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言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

中国による3つの指摘

2012-12-18 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「憲法改正するな…人民日報が安倍氏に3つの指摘」( 2012年12月17日20時56分 )

 【北京=五十嵐文】中国共産党機関紙・人民日報は17日、日本の新首相が「靖国神社」「尖閣諸島」「憲法」の三つの問題に真剣に取り組むべきだとする社説を掲載した。

 自民党の安倍総裁の名指しは避けているが、安倍氏に対し、靖国神社を参拝せず、尖閣諸島の公務員常駐や自衛隊を「国防軍」と位置づける憲法改正は行わないよう求める内容だ。

 社説では、安倍氏が衆院選で検討項目に掲げた「尖閣諸島への公務員常駐」を念頭に、「尖閣の(実効)支配を強化する試みはうまくいかない」と指摘。集団的自衛権の行使容認や憲法改正についても、「平和憲法の放棄は日本の前途を危うくする」と反対した。社説は、これらは中国があいまいにできない「原則」だと強調した。


 もしあなたが、中国の主張に対して「その通りだ」と思ったなら、次のブログ記事を読んでください。



ある女子大教授のつぶやき」の「尖閣について」( 2012.12.03 Monday )

1.終戦後、一億総懺悔と言ってすべて日本が悪かったから、中韓の言う事はすべて正しいとなり只管謝罪するだけだった事が間違っていた。これに便乗した左翼達の平和主義者も滑稽な運動を繰り返してきた。反戦平和運動は相手国や武力行使を公言する国にいうもので日本国内に向かっていうものではない。


 戦後日本の左翼運動の問題点が「わかりやすく」書かれています。

 私はこの文章を読んで、「こんなにわかりやすい説明はない」と思いました。たとえあなたが左よりであっても、これには納得するのではないかと思います。



 さて、私は中国が言っているのとは違う意味で、

 日本の新首相は「靖国神社」「尖閣諸島」「憲法」の三つの問題に真剣に取り組むべきだと思います。



 日本の首相が、日本のために戦って亡くなられた方々を弔うために「靖国神社」に参拝するのは当然ですし、

 日本の首相が、日本の領土を守るために防衛力強化や、「尖閣諸島」の実効支配強化を図ろうとするのも当然ですし、

 日本の首相が、日本と日本人を守るために「憲法」の改正を考えるのも当然だと思います。



 ところで、中国側の主張はいかなる内容なのでしょうか?

 引用します。



人民網日本語版」の「日本当局は「手のつけようのないごたごた」をどう収拾するか」( 2012年12月17日 )

 日本が普通の国となって、アジア各国との関係をしっかりと処理するには、歴史を反省し、罪責をそそぎ、衝動を自制し、言動を規範化することを学ばなければならない。

 日本の衆議院選挙の結果が公表された。自民党が単独過半数を獲得し、次期首相の人選が明らかになった。

 日本の次期首相が引き継ぐのは手のつけようのないごたごただ。このごたごたがどうやって出来上がったのかも、腹の底ではよくわかっているだろう。政治、経済、外交分野で自民党と民主党の間には牽制もあれば協働もある。どのようにして正しい歴史観としかるべき大局観によって、アジア隣国との関係を始めとする対外関係をうまく処理するかが、日本にとって特に重要だ。外交上の失敗は国内政治と経済発展に極めて大きな悪影響をもたらす。

 日本が厳粛に対応しなければならない3つの問題がある。

 第1に、靖国神社参拝問題だ。靖国神社は日本軍国主義が対外侵略戦争を発動した精神的道具であり、いまだにアジア被害国の人民を殺害した血腥い罪悪累々たる第2次大戦のA級戦犯の位牌を祀っている。靖国参拝問題は日本側が日本軍国主義による侵略の歴史を正しく認識し、正しく対応することができるか否か、中国を含む無数の被害国人民の感情を尊重できるか否かに関わる。日本側は歴史を正視し、反省し、「歴史を鑑として未来に向かう」精神にしっかりと基づき、歴史問題におけるその厳粛な姿勢表明と約束を恪守しなければならない。

 第2に、釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題だ。釣魚島およびその付属島嶼は、その領海と領空を含めて主権は中国に属すということを日本側ははっきりと認識しなければならない。日本は釣魚島海域、空域での不法活動を止めなければならない。今年に入り日本政府は釣魚島問題で絶えずもめ事を引き起こし、右翼勢力が騒動を引き起こすことを大目に見、「島購入」の茶番劇をあくまでも演じて、中日関係を谷底に陥れ、中日民間の正常な交流も深刻に破壊した。釣魚島に対する支配の強化を狙ったいかなる企ても思い通りになることはあり得ず、釣魚島カードを利用して国内民意の視線をそらそうとするいかなるやり方も、結局は自らをさらにがんじがらめにするということを、日本側ははっきりと認識しなければならない。

 第3に、平和憲法問題だ。しばらく前から、日本の一部政治屋は平和憲法と「非核三原則」の改正を積極的に図り、いわゆる集団的自衛権を鼓吹し、さらには自衛隊の国防軍への昇格を公然と主張してさえいる。日本は戦後国際秩序の束縛から脱して、政治、軍事面でいわゆる普通の国になろうと企んでいる。平和憲法は日本に対して平和改造を行う法的根拠であり、戦後60年余りの日本の発展を力強く保障したものでもあり、その法規は日本の前途を危険にさらすに等しいことを、日本側ははっきりと認識しなければならない。

 この3つの問題はいずれも根本的是非に関する原則的問題であり、いささかたりとも曖昧にすることは許されない。靖国参拝は世界反ファシズム戦争の勝利の成果に対する否定であり、領土帰属の改変は戦後国際秩序の取り決めを揺るがすものであり、平和憲法の改正はアジアの平和と安定に対する衝撃である。

 日本の一部政治屋の選挙時の言動は極めて無責任で、国内経済の低迷を利用して「右傾化」を煽動するものだった。自民党政権発足後、日本の極端な民族主義のムードと「右傾化」は一段と強まるのだろうか?これについて西側メディアを含む国際世論はすでに懸念を表明している。外部勢力に取り入って勝手に事を運ぶのは時代の潮流に反し、いかなる前途もない。中日関係が前進するのか後退するのかの、まさに正念場にある。中日両国は現在、外交交渉を通じて釣魚島の領有権争いに関する共通認識を立て直している。日本の新たな指導者が大局とアジアの長期的発展に立ち、紛争のエスカレートを回避し、共同で効果的に危機を管理・コントロールし、一刻も早く中日協力や地域協力など重大な議題に焦点を移すことを希望する。


 これに対する、私の意見は次の通りです。



 第1に、第二次大戦は侵略戦争という側面もあったかもしれないが、日本の軍部内部にも戦争に反対する勢力はあった。それにもかかわらず、なぜ、日本は戦ったのか。それは外国からの「不当な非難・圧迫」を受けたために、日本は戦わざるを得なかったからである。したがって日本は、反省しつつも歴史を正視し、「歴史を鑑として未来に向かう」精神にしっかりと基づき、歴史問題における中国側の不当な主張に対しては、厳粛に反論しなければならない。

