ISO成功法

ISOと継続的改善を両立させよう。ISOは継続的改善のための、基盤整備に役立つ。基盤整備と継続的改善のコツを整理したい。

25.設計変更の低減による設計期間の短縮

2006-12-31 | 継続的改善52
組織の問題で顕在化しているのは「氷山の一角」である。多くの問題は、潜在化していて、長く放置しておくと慢性化してくる。慢性的問題は、チャレンジをする気持ちをおさえる。これが機会損失の原因である。この解決には、氷山の全体を見る洞察力と深く原因を追求する解析力が必要である。 

製品開発段階の潜在的問題として代表的なものは設計変更である。しかし、多くの会社で設計変更は改善すべき問題とは思われてない。品質の良いものを安く作るため、又は顧客や後工程からの要求に対応する変更は避けられないものとして処理される。ところが、変更は設計への手もどり、手直しとなり、開発の後になるほど、変更処理にともなう損失も製品の原価も高くなる。また、コストダウンの目的で行った設計変更が後で品質問題を起こしコストアップになったという例は多い。そのため、変更はできるだけ前の段階で行いたい。また、変更の大部分は、従来設計の後工程と思われていた部品や原材料、製造の情報を事前に入手し、それらの部門の協力を得て設計することにより、変更の未然防止が可能となる。

変更の前倒し
ある機械加工会社の設計者は変更を減らすことなどできないものと思っていた。そこでスタッフが変更の追跡調査を行い、開発プロセスの後ろになればなるほど、変更処理のコストが高くなることを明らかにした。
次に設計部門と変更の要求を出す部門が集り、どうすれば、変更を前倒しできるかを検討した。はじめは、出図時点での検討会を持つという程度だったが、設計者も進んで製造に相談するようになり、変更の前倒しという成果が出てきた。

変更の低減
変更の原因の解析を行い、変更そのものも少なくすることができた。まず、変更について、変更すべき問題が発見された時点とそれが本来どこで発見可能か、つまり問題の原因があると思われるポイントを解析した。この解析で部門間連携のしくみの構築ができて、設計期間の短縮がはかれる。次期の製品開発ではどのポイントを重点管理するかが分かれば変更の予防とコストの低減ができるわけである。


事例に学ぶ
潜在的問題に気付いて、それを解決することで得られる成果は大きい。成果が上がり、そこに注目する人が増えると、新たなパラダイムである企業文化ができることから、従来見えなかった、あるいは見ようとしてなかった潜在的問題が浮かび上がるように見えてくるわけである。これが大きな波及効果を生むわけである。
 
興味深い話しを紹介しよう。1988年、アメリカでコンカレント・エンジニアリングという概念がNASAから発表された。この内容の大部分は日本の機械や電機業界が1960年から70年代から実施していたことである。アメリカが日本より20年遅れているということを言うつもりはない。当時「設計変更を繰り返し実施するからこそ良いものができる」と確信していたアメリカの技術者の気持ちをどう変えたかに興味がある。コンカレント・エンジニアリングは設計段階から各部門が協力して、コンカレントに、つまり同時進行で並列的に開発しようというものである。
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24.設計開発の区切り

2006-12-30 | 継続的改善52

新製品の設計開発のすすめ方は、その製品の市場新規性や技術的難易度により区別される。
マネジメントの方法も、開発する製品の目的、技術的問題により重点が異なるのは、当然のことである。
マネジメントはきめ細かな配慮が大切だが、組織全体の力を出すためには、目的指向、問題指向、重点指向が必要である。
また、限られた開発の時間内で実施することと、日常実施することを区別することも大切である。

受注産業や部品メーカでは、このような区別がつけられていないため、いつも仕事に追われて自社の特色が育てられないことが多い。「万年受身体質」とはこのような状態をいう。
顧客の顔色を見ながらトラブルの対応に時間をとられ、自社の将来を見据えた創造性のあるマネジメントを実践してない。
このような悪循環を断ち切るために、メリハリのある製品開発の運用が必要である。

製品開発の上流段階で開発の全体工程に関する「品質保証計画」を設定する。
どれくらい前の段階で計画できるかは、その企業の実力にかかっている。
「品質目標・品質方針」設定と同時に問題の予測ができる企業と量産移行後のトラブルという後追いの問題に追われる企業の差は大きい。

