石川のむかし話/石川県児童文化協会編/日本標準/1977年
能登半島地震では、電気が復旧したようですが、水道はまだ先のようです。あまり報道されていませんが気になるのは子どもたちのこと。幼稚園・保育園、小中学校は、どんな形で再開されているのでしょうか。親がなくなった子どもはいないのでしょうか。
これまでの日常生活にもどるのは、まだまだ時間が必要なのでしょう。
ところで、石川県は、南加賀、北加賀、口能登、奥能登にわかれ、この話は、口能登 七尾市の昔話。
二匹のキツネの話声を聞いたのは、馬売りの五平という大酒のみのじいさまが、家に戻れんほどになって、地蔵さまのところでねていたとき。いっぴきは長齢寺の縁の下にいる長さんギツネ、もういっぴきは、西光寺の縁の下に住む西さんギツネでした。
どんな相談かというと、長さんギツネが馬に化け、西さんギツネが馬方の五平に化けて、馬市でひともうけをしようという相談。
五平じいさんは、キツネどもをだましてやろうと、つぎの日の朝、キツネたちを待っていると、先にきたのは長さんギツネ。「おい、長さん、おそかったぞ。わしはもう五平にばけたぞ。おまん、はよ馬に化けや」というと、長さんギツネは、あわてて馬に化けてしもうた。五平が、落ちとった縄で、首のところへたづなをきちきちにしばりつけたので、長さんギツネは、苦しくてたまらない。長さんギツネは、緩めてくれというが、五平は、しばらくのしんぼうといい、馬市で長さんギツネを売って、その銭で、酒を買って楽しんだ。
いっときは、楽しめたが、いつなんどき悪さをされるかわからんので、きっと、キツネはいつぞやの地蔵さまのところへくるだろうと見当をつけ、地蔵さまのところへいってみると、あんのじょう二匹のキツネが目光らせて まっていた。
五平じいさま、よっしゃと、でっかい声出していった。「地蔵さまの話では、二匹のきつねが、きっとこの五平に、あだくそするちゅうこっちゃが、うっかりそんなことをしようなら、地蔵さんの罰があたって、足が折れて歩けんようになるちゅうことを知らんと、いまじぶん、どこかでこの五平をさがしておるこっちゃやら、気の毒なことですわいのう」
キツネは、五平じいさまのまじめくさった話を聞いて、顔見合わせ、しっぽをまいて てんでに にげてってしもうたい。
人をだますキツネがいれば、そのキツネをだます人間もいて、どっちが 悪い?。