 そして中国側は、歴史を正しく認識し、正しく対応するために、「南京大虐殺記念館」などの事実に反する展示をやめなければならない。中国側は、歴史を正視し、反省し、「歴史を鑑として未来に向かう」精神にしっかりと基づき、日本に対する「不当な非難・圧迫」をやめなければならない。



 第2に、尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題については、その領海と領空を含めて主権は日本に属すということを中国側ははっきりと認識しなければならない。これに不満・反論がある場合であっても、中国側は、日本に軍事的圧力をかけるのではなく、交渉によって解決しようとする姿勢を堅持しなければならない。天安門事件の際、中国当局は自国の人間、すなわち中国人を数千万人も虐殺・殺戮したといわれている。中国側は、虐殺・殺戮の事実を隠蔽することをやめ、事実を正視し、反省し、厳粛な姿勢表明を行ったうえで、再びこのような行動に出ないことを約束しなければならない。

 中国側がこのような態度を示してこそ、日中両国の友好は実現するのである。



 第3に、中国が本当に平和を希求するならば、中国側は「核兵器の放棄」を宣言し、実行すべきである。日本が核兵器を1つも保有していないにもかかわらず、中国のみが核兵器を大量に保有し、中国側が一方的に日本に対し、平和憲法と「非核三原則」の改正に反対し、阻止しようとする態度は、理解に苦しむ。このような中国側の態度は、日本に対する「不当な非難・圧迫」にほかならず、日中両国の平和を危うくすると同時に、中国の前途を危険にさらすに等しいことを、中国側ははっきりと認識しなければならない。

 また、中国側は、日本以外の諸国、すなわちインドやベトナム、フィリピンなどとの間に発生している領有権問題につき、パスポートに自国が主張する「中国の地図」を印刷するなどの行為を、即座に中止しなければならない。このような行為は、戦後の国際秩序を変えようとする企みに等しいことを、中国側は理解しなければならない。



 この3つの問題が示しているのは、中国側による歴史や事実の歪曲、隠蔽であり、中国側による独りよがりな態度である。そしてまた、アジアの平和と安定に対する危険である。

 中国の新たな指導者が大局とアジアの長期的発展に立ち、紛争のエスカレートを回避し、効果的に危機を管理・コントロールし、一刻も早く他国との協力や地域協力など重大な議題に焦点を移すことを希望する。

以上

憲法改正の可能性

2012-12-17 | 日記
 今回の衆院選で自民党が圧勝したことにより、憲法改正が現実味を帯びつつあります。

 現時点での憲法改正の可能性について考えてみました。



 普段このブログを読んでいないが、たまたま検索等でこの記事にたどりついた、という人のために、

 最初に、今日の別の記事「日本国憲法の改正条件は他国なみ」で引用したのと同じ報道を引用したうえで、意見を述べます。



朝日新聞」の「憲法改正規定緩和へ「維新と協力」 自民・安倍総裁」( 2012年12月16日23時57分 )

 自民党の安倍晋三総裁は16日夜のテレビ各局のインタビューで、衆院選で公約した憲法改正について「まず96条の(衆参両院で3分の2を必要とする)改正規定から変えようと考えている。3分の1をちょっと超える国会議員が反対すれば国民が指一本触れられないのはおかしい」と語った。

 安倍氏は、この方針について、ともに改憲を唱える日本維新の会が「理解していただいているのではないか。大きな方向で当然協力していきたい」と強調。ただ、「参院では3分の2にほど遠い。勢力の構築をどうしていくかよく考えないといけない」とも述べた。

 9条改正で自衛隊を軍隊と認め国防軍とすることに関しては「海外には自衛隊は軍だと説明している。この矛盾をなくすのは当然の義務だ」と述べた。


 まず、今回の衆院選の結果について調べます。



YOMIURI ONLINE」の「衆院選2012

にある開票結果によれば、当選者の多い順に、

   自民党  294議席
   民主党   57議席
   維新の会  54議席
   公明党   31議席

となっています (その他の政党については省略します) 。



 憲法改正のためには、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」が必要ですから、

 自民党単独では、「衆議院議員の定数480」の「3分の2」である「320議席」に及ばなかったものの、自民党は民主党・維新の会・公明党のいずれかの協力を得られれば、衆議院においては「3分の2」の条件を満たし、憲法改正の発議が可能になります。



 次に、参議院の状況について調べます。



参議院」の「会派別所属議員数一覧

によれば、「第181回国会(臨時会)(平成24年10月29日~平成24年11月16日)」の時点、すなわち現時点において、参議院議員は全部で236人、その「3分の2」は157・3333…ですから、158人以上の賛成があれば憲法改正の発議が可能になります。

 参議院における現時点の勢力状況は、

   民主党・新緑風会・国民新党 90議席
   自由民主党・無所属の会   83議席
   公明党           19議席

です。「細かいことは気にしない」方針で「新緑風会・国民新党」「無所属の会」については無視する (全員民主党または自民党であるとして考える) と、

   民主党   90議席
   自民党   83議席
   公明党   19議席

となります。

 したがって参議院では、自民党は民主党の協力が得られなければ、憲法改正の発議は行えないことがわかります。(細かいことは気にしないで計算していますが、状況を的確に捉えていると思います)



 以上をまとめると、

 憲法改正の発議のためには、衆議院と参議院、それぞれで3分の2以上の賛成が必要ですから、

 自民党の安倍総裁は維新の会との協力について述べていますが、

 憲法を改正するためには、自民党は民主党の協力を得なければならないことになります。

 もちろん来年の参院選のあとなら話は別です。議員が入れ替わるからです。

日本国憲法の改正条件は他国なみ

2012-12-17 | 日記
 今回の衆院選で自民党が圧勝したことにより、憲法改正が現実味を帯びつつあります。



朝日新聞」の「憲法改正規定緩和へ「維新と協力」 自民・安倍総裁」( 2012年12月16日23時57分 )

 自民党の安倍晋三総裁は16日夜のテレビ各局のインタビューで、衆院選で公約した憲法改正について「まず96条の(衆参両院で3分の2を必要とする)改正規定から変えようと考えている。3分の1をちょっと超える国会議員が反対すれば国民が指一本触れられないのはおかしい」と語った。

 安倍氏は、この方針について、ともに改憲を唱える日本維新の会が「理解していただいているのではないか。大きな方向で当然協力していきたい」と強調。ただ、「参院では3分の2にほど遠い。勢力の構築をどうしていくかよく考えないといけない」とも述べた。

 9条改正で自衛隊を軍隊と認め国防軍とすることに関しては「海外には自衛隊は軍だと説明している。この矛盾をなくすのは当然の義務だ」と述べた。




 他国の憲法改正の条件がどうなっているのか、調べてみました。その結果、

 安倍総裁は「3分の1をちょっと超える国会議員が反対すれば国民が指一本触れられないのはおかしい」ので「まず96条の(衆参両院で3分の2を必要とする)改正規定から変えようと考えている」と言っていますが、