「品質保証計画」の骨子は、製品開発工程にたいする必要最小限の区切り(段階、ステップ)をつけること。各段階でどのような品質確認や評価をするか決めておくことである。当然この評価には目標原価の達成の評価も含まれる。品質保証と原価管理は同期化させて管理しないと意味がない。開発段階の原価管理を原価企画(コストプランニング)とよぶ。
デザインレビュー、検証、妥当性確認などは評価の手段である。

検査と評価の比較はここでするつもりはないが、検査はロットや製品を対象にするが、評価はシステムを対象にして、先に進むかどうかを判断するのが目的である。
このため、どの段階でどのような評価を行うかを、「設計開発の計画」として、あらかじめ決めておくことが大切である。「設計開発の計画」に品質管理の計画を組み込むのはこのような理由からである。
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23.設計の機能を明確にする

2006-12-29 | 継続的改善52

機能や役割を明確にするには、インプットとアウトプットを検討すればよい。
システムはインプットをアウトプットそれにアウトプットに変換する機能でなりたっている。もし、システムの機能(働き、役割)がわからない時はいろいろなインプットを入れて、そのアウトプットを解析しながら、機能を類推すればよい。

例えば、製造工程は多くの原因の集まりで構成される。
4つのMといわれる材料、設備、方法、人などの原因の組み合わせでできている。
原因の組み合わせでアウトプットの結果はばらつきを持つ。この結果を規格やのぞましい範囲に入れるために原因に手を打つ活動が管理である。ついでどの原因に手を打つか合理的、科学的に決めるため解析が必要となる。

さて、設計の仕事は製造工程の4Mに比べ人や技術というソフトに起因する原因の組み合わせで構成される。このようなブラックボックスを管理するため、インプットと目標となるアウトプットを明確にすることが大切である。
また製品企画から基本設計、生産設計という長い段階におけるインプット、アウトプットの連鎖を正しく行うために、品質展開、品質機能展開という手法を開発した。1972年、三菱重工業神戸造船所における個別受注生産の品質保証の手法として開発活用された。
設計の機能を明確にしてその役割をはたすためには、品質の解析と展開をくりかえすことである。
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22.部門間連携

2006-12-28 | 継続的改善52

人間社会で縄張りができるのは資源が有限であることによる。
資源が無限なら仲良く暮らせるはずである。
石油という資源のことを考えればこのことがよくわかる。産油国の内部にはその国独自の組織運営の方法があり均衡が保たれているが、石油のない国との取引ができ新しい社会ができてくると新たな問題・諍いが起きてくる。この問題の解決のため話し合いがなされる。話し合いは問題をこれ以上大きくしないためのコンセンサスを得ることが目的である。問題の原因を探り問題の再発防止をするためにあるのではない。
6カ国協議で問題の原因究明と再発防止を協議されるはずはない。

部門間連携についてどうしてもふれておきたい。部門間連携というときまって「会議」である。部門間にまたがる問題を会議で検討するとなると、部門の利害が相対する。部門対抗の喧嘩みたいなもので、喧嘩の強い奴がいる部門の意見が通ることになる。

横の連携が悪いのは、縦が強すぎるからである。縦が強すぎるのは、上にたつものの器量がないのが最大の原因である。部下に仕事を任せ協力し合って成果をあげさせる指導をしてないからである。部門の責任者は自分の部門に責任を持つのは当然のことであるが、部門間の連携に責任を持たせないから、縦のみが強くなる。つきつめて考えると経営や組織運営の在り方に関係する。組織全体の最適化を考えるか、自分の地位を優先するかの判断による。自分の地位をかためるか、縄張りを拡大するかは、上に立つものの器量による。

最近は,日本も国際化して、「部門横断的アプローチ」なる変な方法を意識しないと、部門間の連携が取れないことがあるようだ。日本は和の国である、なんて考えるのは時代遅れなのだろうか。50年前の品質管理を知っている人は嘆かわしく思うことだろう。
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21.顧客重視ということ

2006-12-27 | 継続的改善52
顧客満足は顧客の期待にこたえることで得られる。
最近の製品のようにシステムが組み入れられた複合的製品になると、顧客が使い始めから全ての機能を使うことは少なく、使いながら工夫していくことも多い。
顧客が要求するのは期待効果であり、製品を生みだした会社に対する信頼である。

その時々の顧客要求に答えているだけではいつまで経っても要求に答えきれない。
顧客は気まぐれなことが多く、安請け合いする営業が多いからである。
売り手と買い手は同等で、長期の信頼関係が維持できなければならない。

