石川のむかし話/石川県児童文化協会編/日本標準/1977年
類似の昔話がありますが、オチが楽しい。
おじじが山へたきぎをとりにいったが、腰に下げた団子がじゃまになり、地蔵さまの前において、かれえだを集めた。
日も頭の上にきとって、団子を食べようとすると、団子が一つもない。だまっている地蔵さまへ、下の谷にころがすというと、地蔵さまは、頭を下げていうたと。「じつは、おれが食べたくて食べてしもうた。がまんしてくれ。そのかわり、おじじに恩返しをするからの。」
地蔵様に言われたとおり、おじじが重茂の宮の縁の下にまっていると、オニどもがやってきて、ジャラン、ジャランと、銭の音させて、かけごとをはじめた。ここでおじじは、ニワトリのまねをし、オニどもが残していった銭を袋いっぱい手にいれます。
この話を聞いた、わるいおじじも重茂の宮にでかけ、じっとまっていると、オニどもが、かけごとをはじめたとい。おじじは、待ち遠しくて明け方には、まだ間があると思うたけど、コケコッコーと鳴こうとしたら、どんなわけかしらんけどノドがつかえて声が出ない。これはいかんと、うんとふんばったら、ブブッブーと、でっかい音をたてて、へが出た。オニどもは、すぐに気がついて、鼻をきかせ、おじじを見つけると、耳をチョンと、きられてしもうたとい。
ニワトリの鳴き声をまねすると、オニがおかしいと気づく話が多いのですが、”へ”がでるとか、耳を切り取るのも珍しい。
小学生が描く鬼の挿絵が楽しい。