 日本国憲法の改正条件は「他国なみ」であり、「とくに厳しい」というわけではないことがわかりました。

 このことをもって、安倍総裁の考えかたが「おかしい」とはいえませんが、「正しい」とも言い切れないように思います。



All About」の「世界の憲法改正手続比較」( 更新日:2007年05月10日 )

の内容をまとめると、次のようになります。



★日本
  国会の3分の2以上の多数による発議と、国民投票による過半数の賛成が必要

★イギリス
  特に特別な多数決は必要なく、単純過半数の多数決でよい
   ( 成文憲法がないので法改正の場合と同じ条件 )

★アメリカ
   連邦議会の両院で3分の2以上の賛成で憲法改正を発議し、州議会の4分の3が承認するか、または憲法会議で4分の3の州の賛成があればよい。

★カナダ
  連邦議会の上院・下院の議決と、3分の2以上の州議会の議決(ただし議決した州人口が全体の過半数あること)

★ロシア
  連邦議会上院の4分の3、下院の3分の2が承認し、さらに共和国・州・地方などの連邦構成体議会の3分の2の承認

★ドイツ
  憲法(基本法)は国会両院(連邦議会・連邦参議院)の3分の2以上の多数で改正

★オーストラリア
  連邦議会両院の過半数で可決した後、各州(凖州ふくむ)の州民投票を行い、過半数の州で賛成し、かつ国民投票で全選挙人の過半数の賛成が得られたとき
   ( 今までにないものや、法律中の重要規定を「憲法規定」とすることは、連邦議会両院の3分の2以上の多数のみで行える )

★スイス
  原則として連邦議会の議決のみでよい。ただし、両院のいずれかが改正に同意しなかった場合、または10万人以上の有権者が全面改正を要求した場合は、国民投票を行い、過半数が改正に賛成した場合、新たに両院を選挙しその上で改正審議を行う

★韓国
  国会(一院制)の3分の2以上の多数による議決と、国民投票による過半数の賛成

★デンマーク
  国会(一院制)が改正案を議決した場合、まず国会の総選挙が行われ、総選挙後の国会で改正案を無修正で再議決し、かつ、国民投票で投票数の過半数の賛成かつ全有権者の40%以上の賛成

★スペイン
  基本的に国会両院のそれぞれ5分の3以上の賛成が必要。ただし上院が絶対多数で議決すれば、下院で3分の2以上の賛成があればよい。ただし憲法の全面改正、人権規定、その他特定の重要規定については、両院の3分の2以上の多数の議決と、解散・選挙後の新国会で再び両院の3分の2以上の多数で議決が必要。どちらの場合も国民投票で過半数の賛成も必要。

★フランス
  基本的には国会(二院制)による過半数の議決ののち、国民投票による過半数の承認でよい。ただし政府が提出した改正案は、大統領が国会を両院合同会議として召集し、ここで改正案を審議することにしたときは、国民投票は行われず、国会の5分の3の賛成で改正が成立する。

★スウェーデン
  国会(一院制)が議決し、国会の総選挙を行い、再び新しい国会での議決が必要。国会議員の10分の1が改正案を国民投票にかける動議を提案し、これに議員の3分の1以上が応じた場合は、国民投票が行われる。

★ベルギー
  連邦議会(二院制)による憲法改正の宣言の後、両議院は解散・総選挙を行い、次の国会で両議院の3分の2以上の多数による可決が必要。ただし審議には常に総議員の3分の2が出席していなければならず、また、戦争中など国家の危機状態の時には改正は不可。

★フィンランド
  一院制の議会で過半数の賛成により改正案を議決した後、選挙を行い、新しい議会で3分の2以上の賛成が必要。

★オランダ
  下院が改正案を議決し、下院は改正案を過半数で議決した後に解散し、解散後の国会で両院の3分の2の賛成が必要。

「原発の危険度」の評価方法

2012-12-16 | 日記
 「原発の危険度」を評価する方法 (数値で評価する方法) を思いついたので、公開します。

 ここで私のいう「原発の危険度」とは、「個々の原発の危険度」ではなく、「原発一般の危険度」です。



ある女子大教授の つぶやき」の「原発と向き合う」( 2012.12.11 Tuesday )

1.この世界にリスクがゼロなどというものは存在しない。リスクは左右対称で、チャンスともなりうる。好機チャンスを掴むためには危険リスクを伴うのは当然だ。ただリスクを極限にまでゼロにすることは可 能だ。頭から原発を否定するのではなくて、どこまでも危険度をゼロに近付けることは可能だ。

(中略)

3.活断層の調査が大飯では詳細に行われているが結論を出すには至っていない。要するに地震研究最先端の日本の学者でも、何が活断層なのか分かってはいない。ただどこでも大地震は起きる可能性があると地震学会でも認めている。だから、例え起きても新幹線は止まり、原発の冷却機能が維持される仕組みこそ基本的に重要なことだ。地震発生の初期段階で新幹線も原発も停止させる技術は確立されている。新幹線は停止すればそれでいいが、原発は発電を停止すれば済む問題ではない。その後、冷却水をかけ続ける仕組みを何段階にも積み上げる必要がある。東電はこれに失敗した。


 一般論としていえば、技術とは、事故との闘いを通じて進歩していくものだと思います。

 事故が起きた以上、その技術は「やめる」というのでは、いま、(たとえば) 飛行機は存在していないでしょう。飛行機は、墜落による死者を出しつつも、少しずつ安全性が高められてきているのではないでしょうか。

 この一般論を原子力発電所にあてはめれば、事故が起こったからといって、原発をやめるのは「おかしい」ということになります。

 しかしながら、原発の場合、いったん事故が起こってしまえば「被害は甚大」ですし、人々は「見えない恐怖」と闘わざるを得なくなります。

 とすれば、原発はやめたほうがよいのではないか、とも考えられます。



 けれども、過去数十年間、現実問題として原子力発電所での (重大な) 事故は「きわめて稀」です。

 飛行機の墜落回数に比べれば、「はるかに少ない」ことは間違いないと思います。



 したがって、「大きな被害」に着目すれば原発反対、「小さな確率」に着目すれば原発推進(または維持)に傾きます。

 ここで「どちらを重視するか」という判断は、それぞれの人の立場 (原発近隣住民・技術者などの立場) や価値観 (安全重視・経済重視などの価値観) によって異なってきます。

 したがって、これでは客観的で公平な判断は難しいと思われます。



 そこで、「原発の危険度」を評価する方法が必要になってきます。

 次に、私が思いついた評価方法を説明します。



 おそらく高校で習う「数学の確率」には、「期待値」という概念があり、期待値は

  (期待値)
    = (事象の起こる確率) × (事象が起きたときに得られる利益)

という式で求められます。この発想を原発の事故に適用すると、次のようになります。ただ、「原発事故の期待値」という言いかたは事故を期待しているかのような誤解を与えかねないので、「原発の危険性」という表現にしています。

