父がペースメーカーを入れてから一週間あまり過ぎた先日、診察のために父に付き添って病院へ行くことになった。
病院は午前10時に予約していたので、父の住む高齢者住宅に9時半に到着した。
30分前ならば、きっと10時の診察に間に合うはず・・・だって病院は高齢者住宅のすぐ隣で、歩いて5分もかからないのだから。
前にも同じように病院に付き添うために父を迎えに行ったら、なんと父はお風呂に入れられていて、間に合うどころか大幅に遅れて行くということがあった。
その時は職員さんに診察予定が伝わっていなかったことが原因だったが、今回は大丈夫だろうと思っていた。
なぜなら今回は高齢者住宅の職員さんが窓口になってくれて病院の予約を取ってくれていたのだ。
もしかしたら職員さんが気を利かせて、もう病院へ行く身支度を整えてくれていたりして~
そんな都合のよいことを考えながら、いつも父がいる部屋をのぞいてみた。
父の姿はない。
あれ?自分の部屋かな?
そこで別の階にある父の部屋に行ってみた。
やっぱりいない。
嫌~な予感がした。
再びいつも父がいる部屋に戻ったら、顔見知りの職員さんがいたので父の居場所を聞いてみた。
すると職員さんはにこやかにおっしゃった。
「今、お風呂に入っているんですよ。ペースメーカーを入れてお元気になりましたね~。食欲もあるし、顔色も良くなったし・・・(以下、お話は続く)」
笑顔で父の様子を教えてくれる職員さんの話に相槌を打ちながら、途中から職員さんの言葉は右耳から左耳へ通り過ぎていった。
「お風呂?今、入ってるって?そりゃあ、絶対に間に合わないっしょ!」と心の中でつぶやく。
診察があるなんてことは、まったく知らないのだろうと、職員さんののんびりとしたおしゃべりを聞いていて分かった。
しかし、とりあえず父が元気になったという報告は嬉しい限りだ。
「じゃあ部屋で待っています」と職員さんにお伝えし、病院にも遅れることを連絡してから父を待った。
さっぱりとした顔で父が部屋に戻って来たのは、それから30分も過ぎた時だった。
連れてきてくれた職員さんにこれから病院へ行くことを話すと大急ぎで髪を乾かしてくれて、私は父に靴下を履かせたり上着を着せたりした。
父はと言えば、されるがままでおまかせ状態。
父の足と手がむくんでいるのが気になった。
さて病院は隣とはいえ高齢者住宅とつながっていないため、一度外に出なければならず、氷点下の気温なのでお風呂からあがったばかりの父が風邪をひかないように沢山着せた。
父にいつも着ているフリースの赤いジャケットを着せていると、「首が寒そうだから、これを首に巻くといいですよ」と職員さんが赤いニットのマフラーを貸してくれた。
さらに職員さんは「髪を洗ったばかりだから、これをかぶせて・・・」と言って、首に巻いたニットをぐ~んと伸ばして父の頭にかぶせてくれた。
赤いジャケットに赤い帽子の父は、まるでロシアの人形「マトリョーシカ」みたいだった。
思わず「お父さん、すごく可愛い」と言ってしまった。
病院へ行かねば・・・と、とても急いでいたのだが、せっかくなので父のマトリョーシカ姿を写真に撮った。
そして、それを父に見せるとそれまで表情のなかった父がにやりと笑った。
昔から父はよく喋り、また毒舌家でもあった。
父には対して苦々しく思うことはあれ可愛いなんて思ったことはなかったが、今は可愛いと思うことがよくある。
それは父が周りの人たちにすっかり頼り切って、自我も薄くなって来ていることから、まるで赤ちゃんが可愛いと思うのと近いものだと思う。
「人は赤ちゃんで生まれ、白ちゃんで死んでいく」と聞いたことがあるが、父を見ていると本当にそうだなぁと思う。
歳をとると、人は白髪になり肌の色も心なしか白くなって他人からお世話をしてもらわなけれならない。
まさに「白ちゃん」になるのかもしれない。
さて父の病状だが、やはり手足のむくみが気になったことは正解で、一週間で体重がなんと3キロも増えているとのことだった。
これは水分がきちんと排出できていないからだそうで、一週間分の利尿剤が出された。
医師によると「心臓に水がたまると大変です」ということだった。
また来週、診察に行くことになった。
その日は、お風呂に入れないように職員さんにお願いしてきたが・・・今度は大丈夫だと信じたい。
病院は午前10時に予約していたので、父の住む高齢者住宅に9時半に到着した。
30分前ならば、きっと10時の診察に間に合うはず・・・だって病院は高齢者住宅のすぐ隣で、歩いて5分もかからないのだから。
前にも同じように病院に付き添うために父を迎えに行ったら、なんと父はお風呂に入れられていて、間に合うどころか大幅に遅れて行くということがあった。
その時は職員さんに診察予定が伝わっていなかったことが原因だったが、今回は大丈夫だろうと思っていた。
なぜなら今回は高齢者住宅の職員さんが窓口になってくれて病院の予約を取ってくれていたのだ。
もしかしたら職員さんが気を利かせて、もう病院へ行く身支度を整えてくれていたりして~
そんな都合のよいことを考えながら、いつも父がいる部屋をのぞいてみた。
父の姿はない。
あれ?自分の部屋かな?
