箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

「しなやかな人間関係」でつながる

2020年09月12日 06時58分00秒 | 教育・子育てあれこれ

きのうのブログでは、現代のお母さんが子育てに不安をもっていることとその原因・理由について書きました。

子育ての責任がおもに親だけにのしかかるという社会の変化が、不安を感じさせる大きな要因であるということでした。

私の記憶では、2000年前あたりから、行政が子育て支援センターを開設したり、NPO団体やボランティアサークルが子育てサークルを立ち上げ、子育てに不安をかかえる親へのサポートを始めました。

それからもう20年近くがたちました。私が中学校の校長を務めた2011年から2018年ごろの保護者のうち、おもにお母さんたちからは子育ての悩みの相談を何度か受けました。

この中学生の親御さんたちは、いわゆる「子育て不安世代」にあたる人たちです。

その不安を感じるお母さんたちの力になれるよう、しっかり話を聴かせてもらいました。

まずは、不安を感じながらも、とにもかくにも12歳・13歳までわが子を育ててこられたその苦労と努力をねぎらいました。

ただ、それを聞きながら感じたことは、「このお母さんたちは、もし子どもがいなければ不安を感じることなく、安心して、前をしっかり向いて生きてこられただろうか」と。

おそらく、そうではないと感じます。
子どもがいなくても、夫・親・家族との関係、職場での上司との関係、同僚どうしの人間関係など、別のことで不安を感じてきたのでないかと思いました。

つまり、子育て不安を引き起こす要因は、親だけに子育ての責任を問うという、まわりの環境や社会の変化にあるのですが、それには特徴があります。

子育てに不安を感じる人は、子どもに不安を感じているのではなく、じつは自分に対する不安を感じているのです。

日本社会がいまのように豊かでなかった時代、戦争をしていた昭和時代には、人は助け合わないと生きることができませんでした。

他者を頼ることができる状況、人間関係の中で、人は安心感を覚え、不安感を取り除くことができました。

また、他者から頼られることで自信を高めていけるという側面もあるでしょう。

では、現代の親がもつ子育ての不安にどう応えていくのか。

それには、人が孤立しないような手立てがいります。

だからといって、
戦争の時代に戻ればいいというものでは、もちろんありません。
みんなが貧しかった昭和20年代の時代にもどる。
地域社会の相互扶助の人間関係をとり戻す。

どれも現実的ではありません。

不安を感じるときには、人間関係を増やすのがいいと思います。私はこの人間関係は「しなやかな人間関係」だと考えています。

いつも、どこでも、いっしょに活動したり、家の中にまで踏み込んできて、ずっといっしょの時間を過ごすという濃い関係ではありません。

おたがいに自分の生活をもちながらも、この活動を通じてあの人とは知り合いである。

いっしょに活動する中で、いざというときには助け合うというつながりです。

また、それぞれの人は別の活動もあり、そちらで活動しているときもある。

このようなゆるやかな、おたがいをしばりつけない人間関係で、子育てサークルや地域の活動も運営されていくのが望ましいと考えます。

しなやかであり、頼って頼られる人間関係の糸が増えてくると、「わたしはわたしのままでいい」「わが子はわが子のままでいい」という気持ちが芽生えてきます。

すると、間接的にでも子育てへの自信が高まってくるのだと思います。