枕草子 第二百五十六段 成信の中将
成信の中将こそ、人の声は、いみじうようきき知りたまひしか。
同じ所の人の声などは、常にきかぬ人は、さらに得きき分かず。殊に男は、人の声をも手をも、見分ききき分かぬものを、いみじうみそかなるも、かしこうきき分きたまひしこそ。
成信の中将ときたら、女房の声を、とてもよくお聞き分けになったものですよ。
同じ所から聞こえてくる女房の声なんか、いつも聞きなれていない人は、全然聞き分けられません。特に男性は、女房の声も筆跡も、見分けたり聞き分けたり出来ないものなのに、どんなひそひそ話でも、成信殿は正確に聞き分けられたんですよ。
この辺りの章段は、特定人物の回想談が続いています。
成信の中将(源成信)も、おなじみの人物です。この人が、女房の声を聞き分けるのに優れていたという話ですが、その中で「殊に男は、人の声をも手をも」と『手』が加えられています。
『手』とは筆跡のことですが、おそらく少納言さまの得意の分野だったのでしょう。
成信の中将こそ、人の声は、いみじうようきき知りたまひしか。
同じ所の人の声などは、常にきかぬ人は、さらに得きき分かず。殊に男は、人の声をも手をも、見分ききき分かぬものを、いみじうみそかなるも、かしこうきき分きたまひしこそ。
成信の中将ときたら、女房の声を、とてもよくお聞き分けになったものですよ。
同じ所から聞こえてくる女房の声なんか、いつも聞きなれていない人は、全然聞き分けられません。特に男性は、女房の声も筆跡も、見分けたり聞き分けたり出来ないものなのに、どんなひそひそ話でも、成信殿は正確に聞き分けられたんですよ。
この辺りの章段は、特定人物の回想談が続いています。
成信の中将(源成信)も、おなじみの人物です。この人が、女房の声を聞き分けるのに優れていたという話ですが、その中で「殊に男は、人の声をも手をも」と『手』が加えられています。
『手』とは筆跡のことですが、おそらく少納言さまの得意の分野だったのでしょう。