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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(114) 大震災、頑張ろうニッポン

2011年04月02日 | 浜矩子語録

~・~ 震災から17日目の朝です。

尚も毎日、悲しいニュースや不安なニュースが続きます。

予想を超える津波と経験したことのない原子力発電所の事故。

当たり前のように感じていたことが、これで良かったのか?と問いかけます。

壊れたものは何なのか、変わらなければいけないものは何なのか。

今、私たちが進むべき道は何なのか。ニッポンの力が試されているようです。

原子力行政に詳しい増田さんと、目を逸らさず今起きている事を徹底的に理解しようと呼びかける浜さんに駆けつけて頂きました。

頑張ろう、ニッポン! ~・~

3月27日のTBS・時事放談は、アナウンサー・竹内香苗の泣かせる前置きで放映された。

妖艶なエコノミスト・浜矩子と前岩手県知事・増田寛也氏が招かれ、司会は御厨貴。

 

以下、Qは御厨、Aは浜矩子の語録である。

●東京都知事選挙

Q~・~ 東京都知事選、これまでとは様変わりですが?

A~・~ 今のような時だからこそ、きちんとした討論をやって、そういう姿を見せてもらう必要があると思います。

どさくさに紛れて駆け込みという様になるのはまずいと思います。

しっかりして、変化に向けての場面であって欲しいですね。

 

●計画停電とナイター

Q~・~ セリーグ・巨人軍の対応は?

A~・~ これはもう、驚くべき無神経さ、としか言いようがないと思います。

「励ます」とか「勇気づける」「勇気を与える」という言い方自体が非常におこがましい、傲慢な言い方だと思います。

むしろ被災地の皆さまの姿を見て我々の方が勇気をもらっているのが実態です。

そこを「勇気を与えよう」というのは何たる言い方だ!と思います。もちろん、善意で言っていることは分かりますが、この場合は許し難い。

(御厨さんが仰ったような)旧来のやり方で凝り固まっている人々の物の言い方だなと思います。腹が立ちます。

 

Q~・~ (セリーグや巨人軍に対して)一般からの抗議も多かったのでは?

A~・~ そうだと思います。それがこの人たちの認識不足を糾した。市民たちの力が大きい。

変な比べ方ですが、いま中東・アフリカで起こっている、市民の力で独裁者たちを追い出してゆく力が盛り上がっていますけれども、それと同じような認識の正常さが日本の市民の中にもある、この事は勇気づけられる事だと思います。

 

●頑張ろう 東北・北関東

Q~・~ 阪神淡路も大震災でしたが、それにしてもこのたびは復旧のスピードが遅い、なぜでしょう?

A~・~ 増田さんのお話を伺ってつくづく思ったのですけれども、国というものの役割をどう認識するか?という事ですけれども、「今やグローバル時代だ」ということで、地域主権ということも言われ、だんだん国の位置づけが後退して行く流れですけれども、それだけに、最後に残ってくるのは、こういう時に力を発揮する、それ以外の事は何もしなくてもいいかも知れない。しかし、こういう時に文字通りの意味でレスキュー隊として機敏に機動的に効果的に力を持って張って出て来てほしい。

そのために我々は税金を払っている、ということではないのかな、と思います。

究極的な国民国家というものが国民に対して果たす責任はこれだ!という事が示されていて、お話のようにそれが果たせていない(菅政権は)、これは非常に大きな問題ですね。

 

Q~・~ 被災地の様子、海外にどのように報道されている?

A~・~ 幅広く報道されていて、各社のメインキャスターが現地に行って取材するという映像を流していますね。

その中で、共通して出てくるのは、この悲惨な状態の中で被災者の皆様方が、如何なる勇気をもって、忍耐強く、整然と生きているか。そして取材に来てくれた人に対して「よく来てくれました」という思いを表して、無い食料を「ありがとうございます」と言ってお礼に差し出した。避難所でゴミの分別収集が行われている事などを大きく採り上げているものもありました。

非常に、感動を持ってその姿を見ているようです。

 

●福島原子力発電所と政府の対応

Q~・~ 政府は「大丈夫!」と繰り返すが危機がどんどん広がっている。発信に問題は?

