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インフルエンザワクチン [Influenza vaccine]

2011-06-30 | Vaccine 各論

インフルエンザの語源:14世紀のイタリアのフィレンツェで、「寒さの影響」「星の影響」を意味する言葉としてインフルエンツァ(influenza)と呼ばれていたこと

日本におけるインフルエンザと思われる病気の流行の記載:平安時代にまで遡ることができ、「咳逆」「咳病」「シハブキ病み」などの記載ががみられる。

・インフルエンザワクチンが心血管疾患の発症のリスクを下げるとの報告あり(JAMA. 2013;310(16):1711-1720

2回接種について
CDC: 6カ月以上8歳未満を対象に初めての接種時にには4週間をあけて1シーズンに2回接種、次シーズン目からは1回接種のみ
日本:6か月以上13歳未満を対象に1シーズン毎に1-4週間の間隔をおいて2回接種、それ以外は1-2回接種

小児の容量調節
CDC: 6か月以上3歳未満には0.25ml
日本:6か月以上1才未満には0.1ml、1歳以上6歳未満には0.2ml、6歳以上13歳未満には0.3ml
2011年より 0-3歳は0.25ml, 3歳以上は0.5ml
13歳未満は2回接種

ギランバレー症候群のリスク
インフルエンザワクチン接種6週間以内の発症は日接種群と比較して、相対危険度が1.52 95%CI 1.17-1.99と高く、特に接種後2-4週間では最も高い。
一方、インフルエンザの診断後6週間以内のギランバレー症候群の発症リスクは、相対危険度が15.81 95%CI 10.28-24.32とワクチン接種と比較して高かった。

またギランバレー症候群発症の寄与リスクはワクチンの100万回接種に1.03である一方、インフルエンザの診断100万回に対して17.2とリスクが高かった。
(Lancet Infect Dis, 2013)


妊婦に不活化インフルエンザワクチンを接種することで早産や児の低出生体重が減少
Influenza vaccine in pregnancy: policy and research strategies.

36のreviewと7の研究報告を評価したメタ解析において、予防接種を受けた妊婦は死産(RR: 0.73 (0.55, 0.96))及び自然流産 (RR: 0.69 (0.53, 0.90))の発生率が低い傾向が見られた。
要約(pooling)された自然流産の推計 (RR: 0.91 (0.68, 1.22))には有意差を認めなかった。
Maternal Influenza Immunization and Birth Outcomes of Stillbirth and Spontaneous Abortion: A Systematic Review and Meta-Analysis.

 

副反応
卵アレルギー患者でのワクチン接種後のアレルギー反応は卵を使って培養されないリコンビナントワクチンでも報告があり、卵とは関連がない可能性もある。
Allergic reactions after egg-free recombinant influenza vaccine: reports to the US Vaccine Adverse Event Reporting System.

インフルエンザワクチンの効果を評価するための臨床研究手法(Clinical Practice: Three Approaches to Determining the Protective Effect of Influenza Vaccine
 


シーズン毎のワクチン株について
WHO推奨株 2012-13(北半球)
A/California/7/2009 (H1N1)pdm09類似株
A/Victoria/361/2011 (H3N2)類似株
B/Wisconsin /1/2010(山形系統)類似株

日本製造株 2012-13
A/カリフォルニア/7/2009 (H1N1)pdm09類似株
A/ビクトリア/361/2011 (H3N2)類似株
B/ウィスコンシン/1/2010類似株

WHO推奨株 2011-12(北半球)
A/California/7/2009 (H1N1)-like virus;
A/Perth/16/2009 (H3N2)-like virus;
B/Brisbane/60/2008-like virus.

日本製造株 2011-12
A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)
A/ビクトリア/210/2009(H3N2)
B/ブリスベン/60/2008

WHO推奨株 2010-11(北半球)
A/California/7/2009 (H1N1)-like virus;
A/Perth/16/2009 (H3N2)-like virus;
B/Brisbane/60/2008-like virus.

日本製造株 2010-11
A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)
A/ビクトリア/210/2009(H3N2)
B/ブリスベン/60/2008


WHO推奨株 2009-10(北半球)
A/Brisbane/59/2007 (H1N1)-類似株
A/Brisbane/10/2007 (H3N2)-類似株
B/Brisbane/60/2008-類似株

日本製造株 2009-10
A/Brisbane(ブリスベン)/59/2007(H1N1)
A/Uruguay(ウルグアイ)/716/2007(H3N2)
B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008


WHO推奨株 2008-09(北半球)
A/Brisbane/59/2007 (H1N1)-類似株
A/Brisbane/10/2007 (H3N2)-類似株
B/Florida/4/2006-類似株

日本製造株 2008-09
A/ブリスベン/59/2007(H1N1)
A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)
B/フロリダ/4/2006


WHO推奨株 2007-08(北半球)
A/Solomon Islands/3/2006 (H1N1)-類似株
A/Wisconsin/67/2005 (H3N2)-類似株
B/Malaysia/2506/2004-類似株

日本製造株 2007-08
A/ソロモン諸島/3/2006(H1N1)
A/広島/52/2005(H3N2)
B/マレーシア/2506/2004

接種適応の最優先は妊婦で、妊娠の週数に関わらず推奨(費用対効果が高い)。
6ヶ月未満の子供にはワクチンが接種できないので親がワクチン接種。
他にも5歳未満(特に2歳未満)、65歳以上、慢性疾患患者、医療従事者、海外渡航者にも推奨あり(ACIPの勧める成人基礎疾患なしへの推奨なし)。

各国の定めるワクチン接種政策やリスクグループは個々の国力、医療資源、疫学情報、費用対効果試算などによって決まる。

生ワクチンは不活化ワクチンと比べて確定症例の予防効果が高かった(82% vs 59%)が、インフルエンザ様症状の予防効果は見られなかった(33% vs 36%)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16437500

また、小学生に接種することで間接的な予防効果あり
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=21028955

ロシアで製造される生ワクチンは3歳から接種が可能
2012年にA2価+B2価の4価のワクチンが承認された。

前橋レポートのlimitation
高齢者等の小学校以外、近隣地域等の調査地域以外の間接効果を評価していない 

過去の小児の集団接種の効果
高齢者の超過死亡抑制に影響(N Engl J Med 2001; 344:889-896) (PLoS One. 2011; 6(11): e26282.)
 
学級閉鎖を抑制(Clin Infect Dis. 2011 Jul 15;53(2):130-6)

インフルエンザの流行レベルマップ  
全国約5,000のインフルエンザ定点医療機関当たりの報告数で、
10をこえれば
流行発生注意報、30をこえれば流行発生警報(再度10を下回るまで)

インフルエンザによる推計超過死亡数

 

 


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