  (原発の危険性)
    = (事故の起こる確率) × (事故が起きたときの被害の大きさ)



 さて。

 この式に、「原発では(重大な)事故が起きる確率は小さい」という事実と、「いったん事故が起きれば被害は大きくなる」という事実をあてはめれば (代入すれば) 、次の結果が得られます。

  (原発の危険性)
    = (小さな確率) × (大きな被害)

 小さい数値と大きい数値を「掛け算」した場合、値が大きくなるのか小さくなるのかは、具体的な数値がわからないと何ともいえません。「掛け算」に代入する数値次第で、結果である「原発の危険性」の値は、大きくもなれば、小さくもなります。

 原発反対論は、主として「大きな被害」に着目するものであり、原発推進論は、主として「小さな確率」に着目するものだといえますが、

 両者をバランスさせて考えればどうなるか、どう考えるのが適切なのか、すなわち「原発の危険性」をどう評価すべきなのかは、「掛け算」である以上、具体的な数値がわからないと何ともいえない、というのが正直なところです。



 そこで、具体的な数値を得る方法を考えます。これは次のように考えればよいと思います。

 「事故の起こる確率」の値としては、(すべての原発について) 過去に原発で起きた重大事故の件数を、原発が稼働している期間で割った値 (割り算) を用います。

 「事故が起きたときの被害の大きさ」の値としては、福島第一原発の補償の総額 (金額) に除染費用などを加えたものを用います。いまのところ金額はまだ確定しておらず、正確にはわからないため、代わりに予想されている金額 (概算) を用います。

 そして、この計算によって得られた数値を、それぞれ、「事故の起こる確率」「事故が起きたときの被害の大きさ」の値として代入し、「原発の危険性」の値 (数値) を得れば、

 同様の方法によって計算した「飛行機の危険性」や「自動車の危険性」などとの比較で、「原発の危険性」が特別高いものなのか否かがわかりますから、

 「原発廃止か原発維持か」を判断するうえで有益な資料・情報になるはずです。



 実際に計算・比較すればどうなるか、気になりますが、

 私はこれらの数値 (危険性の値) を計算するためのデータをもっていないので、私が書けるのはここまで (考えかたのみ) です。



■関連記事
 「「核のゴミ」問題を解決する分離変換技術
 「原発問題の解決策

領土問題を考えるための条約等

2012-12-15 | 日記
 領土問題を考える資料として、次の資料を引用しています。



★目次 (ページ内リンクを張っています。時系列順)
  1. カイロ宣言
  2. ポツダム宣言
  3. 連合軍最高司令部訓令(SCAPIN)第677号
  4. 連合軍最高司令部訓令(SCAPIN)第1033号
  5. 日本国との平和条約 (サンフランシスコ平和条約)




 

★カイロ宣言



1943年 (昭和18年) 11月22日
  カイロ会談

同年12月1日
  カイロ宣言 (日本国に関する英、米、華三国宣言) を発表



国立国会図書館・日本国憲法の誕生」の「Cairo Communique

President Roosevelt, Generalissimo Chiang Kai-shek and Prime Minister Mr. Churchill, together with their respective military and diplomatic advisers, have completed a conference in North Africa.

The following general statement was issued:

"The several military missions have agreed upon future military operations against Japan. The Three Great Allies expressed their resolve to bring unrelenting pressure against their brutal enemies by sea, land, and air. This pressure is already rising.

"The Three Great Allies are fighting this war to restrain and punish the aggression of Japan. They covet no gain for themselves and have no thought of territorial expansion. It is their purpose that Japan shall be stripped of all the islands in the Pacific which she has seized or occupied since the beginning of the first World War in 1914, and that all the territories Japan has stolen from the Chinese, such as Manchuria, Formosa, and The Pescadores, shall be restored to the Republic of China. Japan will also be expelled from all other territories which she has taken by violence and greed. The aforesaid three great powers, mindful of the enslavement of the people of Korea, are determined that in due course Korea shall become free and independent.

"With these objects in view the three Allies, in harmony with those of the United Nations at war with Japan, will continue to persevere in the serious and prolonged operations necessary to procure the unconditional surrender of Japan."

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以下は上記文書の日本語訳です(一部、翻訳されていません)。「日本外交年表並主要文書」下巻、外務省編(1966)から転載しました。

「ローズヴェルト」大統領、蒋介石大元帥及「チャーチル」総理大臣ハ、各自ノ軍事及外交顧問ト共ニ北「アフリカ」ニ於テ会議ヲ終了シ左ノ一般的声明ヲ発セラレタリ

各軍事使節ハ日本国ニ対スル将来ノ軍事行動ヲ協定セリ
三大同盟国ハ海路陸路及空路ニ依リ其ノ野蛮ナル敵国ニ対シ仮借ナキ弾圧ヲ加フルノ決意ヲ表明セリ右弾圧ハ既ニ増大シツツアリ
三大同盟国ハ日本国ノ侵略ヲ制止シ且之ヲ罰スル為今次ノ戦争ヲ為シツツアルモノナリ右同盟国ハ自国ノ為ニ何等ノ利得ヲモ欲求スルモノニ非ス又領土拡張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ス
右同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ
日本国ハ又暴力及貧慾ニ依リ日本国ノ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルヘシ

前記三大国ハ朝鮮ノ人民ノ奴隷状態ニ留意シ軈テ朝鮮ヲ自由且独立ノモノタラシムルノ決意ヲ有ス
右ノ目的ヲ以テ右三同盟国ハ同盟諸国中日本国ト交戦中ナル諸国ト協調シ日本国ノ無条件降伏ヲ齎スニ必要ナル重大且長期ノ行動ヲ続行スヘシ」




 

★ポツダム宣言
  ( The Potsdam Declaration )



1945年(昭和20年)8月14日
  日本政府、ポツダム宣言の受諾を連合国側に通告

同年8月15日
  日本政府、ポツダム宣言の受諾を国民に発表(玉音放送)

同年9月2日
  日本政府代表と連合各国代表、ポツダム宣言の履行を定めた降伏文書(休戦協定)に調印



国立国会図書館・日本国憲法の誕生」の「ポツダム宣言

千九百四十五年七月二十六日
米、英、支三国宣言
(千九百四十五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ)

一、吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート・ブリテン」国総理大臣ハ吾等ノ数億ノ国民ヲ代表シ協議ノ上日本国ニ対シ今次ノ戦争ヲ終結スルノ機会ヲ与フルコトニ意見一致セリ

二、合衆国、英帝国及中華民国ノ巨大ナル陸、海、空軍ハ西方ヨリ自国ノ陸軍及空軍ニ依ル数倍ノ増強ヲ受ケ日本国ニ対シ最後的打撃ヲ加フルノ態勢ヲ整ヘタリ右軍事力ハ日本国カ抵抗ヲ終止スルニ至ル迄同国ニ対シ戦争ヲ遂行スルノ一切ノ連合国ノ決意ニ依リ支持セラレ且鼓舞セラレ居ルモノナリ