A~・~ 「大丈夫だ」と言われるほど「大丈夫ではない」と思う、(菅内閣が)そこのところを分かっていないのが驚きですが、情報の発信という意味が誤解されているとも思います。

情報と認識の共有、同じことを同じ危機感を持って見ている、政策に関する責任者たちも一般市民たちも、変な言い方ですが、パニックするなら同じようにパニックすれば良いと思います。

怖いものは、同じような程度・認識で正確に怖がっているという感覚が持てれば、聞いている方も、本当に大変な事態だけれどもこの人たちに任せておけば結果的には大丈夫かも知れない、と思えるのですが、要するに言いわけ・責任回避というというものが前面に出ている感じが非常に致します。

説明責任というのは言い訳をすることではなくて、我々も責任追及をするつもりで見ているわけではないので、「この事態を共有する」という思いに立ってものを言って頂きたい。

 

Q~・~ 放射能は見えないだけに、皆不安に怯えます

A~・~ 見えないもの、怖いものは敬意を払って怖がるべきだと思います。

原子力政策の中でも「ここから先は分かっていないかも知れない」「まさかと思うけれども、こういうことがあるかも知れない」、そういう事に対する畏敬の念というか、それがない中で突っ走って来た気が致します。

そこを、立て直さないといけないところ、それをやっていないから、言い訳がましいことを言うことになってしまうのです。

 

●気がつけば原発は全国に52基

Q~・~ 福島原発は関東の電力のために、なのに東北地方の方々が被害に遭いましたが?

A~・~ 謙虚に真正面から受け止めなければならないテーマだと思います。

語弊がある言い方になりますが、沖縄の基地問題と同じような、一定のところに負担を掛けて、そのことの果実を全く別の所で恩恵として受けている。

全体としては上手く回っているからいいじゃないか、という発想を見直さなければならない。日本の経済社会の中で分配というものをどう考えて行くのか、大きな教訓というか大きなメッセージを突き付けられたわけです。

 

Q~・~ 節電で産業構造も変わる?

A~・~ 少なくとも、そういう認識で考えて行かなければならないし、何も、今まで突っ走ってきた(経済、生活)レベルをどうしても再現しなければいけないということでもないと思います。

リーマンショックというような金融の事件があり経済規模は落ち込みましたが、それをショックの前に戻すということは、ある意味、膨らみ過ぎた所に必死になって戻って行こうということですね。

今回ある意味では、無理をして膨らませ過ぎた経済規模を適正な所に戻していくという問題意識から落とし所を考えて行く場面として受け止める必要があるのではないでしょうか。

ここで心配になるのは2つの言葉で、イメージとして出てくるのですけれども「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということと「元の木阿弥」と言う事ですね。

この2つの言葉に人間は結構引っ張られますが、警戒すべきではないかと思うのです。

 

Q~・~ 今後の原子力発電の在り方は?

A~・~ 繰り返しの言葉になってしまいますけれども、このことがあったことで、国民国家という言葉が持っている意味を、そのとおりに受け止めるべきだという事が我々に突き付けられたのではないかと思います。

国民国家というのは、国民のために国家が存在すると、いう図式ですよね。

国家のために国民が存在するのではない、そこのところの認識が甘いから、国家が皆さまに対して責任持って説明をする、お願いをするという、増田さんがおっしゃったような場面というのが無いという事だと思います。

国民と国家の関係をきちんと、初めて認識してもらう必要がある場面だと思います。

 

●「戦後」の終わり「災後」の始まり

Q~・~ 復興が目指すべき国の容はどうあるべき?

A~・~ 壊れたものは直さなければいけないのは当然ですけれども、いみじくも日本経済は戦後の成長路線から軌道を変えなければいけない。そうしなければ新しい局面に行けないという所に遭遇していた、そこにこの問題が発生したわけですから、正に「元の木阿弥」になってはいけないのであって、世界最大の債権国であり、世界中に先んじて高い成熟度、人口構成も含めて体験している、そういう国民経済がどうすれば豊かさをシェア出来るか?

豊かさはあるわけですから、それを被災地とどうやって分かち合って行くか、ここから復興の設計を考えてゆく必要があります。

そのこととの関わりでは(増田さんが政府の対応を)中途半端と言われたところは、与野党協力すべきだと思います。

 

Q~・~ これだけは言っておきたい、

A~・~ 誰かに対してではなく、自分に対してですけれども、今こそ「自分さえ良ければ」に陥らないことと、今こそ「一人は皆のため、皆は一人のため」という思いを片時も忘れないぞ、というふうに思います。

 

番組は静かに、ピーター・ポール&マリーの「パフ」をエンディングテーマに流しながら閉じた。(了)


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