ISO成功法

ISOと継続的改善を両立させよう。ISOは継続的改善のための、基盤整備に役立つ。基盤整備と継続的改善のコツを整理したい。

成長か発展か

2006-10-22 | コラム
成長と発展は別のものととらえた方が良い。
人間は時間がたてば成長するが発展するとは限らない。
組織も同じで規模は大きくなっても、内面が伴わないようでは大人の組織とはいえない。

辞書を引いてみた。
成長に対応する言葉はGrowth、発展はDevelopを選びたい。
成長は過去から現在を延長させその先に延びる線のようにほんの少しの想像力があれば予測できる。
発展とはどんなことを言うのだろうか。

Developは開発とも訳されるが、囲まれた領域(velop)から、そとへ(De)飛び出すことを意味する。ちょうど昆虫が脱皮するように新しい姿かたちに成長することが発展である。
企業に当てはめて「脱皮」を考えてみよう。多くの制約条件やルールの中で一時期は成長するかもしれないが環境の変化で制約やルールは陳腐化する。そのような時は制約を飛び出さないと新しいことは出来ない。人間も親元からはなれ新しい社会に飛び出すことで精神的に成長し発展する。飛躍、躍進、変容、革新などは単なる成長とは意味が違う。新しいパラダイムを身につけることである。

このように考えると発展するためにはリスクを覚悟しなければならない。
予測できないリスクにあってパニック状態にならないためには、体力がなければならない。
予測可能なリスクに対応するためには、リスクを予測して対策を考えておけばよいが、予測してないリスクに出会った時、ここから切り抜けるには、基本に戻って考えることである。基本は日頃から身につけておかなければいざという時役に立たない。体力で言えば基礎体力、知識では教養である。


「教養とは生の難破を防ぐもの、無意味な悲劇に陥ることなく、過度に品格をおとすことなく、生きていくようにさせるところのものである。」オルテガ


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

25.設計変更管理の真の目的、設計変更の処置か予防か

2006-10-21 | 継続的改善52
7.3.7:設計変更について、レビュー、検証、妥当性確認を行うこと。当然、変更の承認、変更の処置が正しく行われたことを示す記録をとること。

設計変更は変更の理由を明確にして、変更実施前に承認を得ること、関係部署への連絡、図面の確実なさしかえ、など処理に多くの事務処理がともなう。
処置が確実に行われたか記録をとりながら消しこみでも行わないと漏れがでる。
処置は正しく行うべきである。ただし、処置のみを繰り返すのでなく再発防止、予防も同じように大切である。

コストダウンのための変更が、品質の不良につながり、結果はコストアップになったということをよく聞く。
変更は出来れば最小限にとどめたい。

そのため、設計では、設計変更の原因の解析をする。
ところが、変更はレビューの時の指摘や、他部門からの要望など、いわゆる他部門からの要望にこたえるためにおきる。ある会社で変更の原因解析をしたところ、大部分が指摘や要望によるもので、ごく僅かの設計者に起因する原因であった。このような解析をいくらおこなっても設計者は自分の解決すべき責任とは考えない。

ISOは顧客要求に特化した規格であるから、変更処理で問題が起きないように、水際で問題をくい止める努力を要求する。変更自体を少なくするのはその会社の技術力であり、利益の源泉であるが、そこまで要求するのはISOという規格の範囲を超えることになるので、そこまでは言及していない。ISOに対して過大の要求をすべきでない。

さて、ISOで変更処理に多大な労力をつぎ込むのは、こんなことをいつまでも繰り返すわけに行かないと反省するためには役に立つ。
出来ることなら設計変更を予防したい。
設計変更の真の原因は部門間連携の問題である。
当然、設計者が後工程のことをよく知っていれば、未然に防げるものも多い。
以前は「後工程はお客様」の考えから、設計者が製造の工程能力を理解しているのは当然のことであった。
最近は現場を理解してない設計者が多い。これが変更を多くしている。
設計者を甘やかしていると10年後の会社を危なくする。早急に手を打つべきである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

24.設計開発段階の評価、検証、妥当性確認

2006-10-20 | 継続的改善52
7.3.5 検証:設計開発のアウトプットがインプットの要求に合っているか、つき合わせて確認すること。
7.3.6 妥当性確認:開発された製品が顧客の指定し、意図した用途に合うか確認すること。 

長期にわたる設計開発段階では製造になってから問題が発見されたのでは、手直しや手戻りによる損失が発生する。特に新製品の発表時期は競合他社の関係で戦略的に決められていることが多いので、時期を逃すと取り返しのつかない大きな損失を経営に与える。

