那田尚史の部屋ver.3(集団ストーカーを解決します)

「ロータス人づくり企画」コーディネーター。元早大講師、微笑禅の会代表、探偵業のいと可笑しきオールジャンルのコラム。
 

宇和海の太刀魚釣り(電気ウキ篇)

2011年10月17日 | 趣味

太刀魚釣りというのは、巧い人と下手な人との釣果の差が見事に現れる。
例えば、巧い人が30匹釣っている一方で、下手な人は1匹も釣れないようなことはザラにある。
しかも、下手な人の餌にでも太刀魚は食いつくのだ。食いつくが釣り上げられない。
その面白さが、太刀魚釣りの醍醐味である。

もっとも、沖に船で出て、ルアーで釣る場合は、巧いも下手も関係ない。バカにでも釣れる。
太刀魚釣りの醍醐味は「堤防釣り」にある。中でも面白いのはウキ釣りだ。

{ウキ釣り}
餌は、キビナゴ。目から針を通して背骨の下に針を引っ掛ける。
(一匹目が釣れたら、太刀魚のハラミをカッターで切って共食いさせることもある。餌持ちはこっちのほうがずっといい。一つの切り身で5匹ぐらいは釣れる)
 ウキ下は大体2メートル。太刀魚は鬼のような歯をしているので、テグスでなはくワイヤーを使う。
そこに太刀魚がいれば、すぐにウキが沈む。さて、問題はその後だ。
 素人は「30秒数えて釣り上げる」などといって、失敗ばかりしているが、これにはコツがある。
太刀魚は見かけの割りに非常に臆病な餌の食い方をする。餌を咥えると、一気に飲み込まず、何十秒ももてあそぶのだ。素人はこのときに釣り上げるから逃げられる。
 コツは、ウキが下がったら、糸を軽く緊張させてやり、手首を使って餌を引き込む。つまり餌に逃げさせるアクションをつけるのである。素人にはそれが出来ない。太刀魚の神経質さを知っているだけに、糸を張る、などもってのほかだと思っているのだ。
 しかし結果は逆である。手首を使って餌が逃げるようなアクションをつけてやると、太刀魚は本気で餌を飲み込もうとする。その瞬間の動きを、糸を張っていれば分かるので、その一瞬糸を緩めておいて一気に釣り上げるのだ。

一瞬糸を緩めるのは、餌を飲み込ませるためである。この一連のテクニック=糸を張る、餌にアクションを与える、飲み込みの当たりを察知する、糸を緩める、直ちに釣り上げる、が30匹とゼロ匹の差になって現れる。

釣り上げた後、間違っても太刀魚を手で握って針を外そうとしてはいけない。太刀魚の歯は錐のように鋭く、誤って噛みつかれると、指に穴が開くか、指が落ちる。釣り上げたら、足元に太刀魚をもってきて、足で頭を踏みつけてシメル。そうして完全に殺しておいてから針を抜くのだ。

太刀魚のウキ釣りは最高に面白い。私は初心者の頃は「投げ竿」で太刀魚釣りをしていた。これは後で考えると、大変に誤った釣り方である。神経質なこの魚に微妙なアクションを与えるには、竿先の柔らかい、先調子の竿があっている。竿先が硬い投げ竿などもってのほかなのだ。が、私は硬い竿を使う代わりに、手首を柔らかく使うテクニックをマスターした。その上で竿先の柔らかな竿に変えたら、鬼に金棒のテクニシャンになっていた。ぼろい道具で苦労したあと、いい道具を使うと技の切れが格段に良くなるという事実をこの腕で確かめた。竿は、グレ(クロウオともメジナともいう)釣り用の竿でいい。
 なお、釣りはなんでもそうだが、特に神経質な太刀魚を釣る場合は、糸と竿とを90度に保つことが肝心である。糸と竿の角度が90度以上に広いと、糸を張って行うこの釣り方では、太刀魚が餌を本当に飲み込む前に、糸の緊張が強すぎて「弾いてしまう」のだ。太刀魚は利口なので、餌に少しでも不自然な動きがあると、すぐに餌を放して逃げてしまう。糸を張りながらも当たりが硬くならないように、気持ちを集中しないと釣れない。
 そうそう、「弾く」といえば、ウキにも注意。浮力の強いウキを使うと、それだけで太刀魚は警戒して餌を口から放してしまう。電気ウキを使うのだが、そこにハッポウスチロールの浮力(チューブ状のもの)をつけて、かろうじて海面に浮き上がっている程度に調節すること。とにかく神経質な魚なのである。

