新聞に、アニメ映画「火垂るの墓」を作った監督の話が載っていました。
戦争を体験された方です。その人が、こう話していることが印象的でした。
愛する人や家族を守るために戦う、なんて戦争中は誰も言っていなかった、と。
わたしは敗戦前年の生まれですから、戦争体験はありません。
その時代の空気も体感していないのですが、監督の言うことはほんとだろうな、と思います。
ほとんどの国民は、戦争がいやでいやでたまらなかったのではないでしょうか。
ただ、口に出せば、非国民と罵倒されるから、言わなかっただけのことでしょう。
お国のために、も同じことで、それらの殆どはあとから作られた言葉だと思います。
まして、喜んで死ぬ、なんてのは嘘もいいところで、多くは理不尽さを呪って死んでいった気がします。
戦争は決して美化するべきものではありません。
本にしろ映画にしろ、読む人、見る人の感動を無理やり誘い出そうとするものが多い気がします。
戦争をネタに、そんなあざといことするなよ、というのはわたしも幾度か思いました。
監督はこうも話していました。
泣ける、感動した、という共感を呼ぶための欺瞞であることを、見る人たちは見抜いてほしい、と。
物議をかもした直木賞作家の原作や映画のこと? つい、余計な邪推をしてしまいました。
「火垂るの墓」のアニメ映画は見ていませんが、本は若いころに読みました。
兄と妹が神戸の空襲で母と家をなくし、親戚に身を寄せるが居づらくなって家を出ます。
やがて食べるものがなくなって妹は餓死。
その遺骨を空き缶に入れて持ち歩いていた兄もやがて栄養失調でどこかの駅で死にます。
いまではストーリーもさだかには覚えていません。
ただ、駅員が投げ捨てた空き缶から妹の遺骨が転げ出し、あたり一面に蛍が飛び交う・・・・・。
そのシーンだけは強く印象に残っています。
戦争は誰も幸せにしません。
それを知っているからこそ、老若男女、多くの人たちが戦争に反対するのです。
自己中心的だからではなく、誰もが不幸になるから反対しているのです。