雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

人の顔

2014-05-25 11:00:20 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百五十三段  人の顔

人の顔に、「とりわきてよし」と見ゆるところは、たび毎に見れども、「あなをかし」「めづらし」とこそおぼゆれ。
絵など、あまたたび見れば、目も立たずかし。近う立てたる屏風の絵などは、いとめでたけれども、見も入れられず。
人の容貌は、をかしうこそあれ。憎げなる調度のなかにも、一つよきところの、目守(マモ)らるるよ。
「醜きも、さこそはあらめ」と思ふこそ、わびしけれ。


人間の顔で、「特別に美しい」と見えるところは、会う度に見ても、「まあすばらしい」「うっとりしてしまう」と思われます。
絵などは、何度も見れば、目につかなくなるものです。身近にいつも立っている屏風の絵などは、とても立派だけれど、見向きもされません。
人間の容貌というものは、面白いものです。みっともない調度(目や鼻や口などの顔の部分)の中でも、一か所良いところがあれば、目をひかれるというものです。
「同じように、一か所醜いところがあれば、目をひくに違いない」と思ってしまうのが、私なんかは情けないのですよ。



現代の私たちにも、十分伝わってくる内容です。
文章をそのまま読みますと、少納言さまは、「目や鼻や口などのほとんどは美しいが、一つだけ欠点がある」と言っているように読み取れます。
さて、少納言さまは美人だったのでしょうか、それとも・・・。
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