観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

努力の光

2013-07-26 12:13:42 | 13.7
3年 中川知己

 6月下旬の夜、私の目の前を淡い光が横切った。淡い光は森の奥へとふらふら飛んで行って消えた。それを見ていた子連れの家族はとても喜んでいるようだった。
 私の家の近所には、ゲンジボタルを見ることができることで知られている場所がある。私はこれまで行ったことはなかったが、幼いときにそこから少し離れた川でホタルの管理している方々に出会ったことがある。友人と遊んでいた私は「何をしているの」と声をかけられ、「ドジョウを捕っているの」と答えた。私に声をかけたその人は、「捕ってもちゃんと放してあげるんだよ」と言ってどこかへ行ってしまった。その方が着けていた腕章には「ホタルを守る…」と書かれていた。しかし、幼い私は捕まえたドジョウを放さずに持ち帰ってしまった。ドジョウについてよく知らなかった私は杜撰な飼育をしてしまい、その結果、ドジョウをカラスに食われてしまった。
 その時は、死んでしまって悲しいくらいにしか感じなかったが、大学生になり、長年にわたってトウキョウサンショウウオの保護活動を行っている方々とお会いしたときに、そのときのことを思い出した。注意を受けたにもかかわらず、自由に生きている生き物を自分勝手に持ち帰り、死なせた。そのことの意味をいま思い返してひどいことをしたのだと思う。
 6月下旬の夜に見ることができたゲンジボタルは、生き物の命を大切にする、こうした活動をしてきた人たちの努力の結晶だったのだとわかる。私の近くでホタルを見ていた子供連れの家族が「来年も絶対見に来ようね」と話しているのを見ながら、とても嬉しそうにしている管理者の方々がいた。今度はそちら側に立っていたいと私は強く思った。

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