観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

私にとっての回帰

2015-03-13 08:22:54 | 15
原慶太郎(東京情報大学)

 早いもので最終講義から1週間が経ちました。「回帰」というテーマが、講義全体に重層的に織り交ぜられ、高槻さんの回帰の話なのに、自分の回帰にもつながり、実に濃密な90分でした。ありがとうございました。
東北大学の植物生態学研究室時代は、高槻・辻村の博士課程後期の院生を筆頭に途切れることなく各学年に院生がおり、毎週開催されるゼミは、植物の生態に軸足を置きながら、地形、花粉、動物、都市、などなど、実に多様な分野の成果の発表と議論がなされました。今になって思うと、その時の様々な経験が景観生態学に取り組んでいる現在の自分の大きな柱になっていることを感じます。高槻さんはというと、ゼミの間、せっせと鉛筆を動かしているのかと思って目をやると、それが演者の似顔絵だったりするのです。しかし、発表に対するコメントは、(悪気はないのですが)容赦なくストレートで、ゼミ終了後に落ち込んだ者は少なくありませんでした。そんな時間を共にした仲間が今回の最終講義に集まり、仙台にいるような感じにさえなりました。
研究室でご一緒した10年ほどの間、高槻さんからボソッとこぼれるひとことは、私の心にいまも残っています。講義でも紹介されたように高槻さんは米国に留学され、その後、パンダ研究で中国に渡ります。
「米国に行くのとは、重みが違うよ」
その時は、中国の歴史や日本との関係のことかと思っていましたが、今回、ご両親が満州から終戦で帰国され、その時の様子を聞かされたことを伺って、より深い意味があったことを理解しました。私の祖父も同じ満鉄に勤務しており、祖母からその時の話を聞かされて育ちました。その後、中国を研究の対象として何度か調査に行く機会を得ましたが、祖父母が暮らしていた瀋陽(奉天)や長春(新京)を訪れたことは、高槻さんの中国やモンゴル調査行と同様、私にとっての「回帰」だったように思います。改めて、出会いとご厚情に感謝します。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