15日 NHK海外ネットワーク
アフガニスタンの米軍事作戦を始めてから10年。
首都カブールにはショッピングモールやファストフード店もオープンした。
治安の悪化が続くなかでも市民はあたりまえの日常を取り戻そうとしている。
アフガニスタンの数少ない娯楽のなかで、今、人気なのが映画。
タリバンが支配していた10年前まで映画は禁止されていたが、
DVDも普及し自宅で映画を楽しむ人が増えた。
自分で映画製作をしたいという若者も増えている。
映画作りを学べる大学の映画学科は毎年志願者が増え続けている。
カブールで今月映画祭が開かれ50本の作品が上映された。
作品の多くは10代から30代の若い監督がてがけたもの。
かつて禁じられていた映画を通じて、
この国に暮らす人々の苦難や社会にひずみを伝えようとしている。
「シェルター」と題されたアニメーション映画。
心優しい少年と小鳥とのふれあいを描いた作品である。
ある日、少年の町は激しい空爆にさらされ少年は左足を失ってしまう。
焼け焦げた小鳥の巣。
巣をなくした小鳥に、少年はもう履くことは無い左足の靴をあげて立ち去った。
女性が受ける不等な扱いを告発する映画を多く手がけてきた25歳の女性。
今回の映画では社会の不正を正そうとする女性検事に密着した。
検事の事務所に体中に傷を負った若い女性が訪ねてくる。
夫から激しい暴力を受けていると訴えたが、夫は認めようとしない。
女性たちの人権を守ろうと奔走する検事だが、
その命を何者かに狙われた。
自宅に仕掛けられた爆弾が爆発したのである。
検事は無事だったが、
女性の社旗進出に反対する勢力の犯行と見られている。
監督の女性は苦難に立ち向かう女性の姿を知ってほしいと考えている。
人々の壮絶な体験と記憶に向き合った作品もある。
タリバンによってすっかり仏教遺跡が破壊されたバーミヤンがその現場である。
周辺の村もタリバンに襲われ、多くの村人が殺害された。
「洞窟の光」と名づけられた映画の主人公は監督自身であ、
村を去った少年が13年ぶりに村を訪れる。
事件を生き延びた村の関係者を訪ね歩き、話を聞く。
見覚えのある小さな洞窟に案内された。
タリバンに襲撃されたとき、多くの村人がここに逃げ込んで、
息を潜めて何日も過ごした場所だった。
監督はまだ17歳の少年。
当時4歳だった自らの体験を通じて、
この国の苦難の歴史を知ってほしいと映画を作った。
映画のラストでは辛い記憶が残る洞窟に小さな穴から光が差し込む。
監督はこの光に未来を感じ取ったと言う。
「私の人生にとって大切なこの一筋の光。
過去と新たな人生の架け橋となる。」
今も戦闘がやまないアフガニスタン。
若者たちは映画を通じて過去と現在に向き合い、
新たな未来を見出そうとしている。