顧客重視は日本では品質管理の草創期からあった概念であり、「生産者指向でなく消費者指向を」というマーケットインという日本語英語があった。日本の品質管理に影響を与えたデミング博士が市場調査の専門家であったことも影響している。

さて、欧米では長期的信頼関係の証として契約を求める。いま愛し合っているだけでは満足できない恋人が長期的保証に結婚を考えるようなものである。
ISOも契約である。となると審査機関は結婚紹介所か。
本来、品質管理はきまじめな活動である。
契約や証しを求めることなく、実践して心意気をしめす。
日本人のDNAに組み込まれている{道}である。
品質管理道というのも語呂が悪いから、西堀先生の提唱する「技師道」がいいと思う。
これについてはいずれまとめたい。
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20.技術と市場

2006-12-26 | 継続的改善52
ある素材メーカのことである。客先ニーズに合わせて素材を供給していた会社が,市場の変化で販売量が低下したので,新市場の開拓を考えた。
自社の得意な技術を活用して,新市場の製品に素材を供給できるか,検討をすすめた。

いままでの顧客は素材のことにもなれていたため、あまり突飛なクレームもない。
ところが,新しい顧客は、この素材に慣れてないため,考えられないようなクレームがおきる。このように、製品によって,開発の品質保証の重点が異なることを経験した。

これらの開発を通して、従来型の製品開発を「市場先行型」、保有技術を生かす開発を
「技術先行型」として開発の重点管理すべきことを層別管理して進めることとした。

洗剤や化粧品などの家庭用品を扱うL社では、海外との積極的技術提携により製品グループを充実してきた。
この会社では、技術の新規性,市場の新規性を現有から新規まで3段階に分け,3×3のマトリックスを作り,開発のパターンを整理している。
製品を開発するはじめの段階で、まず,その製品がどのパターンに属するのかを評価して,開発スケジュールの概略を作成する。

品質保証システム,品質システムは一種類作成してすべての製品を当てはめるのはむりが多い。非常に類似性のある製品でも、品質方針や技術の新規性により管理するポイントがことなるので、運用管理に際して工夫がいる。
新製品に応じた、層別管理、重点管理できる工夫が必要である。この段階での戦略の不足が企業にとっての一番の損失である。

さて,L社では、生産準備と市場導入の計画が関連するため、パート(PERT)という日程管理の手法を使い、日程,コスト,品質の総合管理を行った。このようなPERTを
PERT―QCとよんでいる。

これらの事例のように,自社の従来の製品について総点検することが大切だが,多くの会社では製品別に縦割りの組織であるため,総合的に考えることが難しい。
また、製品企画、計画段階で、現状把握をせず理想的な計画を作るからである。慢性的に計画倒れにおわることになる。
これらは技術力の不足としてあきらめていることが多いが、計画の管理の不足であり経営資源の投入の誤りであり、経営層のマネジメント力の不足である。
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19.品質戦略と技術

2006-12-25 | 継続的改善52
よい品質のものを安いコストで作るには技術がいる。
設計の目標にあわせてバラツキの少ないものを安いコストで作るのも技術である。
このように技術は、品質とコストの関数であらわせる。

品質とコストに深い関係があるのは、品質を無視したコストダウンを考えれば理解できる。見かけ上のコストダウンはできても、後で品質問題が多発して結局コストアップになった
という例は多い。これを理解している企業ではコストダウンを実施する時は、品質の確認を行うことにしている。
新製品開発は品質保証と原価管理をシステムとして同期化して実施しないと、開発後問題が多発する。
コストダウンを目的として品質の確認を準備しておくというCR-QAという手法もある。

このように品質管理を理解していると応用範囲も広がり多くの成果が期待できる。
品質管理が唯一つの手法としているうちはまだ中途半端である。
「守破離」というプロセスを考え次のステップに飛躍すべきである。
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第3章 ものづくりプロセスの継続的改善

2006-12-24 | 継続的改善52
ものづくりの基本は「検査で品質をつくるのではなく、工程で品質をつくりこむ」ことである。

このためには、工程の管理が必要であり、現場のノウハウ、知恵が生かされなければならない。この現場の知恵は進歩、改善を繰り返し生きた技術となる。
さてそれまでの生産現場は「チャップリンのモダンタイムス」にあるベルトコンベアに働かされる人に象徴されるように、人を効率的に働かせる人の管理が中心であった。
テーラーの科学的管理法やその後の動作研究、時間研究が誤解されながら、人を管理の対象とした管理法から「品質で現場を、工程を、技術を管理する」と変化させたのは、日本の品質管理の功績である。

