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厚生労働省の「ブラック企業」対策に欠けているもの

2013-08-31 | 労働ニュース
厚生労働省の「ブラック企業」対策に欠けているもの
吉田 典史 | ジャーナリスト
2013年8月31日 18時47分

朝日新聞(8月28日)によると、厚生労働省が「ブラック企業」の被害を防ごうと、夜間や休日でも相談を受けつける常設電話相談窓口をつくる方針を決めたという。2014年度予算の概算要求に関連経費を含めて、18億円を盛り込んだらしい。

記事によると、「長時間のノルマや残業に追われ、平日の日中は電話できない若者の声を拾うねらい」があるようだ。そして、「相談内容は労働基準監督署などとも共有し、賃金不払いや違法残業などが疑われるケースでは、企業の立ち入り調査もする」とある。

これらの試みは、賃金不払いや違法残業など、明らかに労基法に抵触しているケースならば一定の効果があるのかもしれない。

しかし、このようなことははるか前から、全国各地の労働基準監督署や労働局の雇用均等室、さらに自治体の労政事務所(呼び方は、自治体により異なる)が行ってきたはずである。電話相談も受けている。夜9時ごろまで対応するところもある。

これらの公的な機関ではなく、今、あえて常設電話相談窓口をつくる理由は何なのか…。そのことを考えたい。

私がリストラなどで苦しむ会社員を取材していると、その多くは労基法違反で苦しむことは少ない。むしろ、退職強要(中には、刑事事件に相当する、退職脅迫もある)やいじめ、パワハラのほうが多い。

社員数が30人以下の零細企業になると、賃金不払いなどの労基法違反と思われるケースを見聞きするが、中堅・大企業では依然として少ない。2008年秋のリーマン・ショック以降は増えた、と指摘する弁護士などがいるが、やはり、少ないと思う。むしろ、中堅・大企業では退職勧奨か、それとも強要か、微妙なところを攻めてくる可能性が高い。

こういう、法律に照らし、あいまいなところで勝負してくる場合は、労働基準監督署や労働局の雇用均等室、さらに自治体の労政事務所は会社側に強くはなかなか出ることができない。

会社の役員や人事部などは、弁護士などからそのようなことを聞かされ、微妙なところを攻めてくる。要は、会社は労働側の弱い部分に狙いをつけて、しかけてくる。誰の目にも明らかな、労基法違反をしてくれれば争うほうはありがたい。一定水準以上の会社は、そこまで甘くはない。

冒頭で紹介した、新設の常設電話相談窓口にもおそらく、賃金不払いなどよりも退職勧奨か、強要か、はっきりとは言い難いところを攻められ、被害を受けた人が連絡をしてくるだろう。

そのときに、この電話を受ける職員はどのように対応するべきなのか。結論からいえは、東京都庁の労政事務所職員(現在は、労働相談情報センター)のベテラン職員(40代半ば以上の相談員)のような対応をするべきだろう。労政事務所の会社への対応は、「職員次第」と10数年前から聞く。職員により、レベルの違いがあるという意味だろう。

しかし、そのとらえ方は表層的である。私がここ20年ほどの間、リストラの取材をしてきた限りでいえば、ほかの公的な機関(労働基準監督署や労働局の雇用均等室など)に比べると、職員らのあっせん・調停をしようとする意思は強く、そのノウハウや引き出しも豊富である。

労働基準監督署や労働局の雇用均等室とはその性格や役割が異なるから、一概に比較はできないが、やはり、会社との争いの折り合い(着点)を見つけ、そこまで話をもっていく力は、労政事務所職員のほうが数ランクは高く感じる。

首都圏では、神奈川県の労政事務所の職員もレベルは高い。千葉県や埼玉県のレベルは東京都などに比べると、はるかに低い。東京都庁の労政事務所職員が、これらの自治体の労政事務所に講師としてノウハウを教えにいっているほどだ。

労働組合ユニオンは2000年以降、その数が急速に増えたが、会社への対応に慣れていないところもある。老舗の、東京管理職ユニオンや東京ユニオンと比べると、頼りないユニオンもなきにしもあらず、といえる。

新設の常設電話相談窓口が見習うべきは、労働相談情報センターのベテランの相談員である。できれば、東京都庁の労政事務所職員を60歳で定年となり、労働組合の全労連などで労働相談員をしているような人たちの力を得たい。連合でも相談員をしている人がいる。しかし、連合の経営側への考え方が時代錯誤であり、元労政事務所職員の力が十分には生きていない。

あるいは、新設の常設電話相談窓口は、東京都庁の労政事務所職員を「雇用延長」として続けている人たちの支援をもらいたい。都内の5~6つほどの支所に、非常勤という形でいる。

私は、この20数年間で、東京都庁の労政事務所をかぞえきれないほどに取材してきた。40代後半以上の職員らは、労使紛争においてもっとも信頼できる人たちである。

常設電話相談窓口で対応する職員の対応も、今後、注意深く、観察する必要がある。一定のレベルに達していないならば、「リストラ」もするべきではないだろうか。労働相談でのひと言が、その人の人生を狂わせてしまうこともありうるのだから…。
吉田 典史
ジャーナリスト

1967年、岐阜県大垣市生まれ。人事・労務の観点から企業を取材し、記事や本を書く。一方で事件・事故などの取材を続ける。著者に『封印された震災死その「真相」』(世界文化社)、『震災死 生き証人たちの真実の告白』『あの日、「負け組社員」になった…』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)、『仕事なんかするより上司に気を使えよ』(労働調査会)など。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoshidanorifumi/20130831-00027730/

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