一燈照隅

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天皇制とは

2006年03月01日 | 日本の文化
皇室典範改定問題が騒がれるようになってから、よく天皇制という言葉を耳にします。
私はこの言葉に違和感を憶えます。なぜなら、敗戦まで使われていなかった言葉で、戦後日本共産党が使い出してマスコミが広めた言葉だからです。
日本にはそれまでは「国体」という言葉はありましたが、「天皇制」などまったく有りませんでした。


天皇制とはどういうことなのか。
天皇と天皇制は違うという事が「討論 天皇」里見岸雄 に簡略に分かりやすく載っています。


大内山 戦後のものです。誰が初めて天皇制の語を使ったか、いま明らかでありませんが、とにかく日本共産党が使い出したものですよ。徳田球一が牢から出獄して活動開始し、最初に出したパンフレットが「天皇制の打倒」という小冊子ですが、これなどが、たぶん天皇制という言葉を普及した元凶でしょうよ。一つの言語魔術で、日本国民が殆んどみな、この言葉にひっかけられてしまった。もちろん天皇制ということもいえないことはないが、国体とは少し意味が違いますね。

菅原 そうですな。このごろでは国体護持の代わりに天皇制護持といいますね。

大内山 天皇制というのは、どういう意味でしようかね。東郷君。

東郷 はい。よくわかりませんけれども、天皇に関する制度という意味はないでしょうか。

大内山 大久保貴和子君。

大久保 東郷さんと同じです。

大内山 牛山君。

牛山 天皇を置く制度の意味だと思います。

大内山 では、もう一つ。制度というのはどういう意味?

牛山 規則です。

大久保 社会生活をよくするために定めた規則です。

大内山 ふむ、規則? 規則といえないこともなかろうが……。

伊谷沢 人間社会の機構です。

大内山 ああ、やはり大学生は大学生らしい答をしますね。では、今度はこういうことをひとつ考えてみて下さい。親子というのはなんでしょう。制度ですか。牛山君?……藤原君。

牛山 ……。

藤原 制度ではないと思います。

大内山 制度ではないんですか。

藤原 ……。

大内山 どうですか、親中君。

親中 制度でもあり、制度でもない……ように思いますが。

大内山 もう少し説明してみて下さい。

親中 人間が社会生活のために定めた規則とか、機構とかいう意味を制度としますと、人間社会には、親子についていろいろ制度があります。法律的に見ても、親は子を養育しなければならないとかなんとか、そういう点からみれば制度ともいえるかと思いますが、しかし、親子は、本来が自然の生命的系列で、人為的に定めた機構ではありません。……よくいえないんですが。

大内山 結構です。制度の制という字は、刃物で食物を料理するという字で、訓ではツクルとよむのです。度はハカリ定めることですね。関西では、さしみのことをつくりいいますが、魚を食べいいようにつくるからです。ですから、制度というのは制定された法規といってもよいのですが、法規というものは人間の社会生活の諸関係を規定するものですから、結局、制度とは法的に規制された社会生活の諸関係だということができます。

菅原 すると、天皇制はどういうふうに理解すればいいのでしょうか。

大内山 家族そのものと家族制度とは全く同一のものですか。赤井君。

赤井 家族制度は家族と不可分の関係にはありますが、全く同じではありません。制度化しえない家族の実体があると思います。

大内山 だんだん問題の焦点にピントが合ってきます。ではあなたのいう制度化されない家族の実体と家族制度とはどちらが、より根本的ですか。

赤井 さあ、どっちともいえません。どっちも大切だと思います。

大内山 いや、大切かどうかというのではないのです。どちらが根本的、つまり、根本と枝葉、根幹と外皮の関係ですね。

赤井 ああ、勘ちがいしていました。むろん制度化されない家族の実体の方が根本的に在るもので、制度の方は、時代により、歴史的性質を帯びてさまざま変化いたします。

大内山 そうです。

親中 さきほど先生は生命的系列とおっしやったんですが、親子とか、夫婦とか、つまり家族というものは法律の制度をつくる前から、人間性そのものに根ざして自然に存在している根源的なものだ。それに比し、家族制度の方はその根源的に存在している家族について、人間がその時代、その時代に、つくり定めた規則の上の関係だ、と理解してよろしいのですか。

大内山 なかなか立派な理解ですね。

親中 あら、私ばかりお褒めいただくようでどういたしましょう。

大内山 ハハハッ。そんなわけではないんですがね、……そこで、こんなふうにいったらどうですか。……国体と天皇制とは、たとえていえば家族そのものと家族制度のようなものだ、と。わかりますか。

