ad

建築を旅する

谷口吉生のミュージアム2

2005-06-25 00:53:36 | Weblog
今日は、現在、東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「谷口吉生のミュージアム」に再度行く。
二度目は、模型をしっかり見ようと思っていた。
モダンな谷口建築は、すっかりMoMAであった。
今週末で会期終了。

で、その後、MoMAの建築部門のチーフキュレーターである、テレンスライリー氏の講演会に出席。
テレンス・ライリー氏は、ID magazineで『2005年デザインにもっとも影響を与える40人』(ID Forty)で、NO1に選ばれた方でもある。
http://www.idonline.com/features/feature.asp?id=1389

10年ほど前、NYのMoMAに訪れた時に、たまたま建築展を企画展でやっており、妹島さんの模型などを見た。
当時は、MoMAのような美術館で建築展をやるイメージが個人的に無かったので、新鮮で、おもしろいキュレーションをするなと思っていた。
テレンスライリー氏は、建築部門の3代目らしいから、当時は別の方だったのかもしれない。
10年ほど前だが、記憶では、女性であったような気がする。

いずれにしても、MoMA自体はずいぶん前から、というよりも、開館当時より、建築、デザインと言った、当時芸術とみなされていなかった分野にいち早くスポットを当てた功績がある。
実際、初代館長として招かれたアルフレッド・バー・Jrは、「機械美術」展(1934)や「写真百年」展(1937)などの画期的な展示会を行い、成功を収めている。
建築・デザイン部門が設置されたのは開館間もない1932年のことで、美術館史上でも初の試みであったそうである。

ともあれ、テレンスライリー氏の講演は、氏が自身が考える建築の時代的な役割や、建築の社会的な立場、メディアとの関係などについて、興味深い内容であった。
ヴィクトル・ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』から話が開始される。
建築は、いずれ本(メディア)に殺されるというユゴーの話から、当時の社会で考えうるメディアと建築の相関関係をグラフ化して紹介。
時代を経るに従い、建築の発信する情報や、その役割は縮小していく。
しかし、実際には、補完関係にあり、他のメディアによる刺激や、生活スタイルの変化に伴い、新たな建築の可能性や求められる役割が提起されていく。

そして、建築の形態は、もはや無限で、非常に複雑な形態も実現可能であり、現在の高度に情報化された社会では、形態を追う事は重要ではなく、それよりも、体験を重視した空間を作る事が重要だといった話であった。
表面的な表現や形態ではなく、より本質的な存在としての建築を考えて行く事がこれからの建築であるということである。

最後に谷口氏が若干話をされた。
自身の建築に触れ、MoMAなど、美術館建築を考えるにあたり、外部は比較的重工な機械的表現を持っており、内部に関しては、展示作品を引き立てる為に、存在を消し、軽く消え入るような、デジタル的な空間を作っていると思うと話されていた。

テレンスライリー氏が、谷口氏のMoMAを、機械的な建築と、デジタル的な建築の両方の要素を持っていると思うと語ったのに答える形での話であった。
また、90年初頭の当時は、ビルバオの様な彫刻的作品の美術館建築か、もしくは、ホワイトキューブしか無かった。
が、MoMAの谷口氏の都市に開かれた美術館の提案は、第三の可能性を提示しているとも、ライリー氏は言っていた。

通訳が一本調子であったので、それが残念であったが、貴重な体験が出来良かった。

生谷口氏は、すっとした佇まいで、紳士であり、やはり素敵であった。
ほんと、いいにおいしそうだ。

写真は、谷口氏による、公演終了後に行われた展示会図録へのサイン会。
座っているのが谷口氏。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