7月14日付 読売新聞編集手帳
女性ふたりの会話より。
「私、30歳になるまで結婚しないわ」
「私、結婚するまで30歳にならないわ」。
馬場実さんの『大人のジョーク』(文春新書)から引いた。
笑えない改訂版をひとつ。
「私、震災対応に一定のメドがつくまで、首相を辞めないわ」
「私、首相を辞めるまで、震災対応に一定のメドをつけないわ」。
菅首相を見ていると、
そういう皮肉のひとつも言いたくなる。
「メド」となるべき特例公債法案など喫緊の法案成立をそっちのけにして、
すでに退陣を口にした身で先の長いエネルギー政策の見直しを持ち出す真意が分からない。
首相が記者会見で“脱原発”を宣言した。
閣内も与党内も掌握した首相のもとで、
かつ功罪の論点を尽くし、
手順も示した上での宣言ならば、
脱原発も政治理念のひとつになり得ることまでは否定しない。
菅首相の場合はすべてが欠けている。
私、辞めたくないから、目を先へ先へ転じるわ。
震災対応に一定のメドなんてつけるものですか…。
じきに家を明け渡す約束をした人がやるべきことは、
屋根のふき替えや壁の塗り替えではなかろう。
荷物の整理と掃除である。