この損失は経営上の機会損失であり、潜在的である。経営上のリスクでもあり、経営層が問題とすべきことである。ただし優れた経営者は、「しまった」という具合に感じていることがおおい。そこで、その感覚的にとらえた損失を取り返す努力をする。
短期的に目先の利益のみ追求するように見られるが、経営層の焦りであることが多い。

本来、品質管理が経営の基盤整備に役立つのは、機会損失の低減や予防である。
ISO9001を認証取得しても品質管理を理解してないのは、経営層の参画がないからである。

この潜在的問題を顕在化しつつ予防するために、設計開発段階の決められた区切りで、確実に評価をしながら次の段階に進むことが大切である。
デザインレビュー、検証、妥当性確認などは評価の手段である。
検査は製品の合否の判定をして合格した製品やロットのみを次の工程に送るのが目的である。
評価は、次のステップに移行していいかどうかを判断するのが目的である。

検査と評価の比較はここでするつもりはないが、検査はロットや製品を対象にするが、評価はシステムを対象にして、先に進むかどうかを判断するのが目的である。
このため、どの段階でどのような評価を行うかを、「設計開発の計画」(7.3.1)として、あらかじめ決めておくことが大切である。「設計開発の計画」に品質管理の計画を組み込むのはこのような理由からである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

23.デザインレビュー

2006-10-19 | 継続的改善52
7.3.4:設計開発の期間は長い。そのため設計開発をいくつかの区切りに分けて、その区切りでチェックして先に進むというPDCAを繰り返す。要求を満たす設計開発になっているか、問題はないか、あればどのような処置をとるか、これを体系的に行うのがデザインレビューである。

設計の区切りは業種によりことなる。基本設計、詳細設計、工程設計などの何段階に分かれるが、その区切りで前に進んでいいかどうかを決めるのが設計審査である。

基本設計が完了したかどうかは、次工程の詳細設計がはじめられるかどうかで判断できる。つまり、詳細設計に対するの受入検査である。この検査に合格して、受け取ってもらえるかどうかで、基本設計の出来栄えは決まることになる。このように、設計審査は次工程への出荷検査、次工程からみた受入検査といえる。

同様に詳細設計の出来栄えという品質は、生産可能な設計になったことで評価できる。当然、前段階から引き継いだ顧客の要求に応えてなければならない。

このようなことをシステム的に行うのが、設計審査・デザインレビューである。

工程設計は製造に対する受入検査である。これが特に大切なのは、設計から製造へという部門間にまたがるからである。これが正しく運用されているかどうかで組織の総合力が決まる。戦後の品質管理導入時には、海外からのクレームの返品の山に対応するため設計も製造も区別なしに具体的な品質問題の解決になりふり構わず取組んだので、部門間の壁などなかった。
海外の組織においては、設計の工程に他部門が入り込んで審査するのは革新的なことである。特に品質問題の80%は設計段階に起因していると言われるから、この段階での問題解決が大切である。

いま、多くの産業で品質問題が多発している。国際化の時代で日本の製品の品質が目立たなくなっただけである。なりふり構わず品質問題に取組むべきべき段階に、スマートなシステムを考えるからおかしくなる。

多くの産業で、設計段階に各部門が集まり協力する体制をとっている。部門間連携というとすぐ会議を考えるが、多くの会議がそうであるように、ただ集まり情報を伝達する場にするのでなく、実務的に各部門が連携するシステムを考えるべきである。この部門間連携の成果を把握するのが設計審査である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

22.設計開発のインプット・アウトプット

2006-10-18 | 継続的改善52
7.3.2、 7.3.3:設計開発のアウトプットは、次のことである。要求を満たす。設計の後工程に情報を提供する。製品の合否判定基準を示す。製品が安全に適切に使えるように仕様を明確にする。
これが設計開発という仕事の目的である。このためのインプットとして、製品に対する要求や法律、規制。以前の設計の情報や設計開発に必要な情報などである。

ISOでは、インプットをアウトプットに変換する仕組みをプロセスという。
プロセスは仕事や機能、目的などを達成するためにあるから、設計開発の目的は顧客や市場と確約した品質を設計以降の後工程で実現するために必要な生産設備、原材料などのハードウェア-及び作業方法、人の教育訓練、などのソフトウェアーをアウトプットすることである。これらアウトプットの中で特に重要なのは、製品実現化プロセスのマネジメントの方法である。品質保証計画、品質管理計画、コントロールプランなどは、このためにある。品質管理が正しく行われているかどうかは、これらの計画のPDCAが実践されているかどうかである。

