雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

人のうえいふを

2014-05-26 11:00:16 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百五十二段  人のうえいふを

人のうえいふを腹立つ人こそ、いとわりなけれ。
いかでか、いはではあらむ。わが身をばさし措きて、さばかりもどかしくいはまほしきものやはある。
されど、けしからぬやうにもあり。また、おのづからききつけて、恨みもぞする、あいなし。
また、思ひ放つまじきあたりは、「いとほし」など思ひ解けば、念じていはぬをや。さだになくば、うち出で、わらひもしつべし。


人の噂をするのに腹を立てる人ときたら、全くやりきれません。
どうして、人の噂を言わないでいられましょうか。自分のことは別にして、他人の噂ほど無性に話したくなるものが他にありますでしょうか。
けれども、噂話は、あまり褒められたものでもないですわね。そのうえ、本人が自然と耳にして、恨みに思うかもしれないのが、まずいのです。
また、きっぱりと嫌いになってしまえない人のことなどは、「気の毒だ」などと大目に見るので、我慢して言わないのですよ。そんな気兼ねのない時は、人前で存分に噂話をして、笑い者にしてしまうのですよ。



いやいや、大変な内容の章段です。
少納言さまが特別そうだったのか、宮中の女房方全体がそうだったのかはともかく、こうまではっきりとは言えないまでも、現代人の心理も大差ないような気もします。
それにしても、「人のうえいふを腹立つ人こそ、いとわりなけれ」という書き出しは強烈です。
コメント
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