沖縄を紹介するサイト

最新の画像もっと見る

コメントを投稿