久しぶりに妹とごはんに行った。
ラインや電話でのやり取りはたまにしていたものの、実際に会うのはコロナが始まった頃を最後に五年ぶりくらいだろうか。
ずいぶん長い間、会っていなかったものだと思う。
思えば、それまで私が車でよく会いに行っていたが、ワクチンのことで意見の食い違いがあり、それは双方の家族を巻き込んで、こちらは行きづらくなり、向こうは向こうで来てほしくないという状況になってしまって、気がつけばこんなに時間が過ぎていた。
当時ワをうつのが当たり前、うたないのは非国民みたいな雰囲気が漂っていた。
それでどれだけの家族や親しい間柄の人たちの関係にヒビが入ったのだろうと思う。
中には意見の違いから離婚にまでなったという話も聞いた。
意見の対立まで起こった騒ぎも、今ではすっかり忘れかけているくらいに、ワのことが話題にのぼることはなくなった。
さて待ち合わせ場所に先に来ていた妹は、前と変わらず元気そうで安心した。
実は会っていなかった五年近くの間に、妹は癌を患っていた。
健診のつもりで受けた内視鏡で、たまたま発見された大腸がんだった。
発見されてから三年目なので、まだ油断はできないが、これまでの生活習慣を見直して、好きだったスイーツをやめたり身体を温めたりしているそうだ。
少し太って元気になった妹と、久しぶりにご飯を一緒に食べて、ショッピングをして、会っていなかった間に、二人とも孫のいるおばあちゃんになったが、洋服の好みも雑貨類の好みも似ているので妹とのショッピングは楽しかった。
そう、、楽しかった筈なのだが、「コレいいと思わない?欲しいなぁ」と商品を見ながら言う妹の言葉に頷きながら、少しも欲しいと思っていない自分に少し焦っていた。
妹がいいというものは、自分もいいとは思うものの、購買意欲がまったく湧いてこない。
それより、ショッピングより妹ともっと色々な話がしたいと思っていた。
会わなかった間に興味のある世界が、お互いに違ってきてしまったのだろう。
大ぶりのイアリングを手に取った妹が言った。
「これお姉ちゃんにきっと似合うよ。フランスのマダムみたいに見えるかも」
「うん素敵。でもアクセサリーは、もう何も着けたくないんだよねぇ。少しでも身軽でいたい」
「どうして?昔はいつもイアリング着けてたのに?」という妹の言葉に、そういえばそうだったかもしれないと、昔のことを少し思い出していた。
人は時間と共に少しずつ変わっていくものだ。
そういう妹も、五年前とはいい意味で変わっている。
ちゃんと自分の意思を持っているという感じがした。
最後に今度二人で旅行しようという話で盛り上がり別れた。
そういえば今日は母の命日。
姉妹の関係を、草葉の陰から心配していたかもしれない母も安心してくれただろうと思う。