むらぎものロココ

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ウィリアム・バード

2005-06-19 20:54:00 | 音楽史
byrdWilliam Byrd
THE THREE MASSES

Peter Phillips
THE TALLIS SCHOLARS

ウィリアム・バード(1543-1623)もまた、宗教改革の大きな動きに翻弄された音楽家だった。1572年に王室礼拝堂の楽員となり、タリスの影響を受けながら音楽活動を展開した。エリザベス1世から音楽的才能を高く評価され、タリスとともに楽譜の出版・販売の独占許可を受けたりもした。バードは、大陸の通模倣様式を完全に自分のものとしたイギリスでは最初の音楽家であり、彼の登場によってイギリス音楽はフランドル楽派と肩を並べるほどの水準に達した。声楽曲ばかりでなく、弦楽合奏曲や鍵盤音楽なども数多く作曲し、イギリス音楽の父と讃えられた。

当時のイギリスにあって、音楽家としての頂点を極めたバードだったが、カトリックである彼は、密かにカトリックの神父とも通じ、秘密のミサにも参加していた。1580年頃からカトリックへの弾圧が厳しくなると、ロンドンを離れ、晩年はピーター卿の屋敷に隠遁する。バードのミサ曲はその頃の作品といわれ、彼の宗教的心情がこめられたものである。

バードのミサ曲はキリエやクレドにも曲をつける、イギリスの通作ミサとしては異例のもの。