どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

亡霊になった夫・・ペルー

2013年04月06日 | 昔話(南アメリカ)

      亡霊になった夫/大人と子どものための世界のむかし話 ペルー・ボリビアの昔話/加藤隆浩・編訳/偕成社/1989年初版

 若い夫婦の夫が食べ物を盗もうとして店の主人にみつかって、殺されてしまう。

 妻マリアは夫が殺されたことを知らない。夫は亡霊になってマリアのところにあらわれ、あの世に連れ出そうとする。途中にある小さな小屋で食事をするが、亡霊は、のどに穴があいているのでいくらたべても次から次へとこぼれてしまう。

 小屋を出て寒くなってきたので、たき火をしてあたたまろうとし、森の中でまきをとろうとするが、亡霊は森がこわくて、森の中にはいらない。マリアが森のなかでまきをさがしていると、聖母があらわれて、マリアにあの世につれていかれてしまうと忠告する。そのとき聖母はせっけんとかがみと針とくしを手渡して、亡霊がおいかけてきたら、せっけんとかがみと針とくしを一つずつ亡霊のほうになげなさいという。

 亡霊がおいかけてきて、せっけんをなげると大きなドロ沼があらわれます。

 亡霊がやっとドロ沼をこえておいかけてくると、今度は、鏡をなげると大きな湖があらわれる。また亡霊がおいかけてくると、こんどは針を投げるとイバラにかわります。

 さらに、くしをなげると森にかわります。それでも亡霊が追いかけてくるので、マリアは教会に逃げ込みます。
 たくさんの亡霊がやってきてあの手この手で、マリアをおびきだそうとするが、マリアはじっと我慢し。やがて教会の鐘が鳴ると、にわとりが三度目に泣いたとき亡霊がきえる。

 この昔話は、お話し会で語られる機会も多い日本の昔話「三枚の札」をおもわせる。

「三枚の札」は、地域によって若干のちがいはあるが、青森県の場合のあらすじは

 ある寺の小僧が山へ栗ひろいにいきたいと駄々をこねる。和尚は仕方なく3枚の札を、小僧に持たせる。小僧は、栗拾いに夢中になっている内に日が暮れる。老婆が現れ小僧を家に泊めてくれが、夜に目覚めた小僧は、老婆が山姥の本性を現し小僧を食べる用意をするのを目にする。小僧が「糞がしたい」と言うと、山姥は小僧を縄で括って便所へ送った。小僧は1枚目の札を便所の柱に括り、「身代わりになってけろ」と頼んで窓から逃げる。山姥が「もういいか」と尋ねると、小僧に化けた札が「もうちっと」と繰り返す。山姥が我慢できず便所をぶち破ると、小僧は跡形もなく消えていて、破れた札があるだけ。

 だまされたと知った山姥は小僧を追いかけが、追い付かれそうになった小僧が2枚目の札を投げると大きな川が出る。だが、山姥はぐびぐびと飲み干した。おいつかれた小僧は、最後の札を投げ、火の海を出す。しかし山姥は川の水を吐いて吹き消す。

 寺に逃げ帰った小僧は和尚に助けを求め、壺に入れてもらう。やがて山姥が寺に入って来て「小僧を出せ」と和尚にいうが、和尚は知恵を働かせ、小さな豆にばけさせ、豆を餅に挟んで食べてしまう。

 この手の話は逃げるところに意味があるようで、こまかな部分はわきにおいて楽しんでみたいもの。

 外国の昔話という場合、どうしても欧州のものが目につくが、さがしてみるとこんなにも多くの国のものが翻訳されていることにあらためて驚かされる。しかし、それでもまだまだ部分的なものに限られていそう。