2月22日 読売新聞「編集手帳」
先月の本紙歌壇に写実的な一首があった。
<我が塀が二点を結ぶ近道か遊びし白猫日暮れに渡る>(中山隆二)
よその家の猫であろう、
と選者の栗木京子さんはみる。
遊び場と飼い主の家との間に作者のお宅があるらしい。
よその家にもかかわらず悠々と塀を渡っていく白猫の姿があまりにもマイペースで、
ほほえましい。
往々周りに気を使いながら生きる人間から見れば、
こうしたところが猫の魅力なのだろう。
きょう2月22日は「猫の日」。
しかも2020年、
さらに令和2年。
語呂合わせの「にゃん」が6回も連なる特別な猫の日である。
写真展や絵画展など各地でイベントが盛りだくさんだという。
東京には「谷中」という下町風情の残る町がある。
猫が集会場にするスポットが観光名所になっている。
本紙歌壇にこんな作品も見かけた。
<外国の言葉とびかう銀座経て午後は猫語の谷中を散歩>(坂本ひろ子)。掲載は約2か月前だが、
銀座の景色がその後一変したことは多くの方がご存じだろう。
新型肺炎に振り回される日々は当面続きそうである。
悠々と暮らせる彼らがにゃんとうらやましいことか。