もう一つ重要な点は、製品開発は組織の将来の利益を得る投資であるから、品質要求のみでなく原価の目標も達成しなければならないことである。
特に設計開発段階の原価管理は原価企画・コストプランニングといわれる部分であるが、ここでの問題が多い。
またこの段階での品質設計の不具合は後工程で原価アップとなってくる。
そのためには、品質と同期化した原価管理がなされなければならない。

品質と原価は「建て前と本音」「表と裏」のようにとらえられるが、この両立をどのように追及して実践するかが、人間における教養と同じく、企業においても必要なことである。
これこそが、企業文化であり、企業の品格である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

21,設計・開発の上流段階に組織を結集させる

2006-10-17 | 継続的改善52
7.3.1: 設計開発にあたって計画を決めその管理をすること。その計画には、どのようなステップ(区切り)で設計開発を行うか。その区切りでレビュウ、検証、妥当性確認などを効果的に実施すること。設計開発の責任権限を決めること。

ISOでは、その後でもっと親切に、組織の運営について忠告してくれる。
効果的なコミュニケーションのための責任の割り当てること。
設計開発段階の各部門のインタフェースを運営管理すること。

さて、ISOではなぜここまで心配してくれるのだろうか。
欧米の企業にとって、開発の上流段階に各部門が集まり問題解決するというのは革新的出来事に違いない。まず、設計の技術者が製造のスタッフの意見を聞くことすら、従来はなかったことと思う。日本と違って設計者と製造のメンバーとでは、給料すら違う。

以前、イギリスに進出した日本の工場長から、現地の優秀な工場スタッフを募集する難しさを聞いたことがある。設計者はいくらでもいい人が集まるが、製造のスタッフは集まらないとのことである。そのくらい仕事に対する価値観が違うようである。

日本では、過去の「安かろう悪かろう」から立ち上がるために「全社一丸となって」品質の向上に取り組んだ。これを日本では、全社的とか総合的品質管理といった。この成果を見た海外からの訪問者が日本の方式を、QS9000 やISO/TSに「部門横断的アプローチ」なる名前で紹介している。日本では機能別管理といって品質保証や原価管理などは部門間連携の活動としてあたり前に、実施していた。

部門間連携についてどうしてもふれておきたい。部門間連携というときまって「会議」である。部門間にまたがる問題を会議で検討するとなると、部門の利害が相対する。部門対抗の喧嘩みたいなもので、喧嘩の強い奴がいる部門の意見が通ることになる。横の連携が悪いのは、縦が強すぎるからである。縦が強すぎるのは、上にたつものの器量がないのが最大の原因である。部下に仕事を任せ協力し合って成果をあげさせる指導をしてないからである。部門の責任者は自分の部門に責任を持つのは当然のことであるが、部門間の連携に責任を持たせないから、縦のみが強くなる。つきつめて考えると経営や組織運営の在り方に関係する。

最近は,日本も国際化して、「部門横断的アプローチ」を意識しないと、部門間の連携が取れないこともあるようだ。50年前の品質管理を知っている人は嘆かわしく思うことだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

事例

2006-10-16 | 継続的改善52
ある素材メーカのことである。客先ニーズに合わせて素材を供給していた会社が,市場の変化で販売量が低下したので,新市場の開拓を考えた。
自社の得意な技術を活用して,新市場の製品に素材を供給できるか,検討をすすめた。

いままでの顧客は素材のことにもなれていたため、あまり突飛なクレームもない。
ところが,新しい顧客は、この素材に慣れてないため,考えられないようなクレームがおきる。このように、製品によって,開発の品質保証の重点が異なることを経験した。

これらの開発を通して、従来型の製品開発を「市場先行型」、保有技術を生かす開発を
「技術先行型」として開発の重点管理すべきことを層別管理して進めることとした。

洗剤や化粧品などの家庭用品を扱うL社では、海外との積極的技術提携により製品グループを充実してきた。
この会社では、技術の新規性,市場の新規性を現有から新規まで3段階に分け,3×3のマトリックスを作り,開発のパターンを整理している。
製品を開発するはじめの段階で、まず,その製品がどのパターンに属するのかを評価して,開発スケジュールの概略を作成する。

