崖っぷちロー

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「狼と香辛料」第9巻について

2009-04-07 21:39:10 | 小説・本
狼と香辛料第9巻は、スケール的にもかなり大きな話。
でも、私が気になったのはかなり小さな部分。
42頁の「黄色は金を思わせる高貴な色だ。」という部分。

私の頭の中では、高貴な色=紫だったので、
黄色が高貴というのは何かいわれでもあるのかと調べてみたくなった。

なので、先日購入した『中世ヨーロッパを生きる』(東京大学出版会)に収められている、
徳井淑子「衣服の色と文様が語る中世フランスの感性」を読んでみたが、
黒色と涙文についてのことくらいしか分からない。

さてどうしようかと思っていたところ、偶然にも大学の書店で、
同じ人が書いた『色で読む中世ヨーロッパ』(講談社選書メチエ)という本を発見、購入。

本文1ページ目から気になることが。
 黄色は、日本でも中国でも、東洋では高貴な色とされてきたが、
 ヨーロッパでは忌み嫌われた色としての長い歴史をもっている。


なんと。
ならば、日本人の私は、むしろ違和感を持つべきではなかったということかw

その後も色についての総論などを経て、各色ごとに各論が述べられており、
第五章が黄色について記述された部分となっている。

そこでは、黄色はこどもと道化・芸人しか着ないとか、ユダヤ人の色だとか、
黄褐色は疑念・欺瞞を意味するとか、薄黄色は悲しみという悪徳の色だとか、
そういう中世的感性が書かれている。

挙げ句の果てには、
 金色と黄色をすでに同じ範疇の色としてとらえていることがわかるが、
 通常は良い意味の場合は「金色」、悪い意味の場合は「黄色」ということばで使い分けられる。


とまで書かれており、これを踏まえると店番の少年の売り文句の意味もまた少し
違って読めるのかもしれない。


とはいえ、中世という長いスパンの中では感性も変化するらしく、
第八章「色の価値の転換」では、黄色(黄褐色)に対する評価の改善が徐々にされていった
といことが述べられている。

これが中世末期、だいたい15世紀頃の事らしいので、そうすると、
「狼と香辛料」もこの部分については中世末期を素材にして書かれたのかもしれないなと。

とはいえ、「狼と香辛料」の世界自体が、結構経済的に発展している感じなので、
作品全体について参照している時代自体が、そもそも中世末期以降なのかもしれませんね。


***
大学生協で面白そうな本を他にも何冊か見つけたのですが、
法律の基本書以上に高かったので、あきらめました。
ちなみに『色で読む中世ヨーロッパ』は1700円なので、
このジャンルの割にはお手軽価格な部類に入るのでしょう。

***
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