○畠山美由紀 with ASA-CHANG&ブルーハッツ「わたしのうた」(2007)
7月に出たジェシー・ハリスとのコラボアルバム「Summer Clouds, Summer Rain」からわずか3か月、畠山美由紀の新しいアルバムが出た。
今回は元東京スカパラダイスのドラマー、ASA-CHANGをリーダーとする16人編成のビッグバンド「ブルーハッツ」との共演である。
曲はすべて、ジャズスタンダードや昭和の歌謡曲などのカヴァー。NHK「みんなのうた」の名曲「小さな木の実」なんてのもとりあげている。
これはもう圧倒的に楽しいアルバムだった。彼女の唄に少々複雑な思いを抱いている僕も、諸手を挙げて絶賛してしまう。激しいドラムビートから始まる1曲目の「Lover come back to me」のかっこよさといったらどうだ。シャープで熱い演奏を繰り広げるブルーハッツとスリリングにわたりあう畠山嬢のヴォーカルがたまらない。
スカのリズムが楽しい「君恋し」やグルーヴィーな「小さな木の実」もいいし、マリリン・モンローが映画「紳士は金髪がお好き」でキュートに歌い踊った「Diamonds are a girl's best friend」はとてもセクシー。「浜辺の歌」については、「Summer Clouds」ヴァージョンと聴き比べるという楽しみもある。
相手に不満を持ちながらも、ひとりになるのが怖くて別れに踏み切れない心理(結局最後には別れを決意することになるんだけど)をうまく描きだした詞だと思う。
不満点のディテールはいちいちリアルなのに、リフレインでは「My fingertips are holding onto the cracks in our foundation(土台部分のひび割れを指でつかんでいる)」という堅めの比喩を持ってきているところが良い。