宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

衛星タイタンに夏の訪れ? 北半球に海上を横断する雲

2014年08月25日 | 土星の探査
土星の衛星タイタンの北半球にある海。
この海の上空を横断するように移動する雲を、NASAの探査機“カッシーニ”がとらえました。

これは、長年タイタンの大気モデルが予測してきた、
夏の嵐の兆候ではなかと考えられているんですねー

“カッシーニ”は7月の後半に、ブライバイ後にタイタンから遠ざかりながら、新たな画像を撮影しました。

その画像にとらえられていたのが、
大きなメタンの海“リジェイア海”上空を、広がりながら移動する雲でした。

雲は2日以上かけて観測され、
その動きから風速は、およそ秒速3~4.5メートルなのが分かります。

2004年に“カッシーニ”が土星に到着してから数年間にも、夏の終わりを迎えていたタイタンの南極付近では、
雲がたびたび観測されていました。
リジェイア海を横断するように現れた雲

雲はタイタンの北半球に春が訪れるころにも、引き続き観測されていたのですが、
2010年の終わりに巨大な嵐が発生。

嵐により雲が一掃され、
タイタン上空で観測される雲の規模も数も小さくなり、
数えるほどになってしまいます。

ただ、コンピュータによる大気循環のシミュレーションでは、
北半球では夏の訪れとともに、大気の温度が上昇して雲が増えると予測されていたので、
雲の活動がなくなったことは研究者を驚かせることになります。

この雲の出現が夏型天候の始まりなのか?
それとも、まったく限定的な発生なのか?

また、海と雲がどのような関係にあるのか?
偶然“カッシーニ”が海上の雲をとらえただけなのか?
それとも海上で雲が優先的に発生するのか?

知りたいことは一杯あるんですねー

タイタンの1年は地球の約30年と長く、季節は7年ごとに変化します。

ただ、“カッシーニ”の「タイタンにおける季節変化の観測」ミッションは、
タイタンの北半球に夏が訪れ、南半球に暗い冬が訪れるとともに、
1つのゴールを迎えることになります。

アルマ望遠鏡で探る、彗星での有機分子合成

2014年08月24日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡を用いた、アイソン彗星とレモン彗星の電波観測。

この観測から、彗星を取り巻くコマの中での分子合成について、
新たな発見がありました。

この発見は、太陽系そのものや生命の素になった、
有機物の起源を知る手がかりなるようです。
観測時の彗星の位置と軌道。

2つの彗星の観測が行われたのは2013年11月のことです。

電波観測で、
彗星核を取り巻くガス(コマ)に含まれる3つの有機分子、
シアン化水素(HCN)、シアン化水素の原始が組み変わったHNC分子、
そしてホルムアルデヒド(CH2O)の分布や運動速度が調べられました。

アルマ望遠鏡で観測した、
彗星コマのシアン化水素の分布。
その結果、シアン化水素は彗星核から全方向に均等に噴き出している一方で、
HNC分子は、かたまりとなってコマの中を移動していることが分かります。

これは、コマの中で有機物質が集まったチリが壊れることで、
HNC分子が作られるという説を、
裏付ける新たな証拠になるんですねー

彗星のコマに含まれる有機物質のチリは、地球の大気に飛び込んでも壊れにくく、太古の地球に降り積もって生命の起源になった可能性もあります。

また中規模の彗星には、
あまり多く存在しない有機物質について、
これだけ詳細な観測が行われたのは、
特筆すべき成果だそうです。

今後は、より暗い彗星や、遠くの彗星、
そして、より複雑な未知の分子の観測が進むことが期待されるそうです。

月がレモン形をしているのは何故?

2014年08月23日 | 月の探査
月の形は完全な球形からかけ離れていて、
地球に面している側と、その反対側が高く出っ張った奇妙な形をしています。

でも理論上では、約44億年前に形成されて以降、
回転力によって完全な球形に成形されているはずなんですねー


満月の時に見える丸い形の月は、
地球上にいる私たちには、ひじょうになじみ深い光景です。

でも天文学者によると、
別の角度から見れば、わずかにレモン形をしているそうです。

月の地形上にある、この2つの巨大な出っ張り部分は、
地球方向の軸上に並ぶ、こぶだらけの頂点を形成しています。


では、この出っ張りはどのようにして形成されたのでしょうか?

その答えとして、
「月が超高温状態だった形成初期に、地球から及ばされた強力な重力にある」
とする研究論文が発表されました。

火星サイズの浮遊惑星と地球との衝突で、
月が形成されたと考えられています。

当初は溶岩の塊だったのですが、じょじょに冷えて固まり始めることに…

月の重力が海の満ち引きを起こすのと同様に、
月の6倍の質量をもつ地球は、
新たに誕生した衛星である月が固まり始める時期に、
強力な潮汐力を及ぼすことになります。

潮汐力は月を伸縮させるのですが、
この伸縮プロセスで摩擦による熱が発生します。

伴流動体だった月は、表面が冷えている間にこの熱で暖められ、
この動的プロセスで生じた熱が不均一に伝わり、
月の地殻の形成に影響を及ぼしたんですねー

初期に及ぼされた潮汐力により、
月の地殻はさまざまな場所で熱を受けることに…

こうして、さまざまな場所で受けた熱の差によって、
月の形状の対部分が形成されます。

その後、月は冷えている間に、この潮汐力によって外側がゆがみ、
そのゆがんだ形のまま凍り付くことになります。


要は、潮汐力が月に「わずかにレモンの形」の形状を与え、
この形は、地殻が冷えた後に固定化したということです。

低温の惑星には“もや”がかかりやすい?

