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2017-2018 シーズンのインフルエンザワクチン抗原の推奨ウイルス組成 (北半球) ・予防接種率・ワクチンの有効性・流行のレビュー等

2018-12-01 | influenza

Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2017-2018 northern hemisphere influenza season

WHOが2017-2018年に北半球でインフルエンザワクチンの抗原に推奨する類似ウイルス組成は下記の通り
WHO推奨組成 (下線が変更点)

  • A/Michigan/45/2015 (H1N1) pdm09-like virus

  • A/Hong Kong/4801/2014 (H3N2)-like virus

  • B/Brisbane/60/2008-like virus

また、4価ワクチンを使用する際には、昨年の推奨と同様に下記の類似ウイルス組成の追加を推奨

  • B/Phuket/3073/2013-like virus 

 

国内の製剤については、国立感染症研究所インフルエンザワクチン株選定のための検討会議において下記の4株に決定された(国立感染症研究所HP)。

国内選定株(下線が変更点)

  • A /シンガポール/GP1908/2015 (IVR-180)(H1N1) pdm09 

  • A/香港/4801/2014(X-263) (H3N2)

  • B/テキサス/2/2013 (ビクトリア系統) 

  • B/プーケット/2/2013 (山形系統)

 

今シーズンについては、国内のインフルエンザワクチン株の選定が遅れ、全体の生産量に影響が出る見込み

平成29年度(2017/18シーズン)インフルエンザワクチン株の選定経緯 (IASR Vol. 38 p.225-226: 2017年11月号)
第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 (資料1)

  • 2017年1月23日に厚生労働省が国立感染症研究所に株選定を依頼
  • 2017年5月2日に国立感染症研究所から厚生労働省へ株選定結果を回答
  • 2017年6月12日に、新たに選定のあったA/埼玉/103/2014/(CEXP002)(H3N2)は昨シーズンの選定株と比較して蛋白収量が33%低下することから(選定時は26%低下の予測)、インフルエンザワクチン総生産量が昨シーズンと比較して71%程度にとどまるとの予測から、厚生労働省が国立感染症研究所に、昨シーズンの選定株であるA/香港/4801/2014(X-263) (H3N2)を使用することについて答申
  • 国立感染症研究所が厚生労働省の提案を了承し、厚生労働省健康局長が株選定結果を通達
今シーズンのインフルエンザワクチン生産量は2528万本にとどまり、昨シーズンに使用された2642万本を下回る見込み

 

インフルエンザワクチン製剤が不足することによる影響を踏まえて、8月25日に予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産流通部会にて、13歳以上の予防接種回数を、医師が特に必要と認める場合を除き、1回注射であることを周知徹底する等の対策を検討

 

 

厚生労働省によるワクチンの円滑な流通に向けた取り組み

3課からの課長通知、「季節性インフルエンザワクチンの供給について」を9月15日に発出し、都道府県の関係者に下記事項について周知、協力要請を依頼。

  1. 高齢者に対する定期の予防接種の機会の確保
  2. 13歳以上に対する予防接種は、医師が特に必要と認める場合を除き、原則1回接種
  3. 1バイアル2人用のワクチンを使用する際には、できるだけ効率的に使用(使用から24時間以内に2人目の接種)
  4. 各都道府県における、市区町村、医師会、卸売販売業者等の関係機関との連携体制の構築
  5. 卸売業者と医療機関との円滑な情報共有
  6. 前年の納入実績に基づく供給
  7. 分割納入の実施
  8. 返品を前提としたワクチンの注文、在庫管理の抑制
  9. 卸売業者による地域間の供給調整
  10. ワクチン製剤の供給不足が生じた場合の報告
  11. 今後、新たな安定供給対策の実施依頼に関する可能性

 

今シーズンはインフルエンザワクチンの出荷が遅れ、10月中の出荷は全体の6割程度に留まる見込み

 

