箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

ひとり親家庭の子育て

2020年09月14日 08時20分00秒 | 教育・子育てあれこれ

いまはひとり親家庭が増えています。

私が教員になった頃と校長をしていた頃と比べて、約30年間で母子家庭や父子家庭は確実に増えました。

ふつう30年間を一区切りとして、1世代と考えます。

1世代の間に、夫婦関係・親子関係も変化します。

では、ひとり親家庭の子どもが、両親がいる家庭で育った子どもと比べて健やかに育ちにくいでしょうか。

世間では、一般的にそのように考える人も少なくないかもしれません。

しかし、わたしは断言しますが、そんなことはけっしてありません。

わたしが出会ってきたひとり親家庭の中学生に、とくに成長上の問題が多くあったとは思わないからです。

ただ、わたしが学級担任をしているときには、ひとり親家庭の生徒に「淋しい思いをしているのでないか」と必要以上に気を遣いすぎたという反省の念を、いま振り返って抱いています。

でも、中学生になればもう自分の境遇や家庭環境を受け入れるしかないのです。その家庭環境を認め、自分がどう生きていくかを考えるのが中学生です。

両親がいる場合は、親の役割を分けあうことができます。でもそれは分担しているにすぎません。

子どもが健やかに元気に育つために必要な条件は、お母さんひとりでも満たすことはできます。

またはおじいちゃん・おばあちゃんやほかの人に手伝ってもらって満たすこともできます。

たしかに、子育てには「母性的なかかわり」や「父性的なかかわり」というものがあります。

母性とは子どもを無条件で受け入れ、愛情で包み込む力です。

いっぽう、父性とは集団生活や社会の規範やルールを教えて子どもを導く力です。

誤解しやすいのは、母親だから母性的、父親だから父性的な役割しかできないと思い込むことです。

母親だけでも、父親だけでも、さらに言えば親でなくても、母性的かかわりと父性的かかわりはできます。

子どもが幼い頃を思い出してください。子どもが泣くとミルク、子どもが泣くとおむつ交換、子どもが泣くと抱っこする。

こういうことを繰り返して、無条件で子どもを受け入れることで、愛着関係が築かれていきます。

この母性的なかかわりで育まれる愛着関係は、子どもにとっての絶対的な安心感となりますが、男性にできないことではありません。

それに対して、父性的なかかわりとは、子どもの年齢に応じて他者との人間関係のなかでのきまりごとを教え諭すことです。

人の嫌がることを言ってはいけない。
人のものを盗ってはいけない。
友だちをいじめてはいけない・・・。

このようなことを教えることは、お母さんもできます。また集団生活や社会生活の中でもできます。

つまり保育所・幼稚園・学校でも、子どもは学ぶことができるのです。

ただし、子どもの育ちとっては母性的かかわりがファーストです。

まず、子どもを受け入れ、ありのままに認めればいいのであり、つぎに社会のきまりごとを教えていくのが子育ての順序です。

大切なのは、お母さん一人の場合に、「この子には父親がいないのだから、わたしがその役割も果たさなければ」と、必要以上に固く、深刻に考えすぎないことです。

真剣に子育てをしても、深刻になる必要はありません。

ガチガチになって子どもに厳しく接するシングルマザーの場合、子育てはなかなかうまくいきません。

そんな場合、子どもにとっては、お父さんがいないだけでなく、お母さんまで不在になってしまうからです。

人間関係を外に開き、母親自身が楽しいと思える生活を、家庭内外で送ることが、何よりも子どもの健やかな成長にとっていいことです。