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強力な磁場を持っていてもジェットが放射されるのはなぜ? これまでの考えに合わない中性子星を発見

2018年11月13日 | 宇宙 space
電波望遠鏡VLAによる観測で、強い磁場を持つ中性子星からジェットが噴き出していることが確かめられました。

これまで、このような天体からジェットは放出されないと考えられていました。
なので、この中性子星では新しい種類のメカニズムが働いでいるようです。


降着円盤を持つ中性子星

2017年10月のこと、NASAのガンマ線バースト観測衛星“スウィフト”が、X線で突如明るくなった天体“Sw J0243”をカシオペア座の方向に発見します。

その正体は、大質量の星が一生を終えるときに起こす超新星爆発の後に残った高密度の天体“中性子星”でした。

“Sw J0243”は、太陽よりも質量が大きい星と連星系を成していて、その伴星から引き込んだ物質で“Sw J0243”の周囲には回転する降着円盤を形成しています。

オランダ・アムステルダム大学の研究チームは、アメリカ国立科学財団のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群VLAを使って、“Sw J0243”を2018年1月まで継続観測。

そして、日が経つにつれX線と電波の放射が弱くなっていったことや電波放射の特徴から、この電波が高速のジェットによって放射されているものだと確信していきます。


なぜジェットが形成されるのか?

降着円盤を持つ中性子星では、光速に近い速度まで加速されたジェットが円盤の垂直方向(中性子星の両極方向)に放射されます。

ただ、これまで考えられてきたのは、“Sw J0243”のように非常に強力な磁場を持つ中性子星の場合は、その磁場の影響でジェットの形成が妨げられるということ。

そう、“Sw J0243”でのジェットの発見は、これまでの考えとは相反しているんですねー
○○○
中性子星周囲の磁力線、降着円盤、外へ向かって放出されるジェット(イメージ図)
このような現象が見られる理由として研究チームが考えているのは、降着円盤内におけるジェットの発生領域が中性子星から離れていて、磁場の影響が弱いという可能性です。

別の可能性として考えられるのは、ジェットを加速するエネルギーが中性子星の自転によってもたらされているというもの。

ただ、自転によってエネルギーを獲得するという考えでは、ゆっくり自転する中性子星からのジェットは、かなり弱いものになると予測されます。

今後、もし同種の天体を見つけることができれば、中性子星の自転でジェットが形成されるという説を確かめられるのかもしれません。

また、“Sw J0243”のジェットの発見は、同様に強い磁場を持つ“超高輝度X線パルサー”と呼ばれるカテゴリーの天体でも、ジェットを放射する可能性があることになります。

強い磁場を持つ天体でのジェットの形成に関する考えを改める必要性を、今回の発見が示しているのかもしれませんね。


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