どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

都会の敗北

2016年06月19日 | オー・ヘンリー

       オー・ヘンリーショートストリーセレクション マディソン街の千一夜/千葉茂樹・訳 和田誠・絵/理論社/2007年

 ロバート・ウオームズリーが結婚したのは、アリシアという由緒正しい家柄の娘で、高潔にして、冷涼、純白で近寄りがたい女性。
 ロバートはニューヨークで大成功し、すっかり上流階級の一員として都会に暮らしていましたが、ニューヨーク州北部の田舎町の出身。

 ある日、アリシアはロバートの母からの手紙をみて、ぜひ一度農場にいってみたいといいだします。

 ロバートは乗り気ではありませんでしたが、田舎にいったとたん、彼の血の中に眠るむかしの生活がよみがえります。
 弟と取っ組み合いをしたり、妹をキリギリスでおどろかせたり、草の上でとんぼ返りをうってみせたり。

 ロバートは自分の本当の姿をアリシアにみせてしまったことから、非難を浴びせられるのを待ちますが・・・。

 オー・ヘンリーのアリシアのえがきかたがなんともいえません。

 夏の熱波の中でも北極の幽霊のごとく涼しげで、ノルウエーの雪女のように白く、うすいモスリンの服を身にまとっています。
 田舎にいっても、うすいグレーの極上の夜会服姿。
 ロバートが信じがたい荒々しいさわぎをしているときも、彼女は身じろぎもせずにいます。その姿はだれにも心の内をさとられることなどない、黄昏の細身の白い妖精のよう。

 彼女が貴婦人のように描かれれば描かれるほど、最後のセリフがいきています。


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