天皇の発言は、国体の破壊につながる。
今の政権御用達の学者がそう言っていましたが、国体とはまた古めかしい言葉。
若い人にはとっくに死語でしょうが、国民体育大会の略ではありません。
天皇を中心とした国の政治形体が国体です。
戦前の、大日本帝国憲法時代の政体で、そこでの天皇の地位は現人神(あらひとがみ)。
それが戦後憲法で、天皇は神ではなくなり、「象徴」という存在になりました。
だから、御用学者の言う「国体」というのは幻想に過ぎない。
しかし、それは彼らにとっては幻想ではなく、そこへ回帰することこそが理想。
戦後レジュームの脱却とはそういうことなのでしょう。
自民党の憲法草案は、天皇は元首かつ象徴、という何とも曖昧な表現になっています。
そこに待ったをかけたのが天皇の発言でした。
国政に関する機能を持たず、国事行為に専念することが象徴天皇なのだ、と。
つまり、仕事である国事行為が出来なくなったら、もはや象徴ではない。
だから、生前退位を考えている・・・。
こうした発言自体が、政治的発言と受けとられることも覚悟しての発表だったのでしょう。
もともと、戦後憲法の「象徴」も曖昧な言葉でした。
何をすべきで、何をすべきでないのか・・・いちばん悩まれたのは天皇ご自身だったのではないか。
だとすれば、象徴という立場、身の労苦をもっと国民の側で思慮する必要があるのでしょう。