三、蹶起セル世界ノ自由ナル人民ノ力ニ対スル「ドイツ」国ノ無益且無意義ナル抵抗ノ結果ハ日本国国民ニ対スル先例ヲ極メテ明白ニ示スモノナリ現在日本国ニ対シ集結シツツアル力ハ抵抗スル「ナチス」ニ対シ適用セラレタル場合ニ於テ全「ドイツ」国人民ノ土地、産業及生活様式ヲ必然的ニ荒廃ニ帰セシメタル力ニ比シ測リ知レサル程更ニ強大ナルモノナリ吾等ノ決意ニ支持セラルル吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スヘク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スヘシ

四、無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国カ引続キ統御セラルヘキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国カ履ムヘキカヲ日本国カ決意スヘキ時期ハ到来セリ

五、吾等ノ条件ハ左ノ如シ
吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ右ニ代ル条件存在セス吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス

六、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス

七、右ノ如キ新秩序カ建設セラレ且日本国ノ戦争遂行能力カ破砕セラレタルコトノ確証アルニ至ルマテハ聯合国ノ指定スヘキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スルタメ占領セラルヘシ

八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ

九、日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルヘシ

十、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ

十一、日本国ハ其ノ経済ヲ支持シ且公正ナル実物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルカ如キ産業ヲ維持スルコトヲ許サルヘシ但シ日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムルカ如キ産業ハ此ノ限ニ在ラス右目的ノ為原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ区別ス)ヲ許可サルヘシ日本国ハ将来世界貿易関係ヘノ参加ヲ許サルヘシ

十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ

十三、吾等ハ日本国政府カ直ニ全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス

(出典:外務省編『日本外交年表並主要文書』下巻 1966年刊)




 

★連合軍最高司令部訓令(SCAPIN)第677号



1946年 (昭和21年) 1月29日
  指令



外務省」の「SCAPIN第677号」(英語)

Wikipedia」の「SCAPIN」(日本語訳)

連合軍最高司令部訓令(SCAPIN)第677号
1946年1月29日

1 日本国外の総ての地域に対し、又その地域にある政府役人、雇傭員その他総ての者に対して、政治上又は行政上の権力を行使すること、及、行使しようと企てることは総て停止するよう日本帝国政府に指令する。

2 日本帝国政府は、巳に認可されている船舶の運航、通信、気象関係の常軌の作業を除き、当司令部から認可のない限り、日本帝国外の政府の役人、雇傭人其の他総ての者との間に目的の如何を問わず、通信を行うことは出来ない。

3 この指令の目的から日本と言ふ場合は次の定義による。

日本の範囲に含まれる地域として

日本の四主要島嶼(北海道、本州、四国、九州)と、対馬諸島、北緯30度以北の琉球(南西)諸島(口之島を除く)を含む約1千の隣接小島嶼

日本の範囲から除かれる地域として

(a)欝陵島、竹島、済州島。(b)北緯30度以南の琉球(南西)列島(口之島を含む)、伊豆、南方、小笠原、硫黄群島、及び大東群島、沖ノ鳥島、南鳥島、中ノ鳥島を含むその他の外廓太平洋全諸島。(c)千島列島、歯舞群島(水晶、勇留、秋勇留、志発、多楽島を含む)、色丹島。

4 更に、日本帝国政府の政治上行政上の管轄権から特に除外せられる地域は次の通りである。

(a)1914年の世界大戦以来、日本が委任統治その他の方法で、奪取又は占領した全太平洋諸島。(b)満洲、台湾、澎湖列島。(c)朝鮮及び(d)樺太。

5 この指令にある日本の定義は、特に指定する場合以外、今後当司令部から発せられるすべての指令、覚書又は命令に適用せられる。

6 この指令中の条項は何れも、ポツダム宣言の第8条にある小島嶼の最終的決定に関する連合国側の政策を示すものと解釈してはならない。

7 日本帝国政府は、日本国内の政府機関にして、この指令の定義による日本国外の地域に関する機能を有する総てのものの報告を調整して当指令部に提出することを要する。この報告は関係各機関の機能、組織及職員の状態を含まなくてはならない。

8 右第7項に述べられた機関に関する報告は、総てこれを保持し何時でも当司令部の検閲を受けられるようにしておくことを要する。




 

★連合軍最高司令部訓令(SCAPIN)第1033号



1946年 (昭和21年) 6月22日
  指令



外務省」の「SCAPIN第1033号」(英語)

Wikipedia」の「SCAPIN」(日本語訳)

SCAPIN  1033
1946年6月22日
主題:日本の漁業と捕鯨に認可される区域。

3.
(b) 日本の船またはその人員は、竹島(北緯37°15′、東経131°53′)へ12マイルより近くに接近しない、またその島とのいかなる接触もしない。

5. この認可は、関係する区域や他のどの区域の国の管轄権・国境・漁業権の最終的な決定に係わる連合国の政策の表明ではない。




 

★日本国との平和条約 (サンフランシスコ平和条約)
   ( TREATY OF PEACE WITH JAPAN )



1951年 (昭和26年) 9月8日
  サン・フランシスコ市で署名

1952年 (昭和27年) 4月28日
  効力発生



東京大学東洋文化研究所」の「サンフランシスコ平和条約(日本国との平和条約)

 連合国及び日本国は、両者の関係が、今後、共通の福祉を増進し且つ国際の平和及び安全を維持するために主権を有する対等のものとして友好的な連携の下に協力する国家の間の関係でなければならないことを決意し、よつて、両者の間の戦争状態の存在の結果として今なお未決である問題を解決する平和条約を締結することを希望するので、

 日本国としては、国際連合への加盟を申請し且つあらゆる場合に国際連合憲章の原則を遵守し、世界人権宣言の目的を実現するために努力し、国際連合憲章第五十五条及び第五十六条に定められ且つ既に降伏後の日本国の法制によつて作られはじめた安定及び福祉の条件を日本国内に創造するために努力し、並びに公私の貿易及び通商において国際的に承認された公正な慣行に従う意思を宣言するので、

 連合国は、前項に掲げた日本国の意思を歓迎するので、

 よつて、連合国及び日本国は、この平和条約を締結することに決定し、これに応じて下名の全権委員を任命した。これらの全権委員は、その全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の規定を協定した。

  第一章 平和

   第一条

 (a) 日本国と各連合国との間の戦争状態は、第二十三条の定めるところによりこの条約が日本国と当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する。

 (b) 連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。

  第二章 領域

   第二条

 (a) 日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 (b) 日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 (c) 日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 (d) 日本国は、国際連盟の委任統治制度に関連するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、且つ、以前に日本国の委任統治の下にあつた太平洋の諸島に信託統治制度を及ぼす千九百四十七年四月二日の国際連合安全保障理事会の行動を受諾する。

 (e) 日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。

 (f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

   第三条

 日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。

   第四条

 (a) この条の(b)の規定を留保して、日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる地域にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の施政を行つている当局及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする。第二条に掲げる地域にある連合国又はその国民の財産は、まだ返還されていない限り、施政を行つている当局が現状で返還しなければならない。(国民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。)