親中 ああ、さようでございますか、わかるような気がいたします。

大内山 いままであまり発言なさらない方、おわかりですか。荒木さん。亀川さん。

荒木 だんだんわかってくるような気がいたします。

亀川 先生は非常に讐喩が適切なので、よくのみこめます。

大内山 皆さんにわかっていただければこんな嬉しいことはありません。それでは、もういっそう問題を掘り下げていぎましょうか。……文部大臣という官職がありますね。文部大臣は憲法をも含めた意味での法律によってはじめてできたものであって、制度の定まる前から自然に文部大臣があったわけではありませんね。そうですね。

田中 はい。

大内山 そこで、天皇について考えてみましょう。天皇は法律(憲法を含めて)によってできたものですか。田中さん。

田中 いえ、法律などの出てくる余程前からのものと存じておりますが。

大内山 ふむ。なる程。天皇という名称は推古朝か、さかのぼってもその少し前からできたのですが、天皇そのものは、もっと古くからあったわけです。昔の日本人は、天皇のことを、オウキミ、または、スメラミコトなどと呼んでいたのですが、そういう言葉で呼ばれていた天皇は、いつのまにか、殆んど自然にできていたのでしょうか、それとも、満州事変の後に、満州国の機構の一つとして制定された満州国皇帝のように、制度をつくることによって天皇になられたのでしょうか。釈さんどう考えますか。

釈 むろん自然の間に、いつのまにか、オウキミ、スメラミコトができていたと思いますね。

村上 釈さん、そうするとあなたは古事記や日本書記に書いてある神武天皇の建国を信じないのですか。

釈 これは唐突の御質問で痛み入入りますな。あなたは、私が古事記や書紀の神武天皇の即位をそのまま信じているとお思いですか、それとも信じていないとお考えですか。

村上 ほう、これは逆襲ですか。

大内山 ハハハッまあ、それはそれとしましてですね。村上君はどう考えますか。

村上 少し薮蛇みたいなことになってきたようですが、まあ、こんなときには神武天皇が西暦前六六〇年に橿原で即位の宣言をしたという日本書記の記述を引き合いに出せると非常に都合がいいんですが、そういうわけにもゆかないし、そうかといって大化の改新では少し遅いようだし、困ったな、なんだか巧妙なワナにみすみす引っ掛かるみたいだが、まどちらかといえば、いつの間にか、という方でしょうかな。

菅原 少しおもしろくなってきよった。

大内山 菅原さん(笑いながら)あなたと同じ釜の飯を食った後輩ですから、そんなこと言っちゃいけませんよ。史料がないのだから、歴史的に時期を明らかにすることは困難ですが、天皇の起源は、制度的に見るべきものでなく、ちょうど家族が人間性に 根ざしているように、天皇は深く日本人の民族性に根ざしているのであって、この民族性に根ざしていつの間にか天皇を戴いている根本的社会体制となっていたのです。それが国体なんですよ。しかし、天皇が国民に対して現実面でいろいろ働きかけられるについてはおのずから時代の必要とか考え方とかがあって、一般の人が承知し、或いは納得するような規定ができてくるのです。それが、まあ、天皇制という言葉を用いるとすれば、天皇制といい得るものだと思ったらよいでしょう。 国体があって、しかるのち天皇制がある。国体は根本で、天皇制はそれから派生した制度だ、こういうわけで、天皇制だけではいけないのです。天皇制の根本としての国体は不動なものだが、天皇制は時代とともに変わるところの多いものだということをよく認識する必要があるんです。

藤原:高校生、大久保:高校生、東郷:高校生、河本:高校生、牛山:獣医大学生、親中:小学校教師、赤井:中学校教師、亀川:元炭労組合員、荒木:看護婦会長、村上:元近衛歩兵少尉、田中:主婦、神尾:神職、釈:僧侶、金村:商事会社社長、菅原:元陸軍大佐、大内山:指導講師




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2 コメント

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Unknown (maru)
2006-03-02 18:50:22
そうなんですよね。

天皇を日本の「制度」と考えるとなんか違和感を感じるときがあります。家族と家族制度の例で分かりやすかったのですが、人間同士のつながりとか関係を法律化したり文章化すると、その大切さとか尊厳のようなものが薄れるような気がします。



皇室や天皇についての憲法、法律の必要性はわかりますが、それはあくまで2次的なものであって、天皇と私達日本人の関係はそんな文章化されるような簡単なものでは無いような気がするんですよね。
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Unknown (まさ)
2006-03-02 20:15:31
maruさん、

日本は天皇と国民が一緒になった、君民一体の国柄です。

天皇制と言う言葉は使いたくないですね。



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