箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

教育実習生を受け入れる

2020年09月15日 08時13分00秒 | 教育・子育てあれこれ

今年度は新型コロナウイルス感染防止のため、学校は2か月の臨時休業となり、その影響で教育実習の受け入れをやめる学校が出てきています。

一般の方は、教育実習といえば自分の小中高の時代を思い出し、ああ「教生の先生のことね」と、ご理解してもらえると思います。

教育実習は、大学が授与する教員免許をとるのに、教職課程の必修の単位となります。

原則、実習校は学生が自分で探してくることになっています。

通常、教育実習は春か秋に3週間程度行います。

今年度、とくに春は学校が再開してもまだしばらく分散登校だったので、6月の教育実習は秋に延期する、または年度中は中止する。学生には厳しいですが、こう決めた学校もありました。

2か月の休業で学習の進度をとりもどさなければならないので、受け入れができない。

感染症対策に万全を期すため、三密をさける授業や活動が必要になる。

教員が多忙で、とても実習生を受け入れる余裕がない。・・・・・

学校には、こういった事情があります。

ふつう、教育実習生を受け入れるには、指導教官(実習担当の先生)の業務量が増えるという事情もあります。

実習生が行う授業を毎時間参観して、指導する。

一つの授業を指導するには、その前の指導と参観、その後の指導という3段階があります。

さらに「研究授業」をいっしょに立案し、授業後の協議会を校内で開催する。

なかには、実習生にもよりますが、授業が児童生徒が理解しにくく、実習担当教員がアフターフォローに追われる。こういうこともあります。

令和2年度に限ってですが、文科省はこのたび教育実習で行う教科の総授業数の全部を、大学が行う授業に振り替えることができるという特例措置を出しました。

これはつまり、教育実習を経験せずとも、年度末には教員免許を取得できるということです。
夏に都道府県が行う教員採用試験にその人が合格していれば、学校での教員経験なしに、来年4月からは教諭として採用されるということです。

そもそも教育実習は、大学の「教職課程」の中でも最重要な科目です。

教員免許を取得する大学のカリキュラムでは、4年間の集大成ともいえるものです。

学生本人にとっては、この実習が、自分にとって教職が向いているのか、生涯続けることができる仕事かを判断する機会にもなります。

私自身でいえば、自分の出身中学校に英語の教育実習生としてお世話になりましたが、そのときの経験と感動はいまも鮮明に覚えています。

当該校には、ご迷惑をおかけしたこともあったでしょうが、実習のおかげで私は教員になる意志を強くしました。

その年の夏の大阪府教員採用試験には不合格でした。他分野に就職することも選択肢にはありました。

当時は学生の「買い手市場」で大学の仲間は、次々と一般企業に就職が決まりました。

しかし、それを横で見ながら、私は大学卒業時には就職せず、翌年の教員採用試験を受ける決意をしたのでした。

心が折れそうになる私の背中を押したのは、いうまでもなく、教育実習で得た生徒との心のふれあいでした。

教職は、わたしにとっての「天職」。こう自分に言いきかせることができたのも、教育実習の経験があったからです。

そして、縁あって、翌年度から教諭として、中学校に着任でき、35年以上教職に従事しました。

たしかに、各学校は児童生徒の「学びの保障」を進め、感染症対策を講じながらも、学校を開いていくという困難な状況に直面しています。

それでも可能な限り、教育実習生の受け入れをお願いしたいと思います。

未来の日本の教育を担っていく学生の「学びの保障」に協力していただきたいのです。

今回、文科省は予算をつけて、新型コロナウイルス感染症対策として、学校に学習支援員を配置しています。

文科省通知では、「学習支援員としての活動を教育実習の科目の授業として位置付けることも可能である」としています。

学生の力を大いに活用して、学校の業務の忙しさを減らしていくこともできるかもしれません。

どこの学校もピンチである今年度こそ、教育実習生をいかすチャンスであるとも考え、ぜひ受け入れてほしいと願います。