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さくら5つの物語 ②早咲きの桜“春めき”

2016-04-30 07:15:00 | 報道/ニュース

4月12日 おはよう日本


2000年に新しい品種として登録された“春めき”。
ソメイヨシノより早く
日増しに春めいてくる時期に咲き始めることから名付けられた。
神奈川県西部の南足柄市
3月中旬春めきの桜並木が満開を迎えた。
春めきのもう1つの特徴は独特な香りがすることである。
「やさしくて甘いにおい。
 風に乗って“ぷーん”って。」
その香りに強く魅かれた1人 
近くの町に住む三嶽正雄さん(69)。
幼いころから弱視だった三嶽さんは40代で光を失った。
5年前 ここを通りかかった時に春めきの香りを初めて嗅いだ。
「感動しました。
 桜というものがこんなにいいにおいがすると思って。
 疲れも飛んでいくし
 心が癒されるし
 そういう気持ちで過ごしました。
 子ども時代を思い出しますよ。」
そのとき心に浮かんだのは子どものころに見た光景だった。
三嶽さんが通っていた小学校
満開の桜の花びらを間近に見ようと校庭の木にのぼった。
春めきの香りが記憶の中にあるその桜の姿が重なったという。
三嶽さんは苗木を譲ってもらおうと生産者を訪ねた。
春めきを生み出した古屋富雄さん。
早咲きの春めきは卒業式の時期になると主に学校に出荷してきた。
視覚障害のある人からの依頼は思いがけないことだった。
「心が癒されて
 心身ともに和むという香りですね。」
「それを私に教えてくれたのは三嶽さんです。」
この2人の出会いをきっかけに
春めきは各地の盲学校や点字図書館などに贈られ
全国に広がっていった。
その1つ福岡県直方市にある福智山ろく花公園。
去年春めきの苗木が6本植えられた。
3月上旬 枝先には小さなつぼみがついた。
地元の視覚障碍者の団体が訪れた。
那須道子さん(74)。
春めきの開花を心待ちにしていた。
夫の眞夫さんは5年前足を怪我して介護施設に入所。
ほとんど寝たきりの生活が続いている。
「花公園に行ってにおいを嗅いでくるからな。
 教えるわ今度な。」
「花の香りはいいもんね。」
夫婦にとってさくらは特別な存在だった。
視覚障碍者の訓練施設で出会った2人は昭和42年に結婚した。
その後夫婦で鍼灸院を開業。
ほとんど休む間もなく働いてきた。
ほっとひと息つけるのが春の花見のときだった。
徐々に視力を失っていく病気を患っていた那須さん。
10代で全く見えなくなった。
夫の眞夫さんも右目の視力が無いが
毎年春 桜の様子を一生懸命伝えてくれたという。
「その頃は見えよったからね。
 楽しかったですよ。
 お酒持っておにぎり作って。
 主人も元気だったしよく桜を見に行きよったね。」
3月中旬 苗木に合わせて17輪の花が咲いた。
公園を訪れた那須さんは初めて嗅ぐ春めきの香りである。
「初恋のにおいかな。
 胸にきますよ。」
「去年植えた匂いのする桜が咲いとったんよ。
 去年植えたのに。
 においを嗅がせてもらったのよ。
 なんとなくね優しいにおいやったわ。
 ものすごく優しいにおい。
 桜は心がルンルンになる。」
「すいぶんきれいなんやろうな。」
この日は夫婦の49回目の結婚記念日。
2人で紡いできた桜の思い出がよみがえる。
「楽しい思い出がいっぱいあったな。
 梅干し弁当やな。
 卵焼きとか腸詰めとかばっかりやったな。」
「腸詰めが酒のさかなとして好きやったな。」
「来年は絶対主人を連れて行きたい。
 花のにおいを嗅がせてあげたい。
 頑張りよ リハビリ。」
「私も私なりに努力して頑張っていく。」
香りの桜 春めき。
人々の心の中にやさしい花を咲かせている。



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