 (b) 日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従つて行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。

 (c) 日本国とこの条約に従つて日本国の支配から除かれる領域とを結ぶ日本所有の海底電線は、二等分され、日本国は、日本の終点施設及びこれに連なる電線の半分を保有し、分離される領域は、残りの電線及びその終点施設を保有する。

  第三章 安全

   第五条

 (a) 日本国は、国際連合憲章第二条に掲げる義務、特に次の義務を受諾する。

  (i)その国際紛争を、平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決すること。

  (ii)その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこと。

  (iii)国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと。

 (b) 連合国は、日本国との関係において国際連合憲章第二条の原則を指針とすべきことを確認する。

 (c) 連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。

  第六条

 (a) 連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん{前2文字強調}又は駐留を妨げるものではない。

 (b) 日本国軍隊の各自の家庭への復帰に関する千九百四十五年七月二十六日のポツダム宣言の第九項の規定は、まだその実施が完了されていない限り、実行されるものとする。

 (c) まだ代価が支払われていないすべての日本財産で、占領軍の使用に供され、且つ、この条約の効力発生の時に占領軍が占有しているものは、相互の合意によつて別段の取極が行われない限り、前期の九十日以内に日本国政府に返還しなければならない。

  第四章 政治及び経済条項

  第七条

 (a) 各連合国は、自国と日本国との間にこの条約が効力を生じた後一年以内に、日本国との戦前のいずれの二国間の条約又は協約を引き続いて有効とし又は復活させることを希望するかを日本国に通告するものとする。こうして通告された条約又は協約は、この条約に適合することを確保するための必要な修正を受けるだけで、引き続いて有効とされ、又は復活される。こうして通告された条約及び協約は、通告の日の後三箇月で、引き続いて有効なものとみなされ、又は復活され、且つ、国際連合事務局に登録されなければならない。日本国にこうして通告されないすべての条約及び協約は、廃棄されたものとみなす。

 (b) この条の(a)に基いて行う通告においては、条約又は協約の実施又は復活に関し、国際関係について通告国が責任をもつ地域を除外することができる。この除外は、除外の適用を終止することが日本国の通告される日の三箇月後まで行われるものとする。

   第八条

 (a) 日本国は、連合国が千九百三十九年九月一日に開始された戦争状態を終了するために現に締結し又は今後締結するすべての条約及び連合国が平和の回復のため又はこれに関連して行う他の取極の完全な効力を承認する。日本国は、また、従前の国際連盟及び常設国際司法裁判所を終止するために行われた取極を受諾する。

 (b) 日本国は、千九百十九年九月十日のサン・ジェルマン=アン=レイの諸条約及び千九百三十六年七月二十日のモントルーの海峡条約の署名国であることに由来し、並びに千九百二十三年七月二十四日にローザンヌで署名されたトルコとの平和条約の第十六条に由来するすべての権利及び利益を放棄する。

 (c) 日本国は、千九百三十年一月二十日のドイツと債権国との間の協定及び千九百三十年五月十七日の信託協定を含むその附属書並びに千九百三十年一月二十日の国際決済銀行に関する条約及び国際決済銀行の定款に基いて得たすべての権利、権原及び利益を放棄し、且つ、それらから生ずるすべての義務を免かれる。日本国は、この条約の最初の効力発生の後六箇月以内に、この項に掲げる権利、権原及び利益の放棄をパリの外務省に通告するものとする。

   第九条

 日本国は、公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定を締結するために、希望する連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。

   第十条

 日本国は、千九百一年九月七日に北京で署名された最終議定書並びにこれを補足するすべての附属書、書簡及び文書の規定から生ずるすべての利得及び特権を含む中国におけるすべての特殊の権利及び利益を放棄し、且つ、前期の議定書、附属書、書簡及び文書を日本国に関して廃棄することに同意する。

   第十一条

 日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている物を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。

   第十二条

 (a) 日本国は、各連合国と、貿易、海運その他の通商の関係を安定した且つ友交的な基礎の上におくために、条約又は協定を締結するための交渉をすみやかに開始する用意があることを宣言する。

 (b) 該当する条約又は協定が締結されるまで、日本国は、この条約の最初の効力発生の後四年間、

  (1)各連合国並びにその国民、産品及び船舶に次の待遇を与える。

    (i)貨物の輸出入に対する、又はこれに関連する関税、課金、制限その他の規制に関する最恵国待遇

    (ii)海運、航海及び輸入貨物に関する内国民待遇並びに自然人、法人及びその利益に関する内国民待遇。この待遇は、税金の賦課及び徴収、裁判を受けること、契約の締結及び履行、財産権(有体財産及び無体財産に関するもの)、日本国の法律に基いて組織された法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業活動及び職業活動の遂行に関するすべての事項を含むものとする。

  (2)日本国の国営商企業の国外における売買が商業的考慮にのみ基くことを確保する。

 (c) もつとも、いずれの事項に関しても、日本国は、連合国が当該事項についてそれぞれ内国民待遇又は最恵国待遇を日本国に与える限定においてのみ、当該連合国に内国民待遇又は最恵国待遇を与える義務を負うものとする。前段に定める相互主義は、連合国の非本土地域の産品、船舶、法人及びそこに住所を有する人の場合並びに連邦政府をもつ連合国の邦又は州の法人及びそこに住所を有する人の場合には、その地域、邦又は州において日本国に与えられる待遇に照らして決定される。

 (d) この条の適用上、差別的措置であつて、それを適用する当事国の通商条約に通常規定されている例外に基くもの、その当事国の対外的財政状態若しくは国際収支を保護する必要に基くもの(海運及び航海に関するものを除く。)又は重大な安全上の利益を維持する必要に基くものは、事態に相応しており、且つ、ほしいままな又は不合理な方法で適用されない限り、それぞれ内国民待遇又は最恵国待遇の許与を害するものと認めてはならない。

 (e) この条に基く日本国の義務は、この条約の第十四条に基く連合国の権利の行使によつて影響されるものではない。また、この条の規定は、この条約の第十五条によつて日本国が引き受ける約束を制限するものと了解してはならない。

   第十三条

 (a) 日本国は、国際民間航空運送に関する二国間又は多数国間の協定を締結するため、一又は二以上の連合国の要請があつたときはすみやかに、当該連合国と交渉を開始するものとする。

 (b) 一又は二以上の前期の協定が締結されるまで、日本国は、この条約の最初の効力発生の時から四年間、この効力発生の日にいずれかの連合国が行使しているところよりも不利でない航空交通の権利及び特権に関する待遇を当該連合国に与え、且つ、航空業務の運営及び発達に関する完全な機会均等を与えるものとする。

 (c) 日本国は、国際民間航空条約第九十三条に従つて同条約の当事国となるまで、航空機の国際航空に適用すべきこの条約の規定を実施し、且つ、同条約の条項に従つて同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続を実施するものとする。

