観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

嫌いだった雪

2015-02-01 13:43:43 | 15
3年 矢野莉沙子

 私は12月生まれの冬生まれなのだが、友達の多くには夏生まれだろうと言われる。冬嫌いが雰囲気ににじみ出るのかもしれない。実際、私は冬が嫌いだ。寒がりなので、何重にも服を着込むので、動くのも億劫になる。それに雪がやっかいだ。冷たいし、積もるし、溶ければ氷になって滑る。雪の日はついつい外に出るのもいやになってしまう。
 そんな私の冬嫌いが少し落ち着いてきたのは、野生動物学研究室に入ってからのように思う。自分の研究試料の採集などのために浅間山に行くことが多くなり、去年の12月と今年の1月は雪山での調査となった。初めは苦手な寒さの中で動けなくなったらどうしようとか、雪にはまったらどう抜け出そうとか、自分の身に起こるであろうことばかり不安だった。しかし実際に雪山を歩いてみると、新しい発見があった。
 10月の終わりに標高2000mで見つけた霜柱が私の興味をひいた。子どもの頃読んだ絵本の中でしか見たことのない立派な霜柱だった。直線状とは限らない、すこしうねった氷の柱が土を持ち上げていて、知らずに踏むと優しい不意打ちをくらったような不思議な感触がさくっという音と共に伝わってくる。それ以降歩く道々に霜柱を見つけては立ち止まってその興味深い姿に見とれる私を、一緒に歩いている先輩が不思議そうに笑っていた。
 そしてなによりも私の心を沸き立たせたのが、荒らされていないきれいな雪の上に残っている動物の足跡である。動物の足跡を見つけるのは誰も歩いていない早朝から山を歩き始める私たちの特権のようなものだ。足跡から動物種や歩いてきたコースや、向かった方角を推測すると、その動物が歩いている姿が見えてくるように感じる。


雪の上に残された動物の足跡

 霜柱にしても、雪の上の動物の足跡にしても、今まで知らなかった感覚で、新しいものに出会ったら、そのたびに感じる素直な感覚を大切にしていきたい。


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