音楽中心日記blog

Andy@音楽観察者が綴る音楽日記

Norwegian Wood

2007年10月12日 | 歌詞・訳詞
むかし ちょっとひっかけた女の子がいた
いや 僕のほうがひっかけられたというべきかな
彼女は自分の部屋を見せてくれた 「素敵でしょ ノルウェイ材を使ってあるの」

「ゆっくりしていって どこに座ってもいいわよ」と彼女が言うので
あたりを見まわしてみたけれど 椅子なんて置いてなかった

だから僕は敷物の上に座り チャンスをうかがいながら ワインを飲んだ
午前2時までおしゃべりをしたところで 彼女が言った 「さあベッドに行く時間よ」

「わたし 朝、仕事があるの」と 彼女は言うなり笑いだした
僕は「朝は特に用はないんだ」と言って バスルームまで這ってゆき 寝た

目覚めると彼女はいなかった 鳥は飛び去っていってしまったんだ
僕は煙草に火をつけた 素敵じゃないか ノルウェイ材の部屋ってやつは

- The Beatles「Norwegian Wood(This Bird Has Flown)」(1965)
    (Translated by Andy@音楽観察者)

 「ノルウェーの森」誤訳問題については、ずいぶん前にこのテキストで書いた。
 「Norwegian Wood」が「Knowing she would」(彼女がやらせてくれることを知ってるよ)からきているフレーズなのかどうかはいまだによくわからないけれど、とりあえず自分なりに訳してみることにした。

 最後のライン(「I lit a fire」)については、前述のテキストでも書いたとおり「煙草に火をつけた」と訳してみた。
 女の子が去ってがらんとした部屋で、ひとり煙草に火をつけてぼんやりと部屋を眺めている、という情景が、この淡々とした曲の終りにふさわしいと思うので。

 でも英語版Wikipediaの曲解説を見ると、「女の子と寝ることができなかった復讐のために、彼女の部屋に火をつけた」意味だということが当たり前のように書いてある。ポールの発言が根拠らしい。うーん。

 ちなみに同記事によると、「ノルウェイ材」というのは安物の松のことで、これがインテリアに使ってあるということは、相手の女の子がワーキングクラスに属していることを示唆するらしい。へーそうなのか。けっこうイメージ変わるなあ。
  
 なお、去年出た「ザ・ビートルズ'65 BOX」のブックレットに掲載された歌詞対訳(奥田祐士氏によるもの)では、「だからぼくは火をつけた すてきじゃないか、ノルウェー産の木」となっている。これも「部屋に火をつけた」説だ。これまでの公式訳(「俺は暖炉に火をくべた。まるでノルウェーの森にいるみたいだ」)とは大きく変わってきてますね。

 原詞はここ参照。

  

  


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5 コメント

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Unknown (wms)
2007-10-12 10:07:16
タバコじゃなくて、ご禁制のアレだったかもしれないですね。で、部屋が燃える幻想を見ながら、ヘラヘラと力弱く笑っていたというダブルミーニングとか…。
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I lit a fire (Andy@音楽観察者)
2007-10-12 12:05:18
おっしゃるように「ご禁制のアレに火をつけた」という説もあるみたいです。
それからダブルミーニングっていう可能性もありますよね。メジャーシーンでは過激な表現が許されない時代だったでしょうし。

だから、ぱっと見だと「タバコに火をつけた」で、実は裏に「ご禁制のブツに火をつけた」「部屋に火をつけた」という意味をもたせたというのが正解に近いかなあとも思います。

ただ時代背景を踏まえずにいきなり表の意味が「部屋に火をつけた」というのは抵抗あるんですよね…。この曲の余韻を壊されるような気がするのです。
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ダブルミーニング (タイコウチ)
2007-10-12 22:36:32
ポールが自伝インタヴュー「Many Years From Now」で、やはり隠されたジョーク(部屋に火をつけてやった)なんだ、という趣旨のことを言っていたと思います。この頃、歌詞でふざけることに凝っていて、「Girl」のコーラスで「tits」を連呼したり、など。

北欧風の木材(家具)については、むかし林望が、「ノルウェイの森」が誤訳であることを、ちょっと嫌味な(?)エッセイで懇切丁寧に書いていましたが、そのあと村上春樹が、それでも「ノルウェイの森」で良いのだ、というような文学的な(?)反論をしていたのも読んだ記憶があります。

個人的には、やはり「煙草に火をつけた」というのが、寂寞とした余韻があっていいと思います。

個人的には、
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Many Years From Now (タイコウチ)
2007-10-12 23:06:05
「彼女は男を風呂場で眠らせる。だから最後のヴァースで、復讐としてノルウェーの材木に火をつけることを僕(ポール)が思いついた。皮肉だろ。彼女は自分から男を招き入れておいて、『お風呂場で寝てちょうだい』と言うんだよ。僕らの考えでは、男は何かしらの復讐をするべきだった。『暖を取るために火をつけた。なんて素敵な部屋だったんだろう』という解釈も成り立つかもしれないけど、実はあれは復讐として燃やしてしまったんだ。」
(Paul McCartney: Many Years From Now、日本版363ページ)
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なるほど。 (Andy@音楽観察者)
2007-10-13 05:47:34
タイコウチさん、ていねいなご教示ありがとうございます。
その自伝、僕も持っているのですが、あまりに大部すぎて拾い読みしかしていませんでした。

「Girl」のtitsも有名ですよね。あと、「Paperback Writer」でフレールジャックを引用してたりとか。
その種の「隠れたジョーク」のひとつだったというのにはうなずけます。

まだジョンと蜜月関係であったころについてのポール発言ですからそれなりに信憑性があるのでしょうが、やっぱりほんとは、この曲のメインソングライターであるジョンの解説を聴きたいところですよね…もう永遠にかなわないことですけど。
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