{ナマ餌を使ったルアー釣り(引き釣り)}

適当な言葉がないので上のような表記にしたが、ようするにキビナゴをつけておいて20~30メートル先に投げ入れ、リールを巻いて釣る方法である。
 この方法だと、ウキ釣りの場合と全く違い、太刀魚は餌が生きていると思って一気に飲み込もうとする。だから手ごたえがあった瞬間合わせなくてはならない。
 太刀魚は利口な魚である。ウキ釣りの場合は、それが「餌」だと理解して、針に引っかからないように臆病に餌を弄ぶのだが、この引き釣りの方法だと、キビナゴが本当に泳いでいると誤解して一気に飲み込むのである。
 この方法は、慣れてくるとウキ釣りの倍の釣果が見込める。
竿は、ウキ釣りの時に使う竿の半分ぐらいの長さの「船竿」が一番適している。
 なお、この釣り方で本当にルアーを使う場合もあるが、釣果は10分の一ぐらいに落ちる。ナマ餌を使うのが一番である。

私はナギの日にはこの「引き釣り」を、波の荒いときには「ウキ釣り」を、と分けて釣っていた。波が荒いと餌がよく動き、太刀魚が食いつく確率が高くなるからである。

{料理}

太刀魚は白身で癖がないから、刺身、酢漬け、塩焼き、煮付け、と何にでも合う。また内臓の部分がほとんどなく、ウロコもないので料理がしやすい。
私は東京で飲み歩いていて、太刀魚を扱っている飲み屋に当たったことがない。また魚屋にも置いていない。関東では食べないようだが、実に美味しい魚である。
 私がこの釣りを得意になった初めの頃は、女房は「オカズが出来た」と喜んでいたが、毎回クーラーに50匹も釣って戻ってくると、料理に飽きて、「もう釣ってこなくていい」文句を言うようになった。それで地元の漁師に教えてもらい、「太刀魚のミリン干し」を試してみたら、これが絶品だった。
 その方法は、太刀魚を三枚におろして、酒とミリンと醤油に漬け、カゴに入れて天日干しにするのである。
すると硬い干し魚が出来る。それをヤカンを保温するプレートに載せて軽くあぶり、酒の肴にするのだ。
 これは美味い。時々「アジのミリン干し」などが売っているが、市販のものは甘すぎる。自家製のものはベトツキモなく、タラ以上に香ばしい。

太刀魚の自家製ミリン干しを食いちぎりながら飲んだ故郷愛媛の銘酒「梅錦」の味は最高だったよ。

太刀魚釣りは私の田舎の老人たちの間で最も人気のある釣りである。私も最初はお隣さんの老人に手ほどきを受けた。それで夢中になり、3年たったら私が師匠となってその老人に手ほどきをするようになった。太刀魚に関しては私は故郷で一番の名人になっていました。
 最高で1メートル半ぐらいの大物を釣ったと思うが、それぐらいの大きさになると、背中が金色に染まっていて貫禄があり、食べても抜群に美味しい。
 堤防での太刀魚釣りが出来る場所は関東にはないらしい。愛媛県西南部の宇和海に独特の贅沢な釣りだと思う。

尚、この釣りはゲット時の「引き」が物凄く強烈なので、スポーツフィッシングにも向いているし、中高生の間でも一番人気がある。でも、太刀魚釣りの上手な中高生に出会ったことがない。それだけ、釣りとしては難度の高い、上級者のための釣りである。