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新潟市の住宅設計事務所ネイティブディメンションズ=狭小住宅や小さい家、構造計算、高気密高断熱が好きな建築士のブログ

人通口

2009-07-14 17:30:30 | 建築構造

木造住宅と言っても、必ず一番下は鉄筋コンクリートの基礎がある訳で、どんな建物でも柱や梁の構造計算は必要ですが、当然、基礎の構造計算も必要になります。

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以前、べた基礎の場合、上図の様な構成になっており、この時の記事では、内部の基礎は負担する荷重が多いのに、外周部の基礎よりも背が低かったり、人通口で切られているとご紹介しました。

この人通口。

人が通る口と書いて人通口

メンテナンスの為に必要ではあるんですけど、だからって、人様が通るんだから、ちょっとくらい切っちゃってもいいじゃないか(えなり君風)、とはなりません

(ちなみに、布基礎の場合であっても同じです)

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例えば、フラット35の仕様書には、布基礎の解説で、基礎が島型や半島型になるのは好ましくないと説明しています。これは、言い方が違うだけで人通口も当てはまります

ですから、人通口の部分についても、当然構造計算を行って、力に対して耐えられるようにしなければいけません。

で、この人通口。ただ、適当に配置するのはオサレではありません

まぁ、お金さえ掛ければどこでもいいんですけど、効果を変えずに少しでもコストを下げる計画をするのも設計士の役目です。

まず、基礎なんですけど、建物の下にあるので、上からの荷重を支えている、耐えていると考えがちですが、計算上は、地面からの力に耐えているという事になります。

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図を説明しますと、例えば、お風呂場なんかで水面に下敷きを浮かべて、端っこを指で押すと、指で押した所は水中に沈みますが、中央部分は、沈みにくくて下敷きがたわみます。

これは、指で押した分だけ、水が沈ませるものかと躍起になって抵抗するからなんですが、これを「反力」と言います。

住宅の基礎も同じで、指が柱だとすると、柱から荷重が落ちてくると、柱と柱の間は、逆に地面からの力に押されているんです。(正確に伝えると基礎全体が下から押されているんですけど、柱と柱の中央部分は、上からの荷重が掛かっていないので、反り返りやすいって事ですね)

次に下敷きの大きさ、または、押す指の間隔を下図でイメージして下さい。

Photo_5

下敷きが小さかったり、押す指の間隔が狭ければいとも簡単に沈ませる事ができます。

それに対して、下敷きが大きかったり、指の間隔が広ければ、水の力をもろに受けて、なかなか沈ませる事ができません。

これを、住宅の話に戻すと、柱と柱の間隔が狭ければ、地面からの力は少なくなるのに対して、柱と柱の間隔が広いとその中間部は地面からの力に必死に耐えている事になるのです。

つまり、柱と柱の間隔が広い所の下にある基礎は、とんでもない力を支えている事になりますので、こんな所に人通口を設けたら、基礎が小さくなってしまって、ポッキリと折れてしまいます。

折れてしまわない様に、丈夫になる様に鉄筋を増やしてあげるんですが、そもそも柱の間隔の狭い所に人通口を配置してあげれば、増やす鉄筋の量も少なくて済みます

この様な話は、お打ち合わせ中には出てこないかもしれませんが、見えない所の設計も行うのが設計士の役割です

そして、見えない所の設計がうまくいくと、設計士は見えない所でガッツポーズをしています。

っしゃぁ、って。


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