うたかたの夢暮らし 睡夢山荘にて(Dream life of Siesta hut)

夢から覚めた泡沫のごときだよ、人生は・・
せめて、ごまめの歯ぎしりを聞いとくれ

青春の味

2019-01-24 20:45:01 | グルメ

あの日、街は騒然としていた。

明日は決戦の日だと

僕らは、その熱気に浮かされていた。

成田 三里塚 強制代執行前夜。

極左党派の前衛メンバーだった彼と3時間語り合った後だった。

腹を空かせた若者に腹一杯食べさせたいと先代店主が始めた、ヒマラヤを型取った山盛りのカレーは、僕を一度で虜にした!

 スパイスの辛味と香りの底に苦味を感じる独特のルーと甘いチャツネ。

コクと異国の香りのギーが後味を残す。

辛口ムルギーカレーに汗だくの僕らに、「大丈夫ですか?」と厨房からわざわざ顔を出して気遣う老店主が居た。

あの時はまさしく人生の大転機だったのかも知れない、激しく緊張の3時間だった。

結局のところ、三里塚への彼の誘いを拒絶したのだ。

もう彼とは二度と会えない気がした僕は、そのまま別れ難く此処に誘ったのだ。

 激しく、今は戦うべき時だと説いた彼とは、この夜のムルギーカレーが最後の時だった。

完黙を貫いたと聞いた。 その後彼の消息は途絶えた。

 

老境にあり、再び訪れたムルギーカレーには、あの親父さんの笑顔も今はなく、心なしか柔らかな味に変わっていたが、あのヒリヒリした時代を呼び起こす味として確かに在った。

 


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