  第五章 請求権及び財産

   第十四条

 (a) 日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべきことが承認される。しかし、また、存立可能な経済を維持すべきものとすれば、日本国の資源は、日本国がすべての前記の損害又は苦痛に対して完全な賠償を行い且つ同時に他の債務を履行するためには現在充分でないことが承認される。

 よつて、

  1 日本国は、現在の領域が日本国軍隊によつて占領され、且つ、日本国によつて損害を与えられた連合国が希望するときは、生産、沈船引揚げその他の作業における日本人の役務を当該連合国の利用に供することによつて、与えた損害を修復する費用をこれらの国に補償することに資するために、当該連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。その取極は、他の連合国に追加負担を課することを避けなければならない。また、原材料からの製造が必要とされる場合には、外国為替上の負担を日本国に課さないために、原材料は、当該連合国が供給しなければならない。

  2(I) 次の(II)の規定を留保して、各連合国は、次に掲げるもののすべての財産、権利及び利益でこの条約の最初の効力発生の時にその管轄の下にあるものを差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を有する。

  (a)日本国及び日本国民

  (b)日本国又は日本国民の代理者又は代行者

並びに

  (c)日本国又は日本国民が所有し、又は支配した団体

   この(I)に明記する財産、権利及び利益は、現に、封鎖され、若しくは所属を変じており、又は連合国の敵産管理当局の占有若しくは管理に係るもので、これらの資産が当該当局の管理の下におかれた時に前記の(a)、(b)又は(c)に掲げるいずれかの人又は団体に属し、又はこれらのために保有され、若しくは管理されていたものを含む。

 (II)次のものは、前記の(I)に明記する権利から除く。

  (i)日本国が占領した領域以外の連合国の一国の領域に当該政府の許可を得て戦争中に居住した日本の自然人の財産。但し、戦争中に制限を課され、且つ、この条約の最初の効力発生の日にこの制限を解除されない財産を除く。

  (ii)日本国政府が所有し、且つ、外交目的又は領事目的に使用されたすべての不動産、家具及び備品並びに日本国の外交職員又は領事職員が所有したすべての個人の家具及び用具類その他の投資的性質をもたない私有財産で外交機能又は領事機能の遂行に通常必要であつたもの

  (iii)宗教団体又は私的慈善団体に属し、且つ、もつぱら宗教又は慈善の目的に使用した財産

  (iv)関係国と日本国との間における千九百四十五年九月二日後の貿易及び金融の関係の再開の結果として日本国の管轄内にはいつた財産、権利及び利益。但し、当該連合国の法律に反する取引から生じたものを除く。

  (v)日本国若しくは日本国民の債務、日本国に所在する有体財産に関する権利、権原若しくは利益、日本国の法律に基いて組織された企業に関する利益又はこれらについての証書。但し、この例外は、日本国の通貨で表示された日本国及びその国民の債務にのみ適用する。

 (III)前記の例外から(i)から(v)までに掲げる財産は、その保存及び管理のために要した合理的な費用が支払われることを条件として、返還されなければならない。これらの財産が清算されているときは、代りに売得金を返還しなければならない。

 (IV)前記の(I)に規定する日本財産を差し押え、留置し、清算し、その他何らの方法で処分する権利は、当該連合国の法律に従つて行使され、所有者は、これらの法律によつて与えられる権利のみを有する。

 (V)連合国は、日本の商標並びに文学的及び美術的著作権を各国の一般的事情が許す限り日本国に有利に取り扱うことに同意する。

 (b)この条約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとつた行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。

   第十五条

 (a) この条約が日本国と当該連合国との間に効力を生じた後九箇月以内に申請があつたときは、日本国は、申請の日から六箇月以内に、日本国にある各連合国及びその国民の有体財産及び無体財産並びに種類のいかんを問わずすべての権利又は利益で、千九百四十一年十二月七日から千九百四十五年九月二日までの間のいずれかの時に日本国内にあつたものを返還する。但し、所有者が強迫又は詐欺によることなく自由にこれらを処分した場合は、この限りではない。この財産は、戦争があつたために課せられたすべての負担及び課金を免除して、その返還のための課金を課さずに返還しなければならない。所有者により若しくは所有者のために又は所有者の政府により所定の期間内に返還が申請されない財産は、日本国政府がその定めるところに従つて処分することができる。この財産が千九百四十一年十二月七日に日本国に所在し、且つ、返還することができず、又は戦争の結果として損傷若しくは損害を受けている場合には、日本国内閣が千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める条件よりも不利でない条件で補償される。

 (b) 戦争中に侵害された工業所有権については、日本国は、千九百四十九年九月一日施行の政令第三百九号、千九百五十年一月二十八日施行の政令第十二号及び千九百五十年二月一日施行の政令第九号(いずれも改正された現行のものとする。)によりこれまで与えられたところよりも不利でない利益を引き続いて連合国及びその国民に与えるものとする。但し、前記の国民がこれらの政令に定められた期限までにこの利益の許与を申請した場合に限る。

 (c)(i)日本国は、公にされ及び公にされなかつた連合国及びその国民の著作物に関して千九百四十一年十二月六日に日本国に存在した文学的及び美術的著作権がその日以後引き続いて効力を有することを認め、且つ、その日に日本国が当事国であつた条約又は協定が戦争の発生の時又はその時以後日本国又は当該連合国の国内法によつて廃棄され又は停止されたかどうかを問わず、これらの条約及び協定の実施によりその日以後日本国において生じ、又は戦争がなかつたならば生ずるはずであつた権利を承認する。

 (ii)権利者による申請を必要とすることなく、且つ、いかなる手数料の支払又は他のいかなる手続もすることなく、千九百四十一年十二月七日から日本国と当該連合国との間にこの条約が効力を生ずるまでの期間は、これらの権利の通常期間から除算し、また、日本国において翻訳権を取得するために文学的著作物が日本語に翻訳されるべき期間からは、六箇月の期間を追加して除算しなければならない。

   第十六条

 日本国の捕虜であつた間に不当な苦難を被つた連合国軍隊の構成員に償いをする願望の表現として、日本国は、戦争中中立であつた国にある又は連合国のいずれかと戦争していた国にある日本国及びその国民の資産又は、日本国が選択するときは、これらの資産と等価のものを赤十字国際委員会に引き渡すものとし、同委員会は、これらの資産を清算し、且つ、その結果生ずる資金を、同委員会が衡平であると決定する基礎において、捕虜であつた者及びその家族のために、適当な国内機関に対して分配しなければならない。この条約の第十四条(a)2(II)の(ii)から(v)までに掲げる種類の資産は、条約の最初の効力発生の時に日本国に居住しない日本の自然人の資産とともに、引渡しから除外する。またこの条の引渡規定は、日本国の金融機関が現に所有する一万九千七百七十株の国際決済銀行の株式には適用がないものと了解する。