2017年9月時点でのインフルエンザ流行状況 (Influenza update - 4 Sep 2017, WHO)

南半球ではインフルエンザ患者はA(H3N2)の割合が高い
オセアニアでは流行が持続、オーストラリアでは9月8日時点で73名の死亡報告数との報道も(SBS News

 

2017/18シーズン、日本のインフルエンザのレビュー 今冬のインフルエンザについて (2017/18 シーズン)> 

ピークの時期は 1 月下旬から 2 月上旬で、過去 3 シーズンとほぼ同時期だが、ピークの高さは 感染症法施行開始の 1999 年 4 月以降、最高だった。累積推計受診者数に於いても、 近年の累積推計受診者数を大きく上回った

  • インフルエンザ定点サーベイランスにおいて、流行開始時期は 11 月下旬で昨シーズン同様、例年より早い立ち上がりだった。

  • ピークの時期は 1 月下旬から 2 月上旬(2018 年第 3~5 週)で、過去 3 シーズンとほぼ同時期だったが、ピークの高さは感染症法施行開始の 1999 年 4 月以降、最高だった。

  • 累積推計受診者数においても、近年の累積推計受診者数を大きく上回った。

  • インフルエンザ病原体サーベイランスにおいて、2017/18 シーズン(2017 年 5 月28 日現在報告)は、B 型(山形系統が主)、AH3 亜型、AH1pdm09 亜型の順で、複数のインフルエンザウイルスが時期により割合はやや異なるものの、同時に流行していた。この混合流行が今季の患者数の増加に影響を及ぼしていた可能性がある。

  • インフルエンザ入院サーベイランスに報告された症例数を 2018 年第 17 週時点で比較すると、前シーズンと比較して、今シーズンはすべての年齢群で報告が増加し、60 歳以上の年齢群で約 2 倍の報告があった。

  • インフルエンザおよび肺炎による死亡の迅速把握は全国 21 大都市を対象に行われており、今シーズンは、21 大都市合計では、2018 年第 5,9 週を除いて、例年よりやや高いレベルの死亡数が観察されたが、超過死亡は観察されなかった。

  • インフルエンザ脳症サーベイランスによると、2017/18 シーズンのインフルエンザ脳症報告数は 168 例(暫定値)で、2015/16 シーズンより少なく、2016/17 シーズンよりは多く報告された。インフルエンザ脳症症例から検出/分離されたインフルエンザウイルスは A 型が最も多く 63%を占め、B 型の割合は 33%だった。10歳未満が全体の 58%を占め、60 歳以上は全体の 13%だった。

  • 今シーズンは、米国において過去 6 年間で最も大きな流行であった等、世界的にも流行規模が大きかったことが報告されている。これまでに国内外で季節性インフルエンザワクチンの供給がインフルエンザ流行の規模に影響を及ぼしたという報告はないことから、インフルエンザワクチン供給が前シーズンに比較して遅れたことが今シーズンの流行拡大の要因となった可能性は否定的と考えられる。

 

2016/17シーズンのインフルエンザ予防接種状況および2017/18シーズン前のインフルエンザ抗体保有状況―2017年度感染症流行予測調査より

6,537名についてみると、1回以上の接種歴を有していたのは全体で52%(1回接種者:35%、2回接種者:12%、回数不明接種者:5%)であり、2016年度調査(2015/16シーズン接種歴調査)の結果よりやや高かった(n=7,500, 1回以上48%:1回31%, 2回12%, 回数不明5%)。

 

6歳未満児におけるインフルエンザワクチンの有効性:2013/14~2016/17シーズンのまとめ

2回接種の有効率を各シーズンの主流行株別にみると、2013/14シーズンはA(H1N1)pdm型に対して56%、2014/15シーズンはA(H3N2)型に対して50%、2015/16シーズンはA(H1N1)pdm型に対して65%、2016/17シーズンはA(H3N2)型に対して37%であり、いずれも統計学的に有意であった。

 


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