加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

【読書】「霊能者ブーム」に惑わされるな。「霊の発見」

2007年01月14日 11時01分02秒 | 本のこと。
とにかく、本の仕事をしている。ひたすらしている。けど、合間にゲームをしたり、某掲示板やSNSを覗いたり、寝転がって今度出す本とは関係の無い本を読む。
一週間前のヒトラーの本もそうで、今回の「霊の発見」もそう。

霊の発見

平凡社

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「背後霊の背後に何があるのか? 衝撃の霊的ドキュメント」
「霊ブームの歴史的背景を徹底解剖し、日本的霊性の謎に迫る神と仏の対決、気鋭の神道家と霊界を旅する驚愕の書!」

いったいどんな本やねん(笑)。
オビの文句とはかなり違って、ごく普通の対談集である。
対談者のひとりは五木寛之氏。説明の必要はないだろう。
もうひとりは神道家、鎌田東二氏。この方は神主の資格も持ち、神道の研究家としてユニークな活動を続けているひと。この本を買ってから気がついたのだけど、一冊だけ鎌田氏の本を読んだことがある。『神界のフィールドワーク』(ちくま学芸文庫)である。

高名な小説家であり、「蓮如」の本も著した五木氏が仏側で、神道家の鎌田氏が神側で神仏論戦をくりひろげる本ではない。どちらかといえば、老紳士ふたりが鍋でもつつきながら語り合っているような感じの対談集である。

オビと印象がはだいぶ違うけど「日本的霊性の謎に迫る」という点ではとても参考になった。
そんなに外国の事情に詳しいわけではないけれど、日本人ほど「霊的」な文化を作りだし、近代化されてもなお「霊的」としか呼びようの無い文化の中で生きている国民はないのではないか、と思った。
大人の女性が読む「女性自身」にはある霊能者が主人公の漫画(それもびっくりするほど細身で美形になってる)が連載されているし(大人の男性が読む「週刊現代」にも連載がある)、テレビをつければ、(物理的に)でかい顔をした女性「占い師」(注)がひどくおかしな日本語で説教を垂れている。

(注)わたしの知り合いに占い師さんがいるが、知的で品のある文章を書かれる方である。なので、あの細木某を「占い師」と呼ぶのには抵抗がある。

新聞折り込みや雑誌の広告にも幸運を呼ぶという掛け軸だのペンダントだのの広告が載っている。

この本は、そんなわれわれ日本人が漠然と抱いている「霊」ということについて、ある程度つっこんだ知識をわかりやすく与えてくれる。
ホンモノとニセモノの見分け方も。

すぐに読める本だ。その「壺」を買う前に、その「パンフレット」を読む前に、その「新聞」を購読する前に、その「勉強会」に行く前に、この本を読んでおいても損はないと思う。