その後、製造工程で発見される不良の大部分が設計に起因するということがわかり、元から直す「源流管理」という考えが生まれた。製品開発から生産、販売、サービスにいたる流れを品質保証システムにまとめ、各段階で実施する品質保証の活動を整理した。また、源流のみでなく全ての部門の総合力を出して製品の品質に取組むべきという考えに発展してきた。

これらの基本は、製造工程も製品開発のプロセスも、ものづくりの現場として活動し継続的改善を繰り返すことである。
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18.継続的改善のための継続的教育

2006-12-23 | 継続的改善52
多くの企業が固有技術の教育はするが管理技術の教育はしない。
特に最近のように、第一線の従業員が派遣や外国人労働者の場合、就業期間の関係から教育にあまり時間をかけられない。終身雇用の時代と違い、企業としては「即戦力」を要求するのは当然である。そのため、仕事をしながら教えるというOJTが中心となるが、教える技術と教える者、教えられる者、双方の信頼関係が生まれるまで時間がかかり、教育に工夫が必要である。

三現主義というが、仕事の第一線である現場は本来生き物である。多くの問題とその要因が現場にはありそれが改善され、たえず変化している。第一線から問題が上がらない現場は成長が停滞した現場である。問題の発見や改善がなされない現場は死んでいる現場である。死んだ現場に問題が垂れ流させる。働く意欲があっても、派遣や外国人労働者にはどうすることも出来ない。このようなことを解決するため品質管理などの管理技術が必要だが、ISOではシステム整備が目的になり、実践的な現場の活動や継続的改善に対して具体的な要求がだされているわけではない。ISOはシステムの規格であるから現状の範囲にとどめるべきである。継続的改善という活動は組織の文化、特色に根ざし、強い点をますます強くする活動であるから、規格のように細部を規定するものではない。本シリーズでISOの目的はきばんせいびであり、継続的改善と区別しているのは、これらの理由による。
システムと実践的活動は両立すべきであり、一方で十分ということはない。
このことの理解がされてないための弊害が大きい。

問題のある企業は大きな問題が顕在化する前にシステム整備という対策を実施するため、結果的に問題隠しをしたことになる。問題の解決を考える前に、問題を隠すための言い訳を考える。上位者が「言い訳は聞きたくない」と思えば思うほど「言い訳」は巧妙になってくる。
上位者も自ら現場に飛び込んで問題解決しようとしないから、事実が歪められ本来単純な問題も複雑な組織の問題になる。問題が大きくなるまで手をこまねいて待っているようなものである。「言い訳」とは自分は悪くない、人が悪いということを遠まわしに説明することである。これを繰り返すうちに、部門間、階層間、仕事の前後などの「間」の壁が厚くなる。連携の悪さがでてくる。

この壁をなくし連携を強めるための改善を教育の目的とすべきである。
教育というと即効性を求めるのは良くないと考えがちであるが、管理技術は実践を通して学ぶべきことであり、具体的問題を取り上げ成果をあげながら身につけることである。
はじめに、一人一人の意識を深めるため自主管理能力を高めることがまず必要である。
次ぎに、チームワーク能力を高めるため、改善の方法を身に付けること。
3番目にはリーダシップ能力と組織学習を身につけること。
これらを実施することにより、動機付けと活性化の目的である、品質目標の達成、継続的改善の実施、革新に参画することを教育の目標にすべきである。
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17.動機付けとQWL

2006-12-22 | 継続的改善52
人はどのようにして動機付けられるのだろうか。
怒りからだろうか。喜びからだろうか。
信念からだろうか。金銭からだろうか。
それとも、愛からだろうか。希望からだろうか。

多くのきっかけがあるだろうが、前向きに何かしようというときに人は動機付けられる。
スポーツなどでは、負けた悔しさが強くなるきっかけを作ることがあるが、普段から強くなりたいと思っているから、負けたとき学ぶことができる。

仕事の現場ではどうだろうか。仕事があり目標があり、仲間がいる。大切なことは、仕事から得られる充実感、満足感である。これをQWL(QUALITY OF WORK LIFE:職業生活の質)ということがある。顧客満足を追及するのと同じように、仕事満足も追求すべきである。
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