どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

灰ならす

2018年01月04日 | 昔話(日本)

            おみきばばっちゃの夜噺/田島房子/文芸社/2006年


 旅人が、今夜一晩泊めてくれる宿をさがして、何軒も断られるが、貧乏そうな家ででてきたのは女の人。

 ここまでくると、泊まらしてくれた家には、何かいいことがおこるのが、昔話です。

 しかし、この先、思わぬ展開をします。

 空き家を紹介してくれたのはよかったのですが、そこには幽霊がでるという。
 荒れ果てた家。なかは真っ暗。それでも我慢して囲炉裏に火をおこし、やっと一息。
 夜中、だれかが泣いているような声がして、目を覚ました旅人。

 幽霊は何やらぶつぶつ、しくしく また、ぶつぶつしくしく。

 やっと聞こえるような声で「灰ならす、灰は浜辺の砂に似て・・・」
 しくしくしくしく
 そしてまた「灰ならす、灰は浜辺の砂に似て・・・」

 旅人は、折角ええ歌の上の句ができたのに、どうしても下の句ができなくてないているにちがいないと、幽霊が「灰ならす、灰は浜辺の砂に似て・・・」といったとたん「囲炉裏は海か 沖(燠)が見ゆるぞ」と読み継いでやります。
 すると幽霊はニコッと笑って、深々頭を下げて、壁のなかにすうっと吸い込まれるように消えてしまいます。

 昔話に短歌がでてくるというのははじめてです。田島さんは49歳から短歌グループに入会していますから、そのことが反映されたのでしょうか。

 朝鮮の昔話に杜甫が出てきてびっくりしたことを思い出しました。