品質保証システム,品質システムは一種類作成してすべての製品を当てはめるのはむりが多い。非常に類似性のある製品でも、品質方針や技術の新規性により管理するポイントがことなるので、運用管理に際して工夫がいる。
新製品に応じた、層別管理、重点管理できる工夫が必要である。この段階での戦略の不足が企業にとっての一番の損失である。

さて,L社では、生産準備と市場導入の計画が関連するため、パート(PERT)という日程管理の手法を使い、日程,コスト,品質の総合管理を行った。このようなPERTを
PERT―QCとよんでいる。

これらの事例のように,自社の従来の製品について総点検することが大切だが,多くの会社では製品別に縦割りの組織であるため,総合的に考えることが難しい。

ある中小企業では,新製品開発の品質保証を中心にISOに取り組み認証取得により対外的にアピールできる体制を作り、その後,従来から社長の夢の実現に取り組んだ。

ある新規分野進出の不足技術を補うため,自社より大きいアウトソーシング先の企業数社とネットワークを結び,新規事業をたちあげた。後日,社長は、ISOでも取得していなければこの事業は立ち上げられなかったと話していたが、このような戦略的取り組み方も検討すべきである。


経営資源の運営というと、資源を投入することばかり考えるが、もっと大事なことは、資源を使わないことである。
例えば、何か新しいことを始める場合は、今までの仕事を点検して、しなくて良いことを
決めることである。新たな仕事が追加されて、今までの仕事が見直されないことが多い。特に、ISOのような従来の仕事を見直す時には、今までの仕事でしなくてもいい仕事が見直しされなければ、改善のはずが効果が出ないことになる。
この意味で、ISOは事業再構築(本来の意味でのリストラ)の手段であるがこれがあまり考えられてない。

つぎに新製品開発のような時間が勝負の仕事では、開発のプロセスですべきことと、日常することを整理して取り組むことが大切である。

このような当たり前のことが出来てないのは、個別製品企画という計画段階で、現状把握をせず理想的な計画を作るからである。慢性的に計画倒れにおわることになる。
これらは技術力の不足としてあきらめていることが多いが、計画の管理の不足であり経営資源の投入の誤りであり、経営層のマネジメント力の不足である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ISOという変な日本語

2006-10-15 | ISO外論
ISOを読んでいると、上から命令されるように思える。
日本語はこんな言い方はしないと思い、対訳をみている。SHALLが目に付く。
中学のとき習った英語では命令形である。国際規格だから役に立つことが書いてあると思って読むと、この命令形が多い。
審査員の中にはSHALLが幾つあるなんて事を知っているのを得意になっているのが、いるから理解に苦しむ。

IT化時代なんて騒がれて何年もたつが、ITが人間にもたらしたものは、わからないことを覚えるためには、マニュアルを読めという習慣である。
マニュアルには基本や原理原則が書いてあるのではなく、この通りすれば出来るようになりますということが書いてある。

学生時代に「概論」という本を講義を聞きながら読んで、学問に対する「忍耐」と「謙虚」を習ったが、いまはマニュアルから「服従」を習っている。
このような主客が転倒した文化が、マニュアル文化、カタログ文化である。

以前、EUの安全規格CEマーキングを勉強していたとき、ドイツの技術者から取扱説明書の話を聞いたことがある。
彼は日本の工作機械をEUへ輸出する時のコンサルタントをしていたが、日本の取扱説明書がどうしてあんな書き方をするのかわからないという。
「この度、当社の製品をお買い上げいただきましてありがとうございました。」ではじまる取扱説明書のどこがおかしいのか、わからないのでドイツの説明書を見せてもらった。
「機械を使う前にかならず読みなさい」と書いてある。「読んだ人はここにサインしなさい」
「サインの無い人が使ってはなりません」全てSHALL/命令形である。
日本の習慣にお客さんに命令することはない。
「このとおりやらなければ責任はあなた方にあります。」とまでは言いきれない。
SHALLを丁寧に言っても所詮、慇懃無礼なのだが、しょうがない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

20.顧客重視ということ

2006-10-14 | 継続的改善52
7.2:顧客関連のプロセスは、顧客の要求を知り、実現できることを確約するプロセスである。

今は、忘れられているが、日本の品質管理がマネジメントの重要な道具になったときから、日本では顧客重視の考えがあった。導入段階で品質管理の指導をしたデミング博士は市場調査の専門家であった。「プロダクトアウトでなくマーケットインを」という日本語英語は生産者重視でなく顧客重視という当時からの品質管理の基本的考えである。
当時は、海外に輸出した製品のクレーム・返品の山に対応することが、顧客重視であった。
やがて、クレームも落ち着くと、次の段階は市場での海外の製品との競争がはじまる。
キャタピラ社のブルドーザを日本で迎えうつために、社運をかけて品質管理をした小松が日本で苦労の末、品質目標を達成すると、本場のアメリカに乗り込んでいく話は、余りにも有名である。
内外の競合メーカとの競争を通して、品質はますます向上する。品質管理の大先輩である第1次南極越冬隊長の西堀博士はそれを「励ましあいの競走」と表現したが、このことも高度成長の要因である。

その後、海外から批判された日本流の系列という、買い手と売り手の関係の強化がなされる。特に自動車業界での国際化と企業統合にあわせて、自動車産業に特化したQS9000やISO/TS16949ができると、従来、系列を非難した海外からは、あらためて、買い手と売り手の関係の強化が要求されるようになる。
事故や安全性に対する品質問題が顕在化している現状を考えると、真の顧客の要求をつかむということは、品質管理という狭い分野のみの問題でなく永遠のテーマなのかもしれない。「歴史は繰り返す」というが、今の日本のものづくりを立て直すためには、もう一度原点に立ち戻って、考え、行動することが大切である。


T.レビットは「システムが複雑になると、・・・売り手は期待価値を最優先させる。」と示唆している。潜在的要求に答えるとなると、顧客との関係の強化がますます重要になっていくだろう。T.レビットの示唆したことは、既に起きていることも含めた近未来の予測でもある。
「取引の最初から買い手との関係をうまく管理し、買い手の不満やニーズにうまく対応することが迫られてくる。売り手と買い手は相互依存の関係となるから、売り手はこれを理解し、管理についてのプランを用意しておかなければならない。両者の関係をあたためてふくらませていけば、売り手にとっては単なる金銭以上の価値を手中にできることは間違いない。」
引用が少し長くなったが、今のISOの必要性に対する示唆である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

19.事業戦略と品質戦略

2006-10-13 | 継続的改善52
7.1:製品の開発から生産、サービスにいたる製品実現のプロセスについての計画を作成すること。計画は次の項目を検討すること。
製品の品質目標及び要求事項
特有なプロセス、文書、経営資源の必要性
検証、妥当性確認、監視、検査、試験、合否判定基準
要求事項を満たす証明になる記録

9001の特徴は、製品開発からはじまる「ものづくりのプロセス」を中心にしての具体的手順がかかれていることで、この7章の「製品実現」に他の章の要求事項を関連付けて考えると具体性が出てくる。
たとえば、5章の「経営者の責任」には品質方針についての要求があるが、この品質方針は、設計、生産準備、生産などの各段階に展開されて具体化される。
当然、6の「資源の運用管理」についても、製品の実現のために、人、もの、金などの経営資源をどう投入するか、具体的に検討し実施されなければならない。
ものづくりの全てのプロセスで、「測定、分析及び改善」(8章)を繰り返すのは当然のことである。
ISOではこれらの(各章の)ことをプロセスとよび、それらが有機的に総合的に結びついたものをシステムと名付けている。

さて、7章は、新製品開発から生産、販売、サービスにいたるプロセスを考えればよい。
そのプロセスの一番上流で検討することは、事業戦略との関連で製品についての企画を考えることである。

品質管理と事業戦略の関連は産業によりまた、市場環境により異なる。ヨーロッパなどでは、半世紀以上も同じ部品を作り続けている企業は多い。日本と違い大きい企業が必ずしもいいと考えられてないから、日本のように中小企業が弱者であるというかんがえはない。1994年版のISOが改訂されるとき、日本が主張したのは大企業対象のISOだけでなく中小企業向けのISOを作成するよう主張したそうであるが、日本的な弱者救済の発想がEUになく、中小企業向けのISOは日の目を見なかった。

つぎに,品質戦略について考えたい。日本の高度成長の時期には,事業戦略の中心に品質戦略があった。当時は品質がこれ以上悪くなれば,生き残れないという時代であった。いまは、品質がよくなり、過去のハングリー精神が忘れられている。しかし、品質上のミスが企業の生死を決めることは昔と変わらない。以前のように国全体が励ましあって成長した時代と違い、最近は人の失敗を自分のチャンスと見る世の中である。

事業戦略における品質戦略の位置付けは組織によりことなるが、製品開発の上流の段階から検討すべき企業の存続に関与する戦略である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする