あけましておめでとうございますなんてレベルじゃねーぞ、と。
もう2007年も残すところ350何日、みなさまいかがおすごしでしょうか。
年末年始いろいろあったけど、ようやく落ち着いたので本屋にいろいろ本を買いに行った。
その中の一冊。
筆者(というか語り手)ローフス・ミッシュは、1945年5月2日、つまりベルリン陥落の最後の最後、それこそソ連兵が総統官邸になだれ込むまで、ドイツを瓦礫の山にした独裁者と、わずか数日の後継者であるゲッベルスの警備兵としてつかえた人物である。
ミッシュは幼い頃に両親を亡くし、祖父母に育てられた。ペンキ職人としての修行を積むが、20歳のときに徴兵センターで親衛隊(SS)への入隊を希望した。
SSが中心となって行ったポーランド侵攻の際、背後からポーランド兵に撃たれ負傷。1940年、推薦されて総統護衛部隊に配属になり、ベルリン崩壊までの5年間、アドルフ・ヒトラーの側で護衛の任務についた。
まさにヒトラー最期の瞬間、総督地下壕で運命を共にした人物である。
昨年観た「ヒトラー 最期の12日間」という映画にひどく感激したわたしは、楽しみにしてこの本を購入した。
一読して思ったのは、親衛隊員で、しかも総統護衛部隊であったミッシュは、ナチス・ドイツ(とその所業)について、案外なにも知らないということだった。
実際、ミッシュは45年5月2日にソ連に拘束され、厳しい尋問を受けるものの、後のニュルンベルグ裁判等では証人とならなかった。
ヒトラーと距離的には近かったが、政策的な面では遠かったのだろう。
面白い、といっては不謹慎かも知れないが、彼は多くのドイツ人と同じく600万人が殺されたというユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)を戦後の報道で知ったのである。
この本はくだんの「最期の12日間」の後に出版されているので、ミッシュが映画を観てどう思ったかが語られているが、「たあいのない作り話」だと思ったそうである。
実際の総統地下壕はあの映画のように広々と清潔ではないし、毎晩あのように酒盛りもされていなかった。地下水対策工事に苦労したとあるように、非常にじめじめして狭いところだったらしい。
それでも、あの映画でもっとも恐ろしいシーンは実話だったらしい。
それは映画の終盤、ゲッベルスの妻が、我が子を次々と殺すシーン。6歳から12歳までの子どもたちを睡眠薬で眠らせて、青酸カリのカプセルを噛み下させていくシーンである。
彼女は泣きながら(映画では能面のように押し黙っていた)、この本の著者の前を横切り、落ち着いた様子で小部屋の椅子に座り、テーブルの上にトランプのカードを並べ始める。
そこに夫であり、今では崩壊した第三帝国総統の後継者となったゲッベルスが入ってくる。
彼は妻に「何をしているのか?」と尋ねる。
すると妻は顔をあげずに「ペイシェンス(トランプ占いの一種)」と答えるのだ。
ヒトラーに関する本は、これで何冊目だろう?
いくら読んでも、この怪物の全体像を捉えることができない。
しかし、この本はヒトラーという多面結晶体のある一面に関する貴重な記録として、じつに参考になった。
映画の方も、多分にフィクションを含むとはいえ、非常に優れた映画である。
長いし、精神的に参る描写(ゲッベルス夫妻の子殺しはほんの一端)も多いが、ドイツ映画として真正面から第三帝国の崩壊を描いたものとして、非常に素晴らしい出来だと思う。興味のある方は是非。
正月早々、ブログになに書いてるんだかわかりませんが、近況ということで。
今年はできれば「福音の少年」シリーズについて、それこそ「良き知らせ」をみなさんにお届けできれば、と思っています。
今年もよろしくです。
もう2007年も残すところ350何日、みなさまいかがおすごしでしょうか。
年末年始いろいろあったけど、ようやく落ち着いたので本屋にいろいろ本を買いに行った。
その中の一冊。
ヒトラーの死を見とどけた男―地下壕最後の生き残りの証言草思社このアイテムの詳細を見る |
筆者(というか語り手)ローフス・ミッシュは、1945年5月2日、つまりベルリン陥落の最後の最後、それこそソ連兵が総統官邸になだれ込むまで、ドイツを瓦礫の山にした独裁者と、わずか数日の後継者であるゲッベルスの警備兵としてつかえた人物である。
ミッシュは幼い頃に両親を亡くし、祖父母に育てられた。ペンキ職人としての修行を積むが、20歳のときに徴兵センターで親衛隊(SS)への入隊を希望した。
SSが中心となって行ったポーランド侵攻の際、背後からポーランド兵に撃たれ負傷。1940年、推薦されて総統護衛部隊に配属になり、ベルリン崩壊までの5年間、アドルフ・ヒトラーの側で護衛の任務についた。
まさにヒトラー最期の瞬間、総督地下壕で運命を共にした人物である。
昨年観た「ヒトラー 最期の12日間」という映画にひどく感激したわたしは、楽しみにしてこの本を購入した。
ヒトラー~最期の12日間~スタンダード・エディション日活このアイテムの詳細を見る |
一読して思ったのは、親衛隊員で、しかも総統護衛部隊であったミッシュは、ナチス・ドイツ(とその所業)について、案外なにも知らないということだった。
実際、ミッシュは45年5月2日にソ連に拘束され、厳しい尋問を受けるものの、後のニュルンベルグ裁判等では証人とならなかった。
ヒトラーと距離的には近かったが、政策的な面では遠かったのだろう。
面白い、といっては不謹慎かも知れないが、彼は多くのドイツ人と同じく600万人が殺されたというユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)を戦後の報道で知ったのである。
この本はくだんの「最期の12日間」の後に出版されているので、ミッシュが映画を観てどう思ったかが語られているが、「たあいのない作り話」だと思ったそうである。
実際の総統地下壕はあの映画のように広々と清潔ではないし、毎晩あのように酒盛りもされていなかった。地下水対策工事に苦労したとあるように、非常にじめじめして狭いところだったらしい。
それでも、あの映画でもっとも恐ろしいシーンは実話だったらしい。
それは映画の終盤、ゲッベルスの妻が、我が子を次々と殺すシーン。6歳から12歳までの子どもたちを睡眠薬で眠らせて、青酸カリのカプセルを噛み下させていくシーンである。
彼女は泣きながら(映画では能面のように押し黙っていた)、この本の著者の前を横切り、落ち着いた様子で小部屋の椅子に座り、テーブルの上にトランプのカードを並べ始める。
そこに夫であり、今では崩壊した第三帝国総統の後継者となったゲッベルスが入ってくる。
彼は妻に「何をしているのか?」と尋ねる。
すると妻は顔をあげずに「ペイシェンス(トランプ占いの一種)」と答えるのだ。
ヒトラーに関する本は、これで何冊目だろう?
いくら読んでも、この怪物の全体像を捉えることができない。
しかし、この本はヒトラーという多面結晶体のある一面に関する貴重な記録として、じつに参考になった。
映画の方も、多分にフィクションを含むとはいえ、非常に優れた映画である。
長いし、精神的に参る描写(ゲッベルス夫妻の子殺しはほんの一端)も多いが、ドイツ映画として真正面から第三帝国の崩壊を描いたものとして、非常に素晴らしい出来だと思う。興味のある方は是非。
正月早々、ブログになに書いてるんだかわかりませんが、近況ということで。
今年はできれば「福音の少年」シリーズについて、それこそ「良き知らせ」をみなさんにお届けできれば、と思っています。
今年もよろしくです。