観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

冬が来た!

2012-12-24 00:50:03 | 12
4年 鏡内康敬
 「冬が来た!」
 そう感じるのはどんなときだろうか。
 冬物に衣替えしたとき、旬な食べ物を食べたとき、朝布団からなかなか抜け出せなくなったとき、など感じる瞬間は人それぞれではないだろうか。私自身にもそう感じる瞬間があるが、それは一度にではなく、三度に分けてやって来るのだ。
 初めて冬の訪れを感じるのは、甲府地方気象台が富士山の「初冠雪」を観測したというニュースを聞いたときだ。平年では9月下旬。平地では残暑も続く時期だが、山々の冬の訪れはずっと早い。山屋としては冬山が待ち遠しくなる。
 次に感じるのは、滝が結氷した知らせを聞いたときで、山々では雪も降り積もっている11月中旬頃、上空の寒気の流入で冷え込みが強まることによってそれは起こる。高標高で気温が低く、風当たりも強く、湿度が低くて積雪の少ない条件を備えた八ヶ岳西面あたりが、その年の第一報となることが多い。夏は岩壁登攀、冬は氷瀑と氷柱でのアイスクライミングを好むクライマーたちにとって、冬の訪れを感じさせてくれるこれには、以上のものはないであろう。


アイスクライミング中の筆者(2011.1)

 最後に感じるのは、冬鳥の飛来を確認したとき。それも、ただ冬鳥を初認しただけではなく、我が家に来たときである。
 相模原市内の我が家に冬鳥がやって来るのは毎年遅い。今年も例外ではなく、10月中旬には長野県内でモズやツグミやカワラヒワを、11月上旬には宮城県内でカモやハクチョウを、11月下旬には神奈川県内の丹沢山地でもルリビタキやベニマシコ、レンジャクを確認したにも関わらず、12月に入っても我が家に冬鳥は来ていない。いつになったら来るのだろう、毎年そんなことを思っている気がする。今年それを確認したのは、12月14日の朝だった。
 朝、玄関の戸を開けて外に出てみると、聞き慣れない鳥の鳴き声が聞こえた。姿を確認すると、ジョウビタキとツグミが隣家の柿の木にとまっていた。夏は姿のなかったメジロまで来ていた。真の冬の訪れを感じた瞬間だった。夏はシジュウカラ、ヒヨドリ、ムクドリ、コゲラ、カラスが営巣し、またオナガが繁殖する騒がしい近所の林が、冬はツグミやジョウビタキなどが加わることで鳥類相が厚くなり、また騒がしくなる。が、これは喜ばしいことである。
 動物たちは季節移動をする。ヒトはさまざまな事情でそうするわけにはいかず、定住する。けれども、ヒトはその暮らしの中で四季の移ろいを感じ、それを楽しむ術を見出している。夏になれば冬が恋しくなり、冬になれば夏が恋しくなる。そんなことを思っているうちに、一年はあっという間に過ぎ去っていく。そんな暮らしも悪くない。


隣家の柿の木にやって来たメジロ(2012.12.20)
こちらを警戒していて、眼孔が鋭い。



オシドリ夫婦とカワウ(2012.12.20、相模原市内)



カワセミ♀(2012.12.21、相模原市内の公園)
夏の繁殖期には姿を消すが、今冬も戻って来てくれた。
この写真のあとに獲た魚は小物だった。

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