1月24日付 読売新聞編集手帳
何年か前に本紙『こどもの詩』で読み、
切り抜いた一編がある。
作者は小学3年生、
題名を「交かん」という。
〈人間ってね
イヤなことが
いっぱいたまると
幸運と交かんできるんだよ〉
遠い昔、
同じような発想をした人がどこかにいたのかも知れない。
きょうとあす、
東京の亀戸天神社で催される初春恒例の「鷽(うそ)替え」は、
1年のイヤなことを幸運と交換する神事である。
鷽はアトリ科の鳥である。
昨年授かった木彫りの鷽を新しい鷽と交換することで、
1年の悪い出来事がすべて嘘(うそ)になり、
吉に転じるよう祈願する。
「うそ」という名の由来には諸説ある。
足を交互に上げながら鳴く姿を琴の演奏に見立て、
空で琴を弾くから「そらごと」(=嘘)説はよくできているが、
誰か頭のいい人の創作だろう。
口笛に似た鳴き声から、
口笛の異称「うそ」(嘯)にちなんでの命名とする説が有力らしい。
“嘯”という字から連想する言葉がある。
つなみは漢字で「津波」だが、
「海嘯」とも書く。
〈鷽替ふるならば徹頭徹尾替ふ〉(後藤比奈夫)。
招福を祈願して、
「徹頭徹尾」の一語がこれほど切実な年もない。