2014年08月22日 | 宇宙 space
岡山天体物理観測所などでの観測から、系外惑星“WASP-80b”の大気に、
微粒子の“もや”がかかっている可能性が高いことが分かりました。

理論上では、比較的低温の惑星大気には、“もや”がかかりやすいと予測されているので、
その解明につながる貴重な成果になるようです。
“もや”のかかった惑星“WASP-80b”(左)
(イメージ図)

“WASP-80b”は、
わし座の方向およそ200光年彼方にある巨大ガス惑星です。

主星から約450万キロしか離れていないのですが、主星が低温なので、
惑星の温度も摂氏300~500度と比較的に低く、灼熱というよりも「暖かい」部類の環境なんですねー

低温の主星を持つ惑星は、
発見数がまだ少ないので、
低温の大気をもつ惑星の観測も、これまでほとんど行われていませんでした。


今回の研究では、
岡山天体物理観測所の2つの望遠鏡と南アフリカのIRSF望遠鏡を用いて、
“WASP-80b”のトランジットを、可視光~赤外線の6つの波長で観測。

惑星が主星の手前を通り過ぎる(トランジットする)時には、
主星の光が、惑星の大気を通り過ぎることになります。

なので、その光の波長を調べることで、
惑星を取り囲む大気を調べることができます。

その結果、赤外線観測では可視光に比べて、
惑星のシルエットが小さくなることが分かります。

このことは、「惑星の大気中に“もや(微粒子)”が漂っている」
可能性が高いことを示すことに…

これは、主星からの可視光は“もや”にブロックされるのですが、
波長の長い赤外線だけは大気ごしでも見え、その分惑星が小さく見えということです。

“WASP-80b”の“もや”は、天王星やタイタンに見られる、
“ソリン”というタイプの微粒子なのかもしれません。

“ソリン”は大気中のメタンガスが、
太陽光の紫外線と反応して生成されます。

なので、メタンガスが安定的に存在しない700度以上の高温環境では、
存在しないと考えられています。

つまり、“WASP-80b”のような低温の惑星なら、
存在する可能性があるんですねー

今後、“WASP-80b”の大気をさらに詳しく調べれば、
“もや”の性質を明らかにできるのかもしれません。

アルマ望遠鏡 + 100億光年先のクエーサー = 冥王星の軌道?

2014年08月21日 | 宇宙 space
南米チリのアルマ望遠鏡による観測で、
冥王星とその衛星カロンの位置が、ひじょうに精密に測定されました。

この観測結果は、2015年に冥王星接近を予定している、
NASAの太陽系外縁天体探査機“ニューホライズンズ”のナビゲートに、
役立てられるようです。
冥王星(中央)とその最大の衛星カロン
(イメージ図)
冥王星の軌道は、地球の軌道の約40倍も大きく、
冥王星が軌道を一周するのに248年かかります。

冥王星が発見されたのが1930年なので、
これまで人類が観測できた冥王星の軌道は、
全体の3分の1でしかありません。

このように限られた観測データしかないので、
冥王星の位置には数千キロの誤差がある可能性が…
これほど大きな誤差があると、
“ニューホライズンズ”の軌道修正の計算に、支障がでることになるんですねー


なのでNASAでは、
アルマ望遠鏡が測定した冥王星の位置情報と、
冥王星発見時から現在までの観測データから求めた位置情報をもとに、
“ニューホライズンズ”の最初の軌道修正を、今年の7月に行っています。

“ニューホライズンズ”は冥王星接近後は、
さらに遠くにあるエッジワース・カイパーベルト天体の探査を予定しています。

なので今後の探査のために、
できるだけ燃料を残しておきたいので、
冥王星に向けた軌道修正では、ロケット燃料の消費を最小限に抑える必要があるんですねー

そのためには、はるか彼方にある冥王星の位置を、
出来るだけ精密に求めておくことが必要になり、
それには高精度な位置の基準を確立しておくことが欠かせません。

でもこの広い宇宙で、
冥王星のような小さな天体の位置と軌道を、
精密に計測するための基準を見つけるのは、
簡単なことではありません。

一般的に、こうした基準には遠くの星々が使われます。
遠くの星は、長い年月が経過しても、その位置をほとんど変えないので、
これらを基準にして、冥王星の天球上での相対的な位置を決めることになります。

人類が観測した天体のうち、
最も遠くにあって、最も見かけの位置が変わらない天体は、
100億光年以上彼方にあるクエーサーになります。

こうした天体を基準にして、冥王星の相対的な位置を観測すれば、
より高精度な位置決定が可能になります。

でも、クエーサーは可視光ではひじょうに暗いので、
従来のような光学望遠鏡による位置決定が困難になります。

そこで、アルマ望遠鏡の出番です。
クエーサーは、アルマ望遠鏡が観測可能な電波(ミリ波)では、
ひじょうに明るく見えるんですねー

そして、2013年末から2014年7月までに行われた観測では、
100億光年彼方のクエーサーとの相対位置や、
地球の公転にともなう見かけの位置のずれ(視差)を利用して、
冥王星の軌道が精密に求められたそうですよ。