ブラジルに賭けてたのに・・・

　イングランドもブラジルも負けたって、勝負は時の運とは言うが、本当にわからないものだ。
　金曜日だったか、会社に若い（年齢的には若くないが、まあ私の息子ぐらいだから若いとしよう）サッカーファンの営業マンがいて、どこが優勝するか賭けようという。
　彼とは、本人よりも彼の妻や、妻の母（彼の姑に当るが）との方が長い付き合いで、たまたま会社が同じという因縁から、今や私に、公私共に重宝にこき使われている。私がどんなにボロクソにこき下ろしても腹を立てない。ボンボンタイプの気のいい憎めない男で、いつもくだらない親父ギャグを連発してはみんなを笑わせている。
　まあ彼のことはさておいて、サッカーの話に戻ろう。賭け事はご法度であるが、このぐらいのささやかなお遊びは許容範囲内とさせてもらうことにして、みんなに声を掛けていた。ベスト８の段階で、それぞれに自分の思うチームを決めて、一口1000円だそうだ。みんな１チームずつ決めて、社長には誰も推さないウクライナを強制的に割り当てて、結果を待つことになった。
　その同じ日の夕方、会社の全額負担で「飲み放題、食べ放題でお一人様3500円」のビアガーデンへ行くことになっていたので、６時過ぎに迎えの車で出発した。暑い日だったので冷たいビールではなくチューハイを飲んで、焼肉をメインに色々食べ物があり、大いに盛り上がった。
　件の彼は、飲んだら寝てしまうので今夜の試合が見られなくなると行くのを渋っていたが、強制的に連れて行ったら、何のことないずいぶん盛り上がっていた。が、結局その晩はテレビの前で酔いつぶれて寝てしまい、ろくに試合は見なかったそうである。
　私はブラジルを推していたのだが、翌朝５時ごろに眼が覚めて、まだ間に合うとテレビをつけた途端のフランスの１点である。いっぺんに眼が覚めた思いで続きを見ていたが時間切れ、とうとうブラジルは、フランスに８年越しの雪辱を晴らすことなく敗退した。フランスの１点は、ジダンのフリーキックをアンリがゴールへ、見事なプレーだった。それにしても４年前の大会時のジダンは、足がもつれ、迫力を欠いたプレーで、年齢的な限界を言われていたが、何のことない今回は、ボールを自由自在に転がす足さばきは、素人の私が見てもうまいなあと感心させられた。今大会を最後に現役引退だそうだが、こうなったら優勝して花を添えてという気にもなった。
　そして、その前の試合では、ベッカム様率いるイングランドが１－１で、期待を掛けたＰＫ戦で失敗、ポルトガルに負けるというあっけなさ。今大会が最後といわれるベッカムが負傷して退場、そして敗退という結果に悔し涙を流していたが、ベッカムの泣き顔はやはり絵になる。それにしても、今大会でも見せたベッカムのフリーキックは、一直線にゴールに吸い込まれる正確さで、もう神業としか言いようがない。
　そして昨日、早くも望みのなくなった私はしゃくに障るので、早々と1000円を払って終わりにした。誰が最後に笑うのか見ものである。