チニングという筋トレがある。高いバーにぶら下がって手元まで顎を上げていく動作を繰り返す。つまり懸垂だ。これには強い三角筋や背筋、上腕二頭筋が求められて、上半身の筋トレを熱心にやってる人なんかが、よく最後に儀式のように行って帰る。ある日、このチニングを10回ワンセットで3セットしているムキムキ氏とお話ができて、彼のトレーニングの一部を聞かせてもらった。
週3回、1回3時間でほどまんべんなく筋トレして、筋トレのあとは30分ほどストレッチと自転車こぎで血液の循環をよくして筋肉にたまった乳酸の分解を助けるようにしているという。ぼくが「孤独なトレーニングですね」って、少し冗談っぽく言ったら、「人と一緒にやるとか、合わせられないんですよね」と、不器用そうな笑顔を見せた。
「いい人だな」って感じて、スタジオでやる筋トレ系プログラムは好きじゃないですか?って向けると、「ダメ、ダメ。バーベルが軽すぎるし、チーティングする人が多すぎる」って、不快な表情を見せた。チーティングは訳せば「だまし」だ。ゴルフでは仲間への「過少申告」だったり、筋トレの世界では反動を使ってウェートを上げたりする行為をさす。ストイックな彼はそれをするやつを軽蔑している。
スタジオでは10センチしか沈まないスクワットや10センチしか上下させないチェストプレスをする男性ががときどきいる。ぼくが行くジムではそれをする女性も一人いるんだけど、彼女は平気でチーティングする男性に洗脳されてしまっていて、そのチーティングが見抜けないまま、彼を尊敬しちゃったりして、笑ってしまったことがある。先の男性は「筋トレでチーティングする人はほかでも平気でチーティングする」と言っていた。いやな経験があったのかもしれない。
そこまでストイックに考えることないじゃないかって思ったりもするけど、確かに、筋トレって自分と向き合う時間なのに、それをほかの目的のために利用しようとしている人の姿はぼくも好きじゃない。なんでも、ズルは気持ちよくないと思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます