ねこが見た話/たかどの ほうこ・作 瓜南直子・絵/福音館書店/1998年
絵本ナビには高楼方子さんの絵本が84冊。これだけの絵本がありながら、あまり接点はありませんでした。
今読んでいる絵本は氷山の一角というのを思い知らされました。
「ねこが見た話」は、「オイラはのらのこ・・」からはじまる、のらねこが覗き見た話が三話、自分が飼い猫になる一話から構成され、巧みなストーリーがたっぷりと楽しめる話ばかりです。
瓜南直子さんの挿絵もユニークです。
・キノコと三人家族のまき
ひどく年とったばあさんだというのに、おかっぱあたまの大家さんから「まあ、ひと月くらしてごらなんなさい。あんまり広いんで、おどろきなさるさ」といわれ、小さな家を借りた3人家族。
「もうすこし広ければ、いうことなしなんだがなあ・・」と思いながら、家賃の魅力にひかれ借りたものでした。
引っ越し後、キノコのスパゲッテイー、キノコご飯、キノコの天ぷら、キノコの味噌汁とキノコ料理が続きます。
母親が言うには、床下にキノコがたくさんはえているというのです。
父親と息子、それにオイラものぞいてみると、ところせましとキノコが。
それからは、朝晩キノコ料理。何日か過ぎると、父親、母親、息子の髪形はおかっぱあたま。大家のおばさんの髪形ににています。
それだけでなく、もうひとつ不思議なことに、夜になると家族がだんだん小さくなることでした。もっとも朝になるともとにもどるので、暮らしに不便はありません。
やがて、キノコそっくりになった三人。夜は畳のヘリで百メートル走、いすやテーブルは巨大なアスレチック、電気のひもにつかまればターザンごっこです。
なんとも幸せな家族です。
オイラがいうには「うそだとおもうやつは、しんじなくていいよ」。
おばあさんが、狭い部屋に住む家族におくった幸せかな?
・もちつもたれつの館のまき
寝室が七つもあって、曜日ごとに替える五十年配の社長。毎晩、寝室を替えますから、残りの六つはあいています。その部屋に、公園のベンチでねおきしている六人の風来坊が住みつきます。
ある日曜日、先行きが心配になった社長が、せともののまねきねこにむかって、「あす、あさってわたしが元気だという証拠をみせてください」とお願いします。
思いついた社長が、月曜日の部屋をみれば、あしたのわしの姿をみせてくれるやもしれんと部屋をのぞきます。そこにはパジャマに着替え、ベッド足をいれようとする風来坊。あしたの自分だと思い込んだ社長のかおがほころびます。
火曜日から土曜日の部屋をのぞいた社長のかおは満足そう。
満ち足りた社長が公園を散歩しているとき、であったのが六人の風来坊。夜のことがばれたかと思いきや、社長は六人に説教をしただけで歩いていきます。
それからも社長は、自分の部屋以外をのぞいて、自分が生きていることを確認します。つまり、風来坊の六人は社長に生きる元気を与えていたのです。といっても風来坊も社長からのぞかれているのをしりません。知っているのはオイラだけ。
「たしかにもちつもたれつの館でありますにゃ~」
・おかあさんのいすのまき
古道具屋でついでに買ってきたいすは、お母さんが座って子に語ると、その言葉がすべて真実になるもの。ところが効力は百年で、気がついた日が百年目。残りは2分だけ。
「わたしは世界一、うつく・・」といったとき、時計が・・ボン! 「・・しくなる!」と続けた母親の運命は?
椅子にも消印有効があれば、望みはかなうはずですが?
この椅子の不思議な力を発見したのは小学四年生の兄。それまで三度も不思議なことが続いたのでした。三度とも、母親が「わたしは、世界一うつくしくなる!」と叫んでも無理だったようですよ。
・天国か地獄か?のまき
天国行きか地獄行きかを決める係の男の前で「天国じゃなく地獄の黒きっぷとかえてくれ!」とごねるひねくればあさん。
係りの男は、ばあさんに、「あんたのひくピアノが、みんなの心をしあわせにした」と書いてあるから天国行きの白きっぷをわたそうとしていたのでした。
ばあさんの声をきいて、オイラは、何もかも思い出します。
オイラは通りがかりに、ばあさんのピアノにききほれていたのでした。ところが一雨きたあとの地面がひえるので、まどじきいにとびのると、運悪く部屋の中に飛び降りてしまいます。
ばあさんは気短で、窓の下でさわいだのらねこに、みそ汁をかけるわ、楽譜を投げつけるわとあらっぽく、箒で追いかけられる始末。おまけに箒が、白くてでかいベートーベンの置物にあたって落ちてきたからさあ大変。
ふたりとも、天国か地獄かきめる待合室に並んでいたのでした。
ところがいろいろ話しているうち、係りの男が、べートーベンと弁当をとり間違えたことに気がつくと、ふたりはもとの部屋の床に いきかえります。
ピアノが人をしあわせにしていたというオイラの話は、よほど説得力があったのでしょう。
ばあさんが、自分の弾くピアノが人をよろこばせていたことに、おくればせながら気がつき感慨にふけるあたりがなんともいえません。
天国か地獄かの入り口で一緒になったふたりに、奇妙な友情が生まれますが、もう一波乱があってもおかしくなさそう。
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