全社各部門が協力して品質を作りこむこと、また顧客との接点を持つマーケティングや営業の品質管理における必要性については、デミング博士がその講義で強調したことである。
また、デミング博士が強調したように、シューハート博士も全社的活動の必要性を示唆している。このように、品質管理が生まれた初めから、品質管理は全社的活動であった。
その後、GEの副社長であったDrファイゲンバウムがTQCという本を書いた。
TQCという言葉の普及について面白いエピソードがあるので紹介しておこう。
日本で第1回の品質管理の国際会議が開かれた時のこと、国際的に通用する言葉として「品質管理」という言葉をどう表現しようかと考えてファイゲンバウムの“TQC”を使うことにした。海外に問い合わせたところあまり一般的でないのがわかり国際会議では、全社的品質管理(Company-Wide QC)を使うことにした。このときから日本ではTQCという言葉が普及した。それから何年か経って、GEを訪問した時、品質管理部長にGEでなぜTQCという言葉が使われてないのか質問してみた。けげんな顔をして先方から帰ってきた言葉は「あのファイゲンバウムのTQCのことか」という回答だった。
言葉と普及は面白いものだ。
さて、生産部門のみでなく生産技術部門その上流の設計部門および他の関連部門との連携での品質業務の必要性から、品質管理は全社的活動(Company-Wide QC)となった。また、一部のスタッフのみでなく、中間管理職、経営者までの各階層に広がり、全員参加の実践的経営手法となった。TQCというと現場第一線でのQCサークル活動を全社的に行うことと思われているが、これはまったくの誤解である。
また、部門間連携のシステム活動としての機能別管理活動が品質保証、原価管理、生産量や納期管理などが実施される。その他、業種の必要性に合せて、安全、環境なども機能別管理として実施される。このように、全社的品質管理(TQC)は製品別管理、部門別管理、機能別管理などのトータルな実践的経営活動として日本では普及した。