そこで別の階にある父の部屋に行ってみた。
やっぱりいない。
嫌~な予感がした。
再びいつも父がいる部屋に戻ったら、顔見知りの職員さんがいたので父の居場所を聞いてみた。
すると職員さんはにこやかにおっしゃった。
「今、お風呂に入っているんですよ。ペースメーカーを入れてお元気になりましたね~。食欲もあるし、顔色も良くなったし・・・(以下、お話は続く)」
笑顔で父の様子を教えてくれる職員さんの話に相槌を打ちながら、途中から職員さんの言葉は右耳から左耳へ通り過ぎていった。
「お風呂?今、入ってるって?そりゃあ、絶対に間に合わないっしょ!」と心の中でつぶやく。
診察があるなんてことは、まったく知らないのだろうと、職員さんののんびりとしたおしゃべりを聞いていて分かった。
しかし、とりあえず父が元気になったという報告は嬉しい限りだ。
「じゃあ部屋で待っています」と職員さんにお伝えし、病院にも遅れることを連絡してから父を待った。
さっぱりとした顔で父が部屋に戻って来たのは、それから30分も過ぎた時だった。
連れてきてくれた職員さんにこれから病院へ行くことを話すと大急ぎで髪を乾かしてくれて、私は父に靴下を履かせたり上着を着せたりした。
父はと言えば、されるがままでおまかせ状態。
父の足と手がむくんでいるのが気になった。
さて病院は隣とはいえ高齢者住宅とつながっていないため、一度外に出なければならず、氷点下の気温なのでお風呂からあがったばかりの父が風邪をひかないように沢山着せた。
父にいつも着ているフリースの赤いジャケットを着せていると、「首が寒そうだから、これを首に巻くといいですよ」と職員さんが赤いニットのマフラーを貸してくれた。
さらに職員さんは「髪を洗ったばかりだから、これをかぶせて・・・」と言って、首に巻いたニットをぐ~んと伸ばして父の頭にかぶせてくれた。
赤いジャケットに赤い帽子の父は、まるでロシアの人形「マトリョーシカ」みたいだった。
思わず「お父さん、すごく可愛い」と言ってしまった。
病院へ行かねば・・・と、とても急いでいたのだが、せっかくなので父のマトリョーシカ姿を写真に撮った。
そして、それを父に見せるとそれまで表情のなかった父がにやりと笑った。
昔から父はよく喋り、また毒舌家でもあった。
父には対して苦々しく思うことはあれ可愛いなんて思ったことはなかったが、今は可愛いと思うことがよくある。
それは父が周りの人たちにすっかり頼り切って、自我も薄くなって来ていることから、まるで赤ちゃんが可愛いと思うのと近いものだと思う。
「人は赤ちゃんで生まれ、白ちゃんで死んでいく」と聞いたことがあるが、父を見ていると本当にそうだなぁと思う。
歳をとると、人は白髪になり肌の色も心なしか白くなって他人からお世話をしてもらわなけれならない。
まさに「白ちゃん」になるのかもしれない。
さて父の病状だが、やはり手足のむくみが気になったことは正解で、一週間で体重がなんと3キロも増えているとのことだった。
これは水分がきちんと排出できていないからだそうで、一週間分の利尿剤が出された。
医師によると「心臓に水がたまると大変です」ということだった。
また来週、診察に行くことになった。
その日は、お風呂に入れないように職員さんにお願いしてきたが・・・今度は大丈夫だと信じたい。