   第十七条

 (a) いずれかの連合国の要請があつたときは、日本国政府は、当該連合国の国民の所有権に関係のある事件に関する日本国の捕獲審検所の決定又は命令を国際法に従い再審査して修正し、且つ、行われた決定及び発せられた命令を含めて、これらの事件の記録を構成するすべての文書の写を提供しなければならない。この再審査又は修正の結果、返還すべきことが明らかになつた場合には、第十五条の規定を当該財産に適用する。

 (b) 日本国政府は、いずれかの連合国の国民が原告又は被告として事件について充分な陳述ができなかつた訴訟手続において、千九百四十一年十二月七日から日本国と当該連合国との間にこの条約が効力を生ずるまでの期間に日本国の裁判所が行なつた裁判を、当該国民が前記の効力発生の後一年以内にいつでも適当な日本国の機関に再審査のため提出することができるようにするために、必要な措置をとらなければならない。日本国政府は、当該国民が前記の裁判の結果損害を受けた場合には、その者をその裁判が行われる前の地位に回復するようにし、又はその者にそれぞれの事情の下において公平且つ衡平な救済が与えられるようにしなければならない。

   第十八条

 (a) 戦争状態の介在は、戦争状態の存在前に存在した債務及び契約(債券に関するものを含む。)並びに戦争状態の存在前に取得された権利から生ずる金銭債務で、日本国の政府若しくは国民が連合国の一国の政府若しくは国民に対して、又は連合国の一国の政府若しくは国民が日本国の政府若しくは国民に対して負つているものを支払う義務に影響を及ぼさなかつたものと認める。戦争状態の介在は、また、戦争状態の存在前に財産の滅失若しくは損害又は身体損害若しくは死亡に関して生じた請求権で、連合国の一国の政府が日本国政府に対して、又は日本国政府が連合国政府のいずれかに対して提起し又は再提起するものの当否を審議する義務に影響を及ぼすものとみなしてはならない。この頃の規定は第十四条によつて与えられる権利を害するものではない。

 (b) 日本国は、日本国の戦前の対外債務に関する責任と日本国が責任を負うと後に宣言された団体の債務に関する責任とを確認する。また、日本国は、これらの債務の支払再開に関して債権者とすみやかに交渉を開始し、他の戦前の請求権及び債務に関する交渉を促進し、且つ、これに応じて金額の支払を容易にする意図を表明する。

   第十九条

 (a) 日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、且つ、この条約の効力発生の前に日本国領域におけるいずれかの連合国の軍隊又は当局の存在、職務遂行又は行動から生じたすべての請求権を放棄する。

 (b) 前記の放棄には、千九百三十九年九月一日からこの条約の効力発生までの間に日本国の船舶に関していずれかの連合国がとつた行動から生じた請求権並びに連合国の手中にある日本人捕虜及び非拘留者に関して生じた請求権及び債権が含まれる。但し、千九百四十五年九月二日以後いずれかの連合国が制定した法律で特に認められた日本人の請求権を含まない。

 (c) 相互放棄を条件として、日本国政府は、また、政府間の請求権及び戦争中に受けた滅失又は損害に関する請求権を含むドイツ及びドイツ国民に対するすべての請求権(債権を含む。)を日本国政府及び日本国民のために放棄する。但し、(a)千九百三十九年九月一日前に締結された契約及び取得された権利に関する請求権並びに(b)千九百四十五年九月二日後に日本国とドイツとの間の貿易及び金融の関係から生じた請求権を除く。この放棄は、この条約の第十六条及び第二十条に従つてとられる行動を害するものではない。

 (d) 日本国は、占領期間中に占領当局の指令に基づいて若しくはその結果として行われ、又は当時の日本国の法律によつて許可されたすべての作為又は不作為の効力を承認し、連合国民をこの作為又は不作為から生ずる民事又は刑事の責任に問ういかなる行動もとらないものとする。

   第二十条

 日本国は、千九百四十五年のベルリン会議の議事の議定書に基いてドイツ財産を処分する権利を有する諸国が決定した又は決定する日本国にあるドイツ財産の処分を確実にするために、すべての必要な措置をとり、これらの財産の最終的処分が行なわれるまで、その保存及び管理について責任を負うものとする。

   第二十一条

 この条約の第二十五条の規定にかかわらず、中国は、第十条及び第十四条(a)2の利益を受ける権利を有し、朝鮮は、この条約の第二条、第四条、第九条及び第十二条の利益を受ける権利を有する。


  第六章 紛争の解決

   第二十二条

 この条約のいずれかの当事国が特別請求権裁判所への付託又は他の合意された方法で解決されない条約の解釈又は実施に関する紛争が生じたと認めるときは、紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により、国際司法裁判所に決定のため付託しなければならない。日本国及びまだ国際司法裁判所規程の当事国でない連合国は、それぞれがこの条約を批准する時に、且つ、千九百四十六年十月十五日の国際連合安全保障理事会の決議に従つて、この条に掲げた性質をもつすべての紛争に関して一般的に同裁判所の管轄権を特別の合意なしに受諾する一般的宣言書を同裁判所書記に寄託するものとする。

  第七章 最終条項

   第二十三条

 (a) この条約は、日本国を含めて、これに署名する国によつて批准されなければならない。この条約は、批准書が日本国により、且つ、主たる占領国としてのアメリカ合衆国を含めて、次の諸国、すなわちオーストラリア、カナダ、セイロン、フランス、インドネシア、オランダ、ニュー・ジーランド、パキスタン、フィリピン、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国の過半数により寄託された時に、その時に批准しているすべての国に関して効力を生ずる。この条約は、その後これを批准する各国に関しては、その批准書の寄託の日に効力を生ずる。

 (b) この条約が日本国の批准書の寄託の日の後九箇月以内に効力を生じなかつたときは、これを批准した国は、日本国の批准書の寄託の日の後三年以内に日本国政府及びアメリカ合衆国政府にその旨を通告して、自国と日本国との間にこの条約の効力を生じさせることができる。

   第二十四条

 すべての批准書は、アメリカ合衆国政府に寄託しなければならない。同政府は、この寄託、第二十三条(a)に基くこの条約の効力発生の日及びこの条約の第二十三条(b)に基いて行われる通告をすべての署名国に通告する。

   第二十五条

 この条約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの条約に署名し且つこれを批准したことを条件とする。第二十一条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない。また、日本国のいかなる権利、権原又は利益も、この条約のいかなる規定によつても前記のとおり定義された連合国の一国でない国のために減損され、又は害されるものとみなしてはならない。

   第二十六条

 日本国は、千九百四十二年一月一日の連合国宣言に署名し若しくは加入しており且つ日本国に対して戦争状態にある国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていた国で、この条約の署名国でないものと、この条約に定めるところと同一の又は実質的に同一の条件で二国間の平和条約を締結する用意を有すべきものとする。但し、この日本国の義務は、この条約の最初の効力発生の後三年で満了する。日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行つたときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼさなければならない。

   第二十七条

 この条約は、アメリカ合衆国政府の記録に寄託する。同政府は、その認証謄本を各署名国に交付する。

 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で、ひとしく正文である英語、フランス語及びスペイン語により、並びに日本国により作成した。

(全権委